21.だから、また笑う
どのくらいの間、ここにいたのだろうか。
彼女がいた時は真上にあった太陽がもう沈もうとしていた。
「帰ろう」
彼女も、いつまでも僕に立ち止まって欲しくはないだろう。
重たい腰を上げ、僕は歩き始めた。来る時は2人だった道を今度は1人で。ただの一歩でさえ、いつもより重く感じた。
ふと、ベンチに置いてあったランチケースが視線に映った。
そういえば、彼女は朝からお昼ご飯を作っていた。
僕はすぐにそのランチケースを取りに行った。
彼女の作った最後のご飯、僕はランチケースをゆっくりと開けた。
サンドイッチが4つほど入っていた。ピクニックの定番だ。その料理に彼女らしさを感じた。
その中から、1つを手に取って口に入れた。
おいしい。相変わらず、彼女の作った料理はおいしい。
以前、彼女は愛情が入っているからおいしい、と言っていたことを思い出した。
あの時は叩いてしまったけど、今思えば確かにそうなのかもしれない。
誰かを想って作った何かは、きっと元の物以上の何かになる。
それは、彼女が教えてくれた。
サンドイッチを食べていると、ランチケースの底に黄土色の封筒が見えた。
急いでサンドイッチを崩さないように、封筒を手にとった。封筒はジップロックに入れられており、汚れないように工夫されていた。
「えっ?」
その封筒には達筆な字で『清水 蓮 様』と書いてあった。
急いで封を開け、手にとった。
封筒の中には、手紙が入っていた。
『 清水蓮くんへ
この手紙を読んでいるということは、私はもうこの世界にはいないのでしょう。
なんて、定番のセリフを言ってみたりします(笑)
別に、遺書というほど格式張ったものでもないかな?
だから、最後に蓮くんに当てて書いた手紙みたいなものだと思ってください。
まず、初めに謝らせてください。
この手紙を書いている頃から、私は決めていることがありました。
それは、絶対に自分は言いたいことを言って、蓮くんには何も言わせないことです。
だって、蓮くんから何か言われたら、きっと泣いちゃうから。
最後は笑っていなくなる、それが春風桜華、私らしさだと思うから。泣いちゃってたらそれが台無しになっちゃう。
それでも、もしかしたら普通に泣いちゃってるかも知れないけどね。
でも、こんな理由じゃ、蓮くんは納得してくれないかな?
だから、しっかり言っとくね。
分かってるから、分かっているからね。蓮くんが私に何を言いたいかを。
一緒にすごした分だけ、蓮くんのことは分かっているつもりだから。
だからこそ、私にも言わせてほしい。
蓮くんは私に、沢山の物をもらった。とか、恩返しがしたい。とかよく言うけどさ、私も同じくらい、いや、それ以上の物をもらってるんだよ?
私が春風桜華っていう1人の女の子になれたのは蓮くんがいたからなんだよ。
この世界にもっといたいって思えることって、私にとってはもったいないくらいの感情なんだって思う。
そんなこと言ったらまた蓮くんに怒られちゃうかな?
きっと、言えたと思うけど、もしも言えてなかったら嫌だから、蓮くんにとっては2回目かもしれないけど言わせてください。
清水蓮くん、私はあなたのことが大好きです。
この世界の誰よりも、あなたを愛しています。
蓮くんの自慢の彼女 春風桜華より』
ほんと、ずるいよ。最後の最後まで、自分の言いたいことばっかり言いやがって。
僕にも、言わせてよ。大好きだって。愛してるって。
でも、もうその言葉は彼女には届かない。
涙がポロポロと流れ、手紙が濡れていく。
止まれ、止まれ、彼女は笑って最期を迎えたんだ。僕が泣いていてどうする。
でも、何度拭っても、目から出る、正直な感情は抑えることができなかった。
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