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春の軌跡はあなたとともに  作者: 真城 玲
第四章 真実
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15.嘘と不安の放課後

  「キーンコーンカーンコーン」と、定番のチャイムが鳴り、今日の授業は全て終了した。

 僕はすぐに教室を出て、自転車にまたがった。

 普段は翔悟や綾玲と少し話してから帰るのだが、今日は違った。

 校庭の隅に建てられた時計を見た。しました二時四十分、良い感じだ。

 今日は何やら会議があるらしく、通常五十分の授業が四五分だった。

 そこで、僕は桜華さんの学校へ迎えに行くことにした。

 彼氏が彼女を迎えに学校へ行く、というなんともフィクションチックなことをしてみようと思ったのだ。

 正直、彼氏でもない僕が行って引かれないか、などの不安要素もたくさんあった。でも今日はデートだし、相手は桜華さんだ。そこら辺は大目に見てもらえるだろう。

 そんなことを考えながらゆっくりとペダルを踏んで進み始めた。

 桜華さんの通っている学校は、自転車で四十分も漕げば充分に間に合うような距離だった。

 もちろん、今日迎えに行くことは事前には伝えていない。

 その方がサプライズにもなるし、驚いてもらえそうだったからだ。

 そうして、予定通り四十分ほどかけて桜華さんの通っている高校に到着した。

 着くと、ちょうどチャイムが鳴り、生徒たちが続々と校門から出てきた。

 僕はおそらくほとんどの生徒が出てくるであろう正門で待つことにした。

 人がどんどんと出てくるなか、桜華さんは一向に姿を現さなかった。

 もしかしたら、彼女はもう一方の出入り口である裏門からもう帰ってしまったのかもしれない。そんな考えが頭をよぎる。

 僕はついに痺れを切らし、制服を着ている子に話を聞くことにした。二人組の仲の良さそうな男子だった。


「すみません、この学校の一年生の春風桜華って女の子もう帰りましたか?」


 僕はそう言って、二人に桜華さんの特徴を伝えた。

 二人組の男子は顔を見合わせ、戸惑っている様子だった。おそらく、桜華さんのことを知らないなのだろう。それもそのはずだ、これだけ生徒のいる中で、一人の人間を多くの人が認知している方が稀だろう。

 ごめん、と一言伝えて他の生徒に聞こうとした矢先、二人からは信じられないような言葉が告げられた。


「その人って本当に一年生なんですか?」


 意図のわからない質問だったが、僕は、うんと答えた。

 小学生の頃、僕と同い年ということは聞いていたから。


「でも、そんな人、見たことないですよ。そこにいる先生、一年生の学年主任なんで、聞いてきますね」


 そのまま、二人は近くで下校の指導をしていた先生の方へ向かった。

 なんだか少し、不安な気持ちに襲われた。もちろん、ただあの二人が桜華さんのことを知らないだけかも知れない。


「あっ、待たせちゃってすみません」


 しばらくして、二人は戻ってきた。


「それで、先生に聞いてきたんですけど…春風桜華さんっていう人は、この学校にはいないみたいです」


 言葉を失った。桜華さんがこの学校にはいない?なら、彼女はどこに行っているんだろうか。

 そこまで考えて、桜華さんが学校の制服を着ているところを僕は見たことがないことを思い出した。

 点と点が、微妙に繋がりかけた気がした。


「一応、先生にこの学校全体の名簿を見てもらったので間違いないはずです」


 その言葉は、より一層僕を不安にさせた。

 あの日、桜華さんは間違いなくこの学校だと言っていた。

 もしかして、桜華さんは嘘をついたのか?だとしたら何故嘘をついたのか?

 様々な疑問が頭の中を飛び交った。


「ごめん。ありがとう」


 どうにか、一言礼を言って僕はその場を後にした。

 突然、ブブブブブと、制服の右ポケットが振動した。

 未だに慣れないその音に少し驚きながら、反射的にその振動の元凶である携帯を手に取った。


『私はもう着いたから、蓮くんも早く来てね!』


 ここからヌシに着いたにしては早すぎる。

 やはり、桜華さんはこの学校の生徒ではないのか。

 不安になった。不安で、怖くて、何より嘘をつかれた事実に傷ついた。

 でも、いつまでもそこに突っ立ている訳にはいかなかった。昨日の帰り、桜華さんはどこかおかしかった。

 今にも壊れそうな、そんな感じだった。なんだか、このままここにいたら、また彼女がいなくなりそうだった。

 桜華さんがたとえ嘘をついていたのだとしても、少なくとも彼女と過ごした時間は本物だった。

 そろそろ、覚悟を決めよう。もう、怖いなんて言わない。

 そっと自転車にまたがった。行こう。

 今度こそ、桜華さんのことを知るために。

 嘘も偽りもない、そんな、そんな関係になるために。


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