大量 魔法習得
翌朝、珠美が一番最初にしたのは洗濯だ。
二日間ずっと着ていた水色のワンピースと下着を小川で洗うと、差し掛け屋根の柱と林の木を結んで渡した紐に通して干した。
竹竿があればいいのにな。
昔の物干しざおは、ぜんぶ竹でできていた。「たぁけぇ~、竿竹~!」と叫びながら、オート三輪の自動車で、よく物売りがやって来ていたものだ。
そばにやって来たペロルに竹林のことを聞いてみると、すぐ近くにあるという。
「もしかしたら、タケノコが出てるんじゃない?」
「竹の芽のことだったら、もう出てるよ」
おおー、タケノコは大好物だ!
それも採りに行きたいな。
今日の朝ご飯は、ミヨンばあさんにもらったキムチに、玉ねぎとチャイブを刻んで入れたオムレツ、それに冷や飯のブブづけ(お湯づけ)だ。昨日作った大根の漬物を食べてみたら、少し味がなじんでいた。明日あたりが食べごろかな?
食後にお茶が欲しいので、お茶の木を探したい。
オムレツに入れたチャイブは、家の前の草原に生えていた。
バジルやラベンダーなどのハーブ類もあるようだったので、畑にするために耕す前に庭の片隅にでも移植しておいて、ハーブ畑を作っておきたいと思っている。
朝食の後片づけをして、珠美が家に入ると、ミーニャが声をかけてきた。
「珠美、畑を耕すんニャら、魔法を使ったほうが早いんじゃない?」
あ、そうか。魔法が使えたのね、盲点だったわ。
「それはいい考えだけど、耕作する魔法なんてあるの?」
「土魔法の章に書いてあるんじゃニャいかしら」
なるほど、そう言えば『着火』の魔法が書いてあった生活魔法の隣が土魔法だったかも?
魔術書を出して、目次を調べてみたら「生活魔法・火魔法・水魔法・風魔法・土魔法・光魔法・闇魔法・その他スキルに基づいた魔法」となっていた。
ぜんぜん隣じゃなかった……
土魔法の章を見ていくと『激震』という魔法があった。
これは地面を揺らして広範囲をボコボコと隆起させるものらしい。
……ちょっと違う。
土壁や建物を作るのも、敵を土牢に閉じ込めるのも違うよね。
ピッタリくるものがなかったので、その他スキルに基づいた魔法の章を見てみると、農業スキルのところに珠美が欲しい魔法がたくさん載っていた。
『耕作・畑』これよね!
「呪文は……お、これか。【タケハタケ ウネヲツクレバ ハケヨイト】」
珠美が呪文を唱えると、足元がホンワカとあたたかくなった。
ん? でもそれだけだ。
「なんか『言語』魔法を習得した時と違って、魔力が削られた気がしないんだけど?」
「そうニャ? 珠美が成長してるってこともあるのかもしれニャいけど、もしかしたらギフトを持ってる人は、体力や魔力の戻りが早いのかも。ちょっと、もう一度ステイタスを見せてくれる?」
「うん、ステイタスオープン!」
目の前にずらずらと文字が出てくるのは、何度見ても面白い現象だ。
名前 (日色) 珠美
年齢 15歳
種族 異世界人、ヘブン人
ギフト 製作(日常生活に必要なスキル、農業従事者に必要なスキル、手作りができるスキル)
生活魔法 言語1、着火、野草料理
農業魔法 耕作・畑
レベル 5
体力 Fランク 5点(Eランクまで後5点)
魔力 Fランク 6点(Eランクまで後4点)
なんかだいぶ変わってる感じがする。
ミーニャも目を見開いて珠美のスキルを見ている。
「わぁ、やっぱりギフト持ちの上がり様はすごいニャ。もうレベル5だよ! それに『野草料理』なんて習得してないのに魔法レベルになってるし。笑えるニャあ」
猫に笑われちゃったよ。
「野草料理は生きることに直結してるからね、こうなるのも仕方がないよ。それよりミーニャ、Eランクまで後5点って出てるけど、ランクは10点ごとに上がっていくの?」
「ううん、FからEランクまでは10点だけど、EからDランクまでは20点ニャ。上にいくにしたがってランクは上がりにくくなっていて、一番上が今のところはSランクだけど、SSやSSS、その上の神域までいく人もたま~にいるみたいニャ」
ふぇぇ、そういう仕組みになってるのね。
でも「ヘブン人」という記述が増えてるのは嬉しいな。ヘイじいさんに言ってもらったみたいに、新人類でもみんな同じヘブンに暮らす人だもんね。
あまり魔力を使わないで耕作魔法を増やすことができたので、珠美はさっき見ていた土魔法の章から『掘削』の魔法を習得しておくことにした。
これはタケノコを掘る時にも使えそうだ。
「えっと、リズムが良さそうな呪文ね。【ディグディグ ディグダ ダグディディグ】」
珠美が魔術書の呪文を唱えると、両腕がブルブルッと震えた。
これはちょっと魔力を削られた感じがしたけど、最初に二つの魔法を覚えた時より、まだまだ余裕があった。
調子に乗った珠美は、この後、生活魔法の章で三つも魔法を習得してしまった。
『収納・買い物かご』・・・【モッテ アルイテ ランララン】
『光・ライト』・・・【アカルイ ミエル ライトイト】
『精米』・・・【スッテ コスッテ オイシクナアレ】
ふふふ、便利そう。
ただ、呪文を全部は覚えきれなかったので、わら半紙に書いておいて、ポケットに入れて持ち歩くことにした。
朝一番で魔法を習得していたおかげで、その日の珠美は絶好調だった。
これからは、魔法習得を朝の習慣にしようと思ったのも無理はない。
そして夜には、大切な作業が待っていた。




