0.プロローグ
大幅改稿に伴い、前回の方を非表示にさせていただきました。
前回よりもパワーアップした『春の軌跡はあなたとともに』ぜひ最後までお楽しみ下さい。
感想、評価、誤字報告等、待ってますのでどうぞよろしくお願いします。
もっと面白くなるよう、アドバイスもしてください!!!
目を覚ますと、そこは真っ白な世界だった。
そこにあるのはただ真っ直ぐに、何もない地平線。360度見渡してもそこに形あるものはないもない。僕一人が世界から隔絶されているようだ。
訳もわからないまま、しばらく歩いた。
方向感覚もなく、自分が今どれくらい進んでいるかわからないけれど、とにかく進んだ。
すると、不意に僕の目の前にたくさんの光の粒が現れた。
バラバラだった光の粒は一点に集まった。そして、その輝きは時間が経つごとに増していった。
やがてそれは一本の大きな桜を形どり、時期に色づいた。
艶やかなピンクの花弁、見上げるだけで首が痛くなるような巨大さ、その桜は、近づくだけで身震いがするほど力強い生命力を僕に感じさせた。
度重なる不思議な出来事に僕の頭は混乱していた。
そんな中、クスクスと笑う声が桜の根の方から聞こえた。
声のした方を顔を向けると女の子が一人、木の下に立っていた。背丈からすると、小学校の高学年くらいだろうか。
「ねえ、蓮くん。今日は何する?」
名前を呼ばれ、ハッとした。
ニッと笑った時にできるそのえくぼ、背丈の割に幼い顔つき、僕はこの女の子のことを知っている。
確か名前は…春風桜華。
「桜華さんは、何がしたいの?」
記憶の曖昧さとは裏腹に、ごく自然に、流れるように言葉が出てきた。
彼女との思い出が頭の中を走り抜けていく。太陽のような笑顔、引っ張ってきた暖かい手、思い出が鮮明になっていくにつれ、何故かすーっと涙が頬を伝っていく。
そうだ、僕はずっと彼女に聞きたかったことがあったんだ。
「あの日、なんで桜華さんはいなくなったの?」
彼女は口に開かなかった。ただ無表情に僕を見つめるだけ。
それどころか記憶がはっきりと戻ってくるにつれて、桜も、彼女も遠く薄くなっていく。まるで存在が薄れていくように。
「まって、まってよ!」
僕は急いで彼女の手を取る。でも、その手は空を切る。気づくと彼女は消えていた。
また、さよならも言わずに。
続いて、僕の意識も遠くなっていった。