洗礼へ
カルド2歳の誕生日
「カルド、今日で2歳だな。来年には洗礼が控えているからこの1年は怪我などをしないようにな。特にお前は探検と言って家のあちこちを動き回るようだからな。」
誕生日の晩御飯の席で父親からそう言われる。
「ありがとうございます父様。気をつけるようにします。」
この国では5歳になるまでは誕生日パーティーみたいなものはしないみたいだ。平民はそんなことをやるお金はないし、貴族は子供の頃は病気や、敵対派閥からの刺客に狙われやすいため死亡率が地球に比べて高いらしい。また、洗礼で能力が低かったものは最悪の場合、家から排除される可能性もあるためこの国では5歳になると王都でその年5歳になった貴族家の者を全員集めてパーティをするのだそう。全ての貴族家の子供はそこで社交界デビューする。
(ま、ヘルによればランツァーノ家は辺境にあるから派閥争いは関係ないらしいけど)
「現在派閥は大きく分けて3つです。
国王を中心とし、国民と共に歩んでいこうとする"国王派"
貴族を中心とし、特権階級が1番だという思いを持つ"貴族派"
そしてそれ以外の"中立派"となっています。王国騎士団と魔法師団、公爵家のうちパスンチア家を除く3公爵はこの派閥です。ランツァーノ家とアントニウス家も中立派に属します。というか国内で争ってられないと思っているのでしょうが。帝国との戦争が終結したとはいえ、別の国との戦争がいつ始まるかわからないですし、そもそもランツァーノ家は魔の森のモンスターを警戒していますから。あと、ランツァーノ家現当主と現国王は仲が良いそうです。なんでも学園の同級生だったとかで、ただお互い今の地位についてからは会議以外で顔を合わせることはなくなったようですが。」
(父様が国王の親友ね〜。そんなことより魔の森のモンスターか、早く戦ってみたいな!)
「王国法で戦闘は最低でも3歳になってからとありますので来年まで待ってくださいね。」
(わかってるよ、どのみちファウスが言ってた"言霊魔法"ってやつも洗礼の時までつかえないんだろう?)
「そうですね。今現在ご主人様に権限が許されているのは"ヘルプ"と制限付きの"鑑定"だけですね。」
(あぁ〜、早く来年にならないかな)
「戦闘は3歳からですが、戦闘訓練は特に規定はないので今からでも始めることは可能ですよ?」
「ホントに!?」
「どうしたのカルドちゃん?」
「あ、いえ、なんでもないです」
(ヤバイ、恥ずかしい〜)
「そんなに興奮するからですよ。部屋に戻ったら戦闘訓練の効率的な方法を教えましょう。」
(あぁ、)
〜カルドの部屋〜
「さぁ、方法を教えてくれ!」
「まず、ご主人様は洗礼で魔法を授かることは確定しているので魔力操作で魔力を増やすのは続けましょう。そして戦闘訓練ですが、とりあえずは体力作りですね。このままだと3歳になってすぐ魔の森に行ったとしても行くだけで体力切れになるでしょう。体力がある程度付いてきたら筋トレや、剣の素振りなどを入れてみるといいでしょう。ちょうどこの家の騎士団は魔の森のモンスターで戦闘経験を豊富に積んでいるので訓練するなら騎士団に混ざるのがいいと思います。」
「そうだね、まずは体力作りだね。」
それからカルドの1日は2歳とは思えない生活習慣に変わっていく。
1.朝起床して魔力操作で魔力量を増やす
2.朝ごはんを食べる
3.家の庭をランニング
4.筋トレ
5.昼ごはんを食べる
6.書庫で勉強
7.騎士団に混じって剣の素振り
8.お風呂
9.晩ごはんを食べる
10.ヘルで世界のことを調べる
11.魔力を使い切る
12.就寝
1.に戻る
もはや、辺境伯家の者たちはカルドを普通の2歳とは考えるようにならなくなったのだが、
カルドは自分が子供を演じきれていると信じて疑わない。
そしてカルドは3歳になり洗礼の日を迎える。
初めまして、こんにちは躑躅です。
少々時間が空きましたが、7話の投稿です。
そして残念なことに来週は修学旅行で更新できそうにないです。ただ、その分頑張って今週投稿したいと思います!
まだまだ未熟な点はあると思いますが、誤字脱字の指摘、話の感想などお待ちしています。




