転生
(苦しい、息ができない、暑い)
「...ちゃん...息を...」
すぐそばから声が聞こえる。あまりの苦しさに声を出そうとするがなぜか出ない。
その時背中を衝撃が襲った。
(痛ッ)
しかし、その衝撃で息苦しさが和らぎ、声が出る。
「オンギャーーー」
(ッ??)
自分の声に違和感を感じるがすぐに転生したのだと気づく。
(無事転生できたのか、ファウスが転生準備に2年かかるとか言ってたがあれから2年経ったのか?)
まだ目も開けられず周りの状況も確認できないが、なんとかまだ聞こえづらい耳から情報を引き出そうとする。
「...なた...たわよ」
「...かれさま。よ...ばってくれ..」
「..子よ...の名前はカルドだ!」
どうやら俺の今世の名前はカルドと言うらしい。
そしてすぐ横に俺の今世での父親と母親がいるらしい。
(それにしても聞き取りづらいとはいえ何を言っているかハッキリ聞こえるな)
「それはスキル"全言語理解"の影響です。」
(ッ!ビックリした。お前は?)
突然聞こえてきた無機質な女の人のような声に驚く。
「私はスキル"ヘルプ機能"の一部です。ご主人様が疑問に思われたものを開示できる範囲で答える機能です。また、"ヘルプ機能"には多くの機能があり全て私に統合されています。」
(ファウスにもらったチートの1つか。この声は俺以外に聞こえているのか?)
「現在はご主人様のみに音声を届けるように登録されています。設定を変えるにはそのための操作を行ってください。操作を行いますか?」
(今はやめておこう。何故だかすごく眠たい)
「おそらく母体からの出産の際に体力を多く使ったのでしょう。今はお休みください。」
(そうか、それなら眠るとしよう。お休み)
「はい、お休みなさいご主人様。」
俺がこの世界に生まれてから一週間が経った。
その間何をしていたかというと
何もしていない。
(あぁー暇だ。正直自我がある赤ちゃんがこんなに退屈だとは)
口調は完全に昔に戻っていた。
(まぁ会話する相手が"ヘルプ機能"だけだからな。最初こそビックリしたけどスキルに敬語使ってもな)
「ご主人様は最初からその口調でしたよね?」
(.....話を戻そう)
「誤魔化しましたね?」
(....)
「....」
(オホンッ )
この生活で1番の苦痛。それは
「カルドちゃ〜ん、ご飯の時間ですよ〜」
このご飯の時間である。
扉をあけて20歳ぐらいの綺麗な女の人が入ってくる。身長は160センチぐらいだろうか。銀髪のゆるふわヘァーに整った顔立ち。この人が今世での俺の母親だ。
(母親がこんなに美人なら俺も将来はイケメンになるんだろうな)
ちなみに父親は出産の時に声を聞いて以来だ。母親は仕事で来れないと言っていたがなんの仕事をしているんだろうか?
「さぁカルドちゃんいっぱい飲みましょうね〜」と言って俺を抱き上げ自分の胸元へ持っていく。
(ここでの母親とはいえ前世では俺は妻子ある身なのに、美香より若い女の人の母乳を飲むなんて裏切っているみたいだな)
それでも目の前に胸を出されるとしゃぶりついてしまう。
(くそっ、こんなにすぐ反応するこの体が恨めしい!)
「ご主人様、若干声が嬉しそうですけど。」
(そんなことない!俺には美香がいるんだ!)
そして、ご飯が終わるとまた寝かされ、退屈な時間に戻る。入り口にはメガネをかけた真面目そうな中年女性のメイドが椅子に座って編み物をしながら時々俺の方を見ている。
そのメイドは俺がオムツの替え以外で泣かないのを疑問に思ってるみたいだ。
「たまにはいきなり泣いたりとかしたらどうですか?あのメイドに怪しまれていますけど。」
(そりゃだって、俺はもうアラフォーだよ、オムツは替えてもらわないといけないから呼ぶために泣くけどその時以外になくなんて無理だよ)
「ご主人様は現在1歳なんですから泣くのが仕事ですよ。」
(そんなこと言われてもいきなり泣けるわけないじゃないか!)
「無理やり手をベッドにでも打ち付けて泣いたらどうですか?」
(そんなことするわけないだろ!俺はとりあえずこの暇な時間をどうにかしたいんだ!早く歩けるようになりたい)
「どんなに成長が早くても歩くには1年ほどかかるそうですよ。」
(ちくしょう。このまま一年とか長すぎるだろう。せっかく異世界転生したんだから俺は自分の思うように生きたいんだーーーー!)
そんなこんなで俺の異世界生活が始まった
初めまして、こんにちは躑躅です。本日2本目です。主人公の心は既に少年に戻っていて異世界生活を楽しむつもりです。神様のお願いは頭の片隅にしかない状態です。
この話を書いていて赤ちゃんの泣き声ってどんなんだろか?と思いました。文字で分かりやすく起こせる方いたら是非教えてください。
まだまだ未熟な点はあると思いますが、誤字脱字の指摘、話の感想などお待ちしております。