プロローグ2
「....きろ.....きるのじゃ......起きるのじゃ!」
ハッと目を覚ます。
周りを見渡すとおかしな光景が広がっていた。地面は地平線の彼方まで一面色とりどりの、見たこともないような花が咲き乱れている。ただ空は真っ白。なぜか太陽が見えないのに周りが見えるくらいには明るい。
「ここは?」
そこで自分が言葉を発したことに気づく。
「声が、出る?!」
一瞬の間、頬を涙が濡らす。思わず呆然としてしばらく自分の状況を考えることを放棄する。
どれ程の時間が経ったのだろうか、突然
「落ち着いたかの?」
と背後から声が聞こえた。振り返ると、淡い着物らしき物をきた老人がニコニコしながら杖をついて立っていた。先ほど周りを見渡した時にはいなかったはずの人物がいることに戸惑いながらも
「あなたは?」
と聞いた。
「儂は絶対神ファウスというものじゃ!よろしく頼むな橋本空殿」
「絶対神?ここはいったい何処なんですか?私はトラックに跳ねられて死んだはずでは?」
「落ち着きなさい。そんなにいろいろ言われたら答えることもできないじゃろ?」
そう言って絶対神ファウスは杖を「コンッ」と鳴らした。すると目の前にちゃぶ台と座布団が2組現れた。
「まあ座りなさい」
いきなり現れたちゃぶ台と座布団に驚きつつも勧められたように座る。するとまた何処からかお茶が現れた。
「お主が混乱するのもよくわかるが、今から1つずつ説明するから落ち着いて聞いてくれ」
私は落ち着くためにお茶を一口飲み
「説明をお願いします」
と言った。
「うむ」
とうなづいた後絶対神ファウスは語り始めた。
「さて、お主は自覚しておるであろうが死んでおる。ここは多くの神と天使が生活をしている天宮というところじゃ。お主がわかりやすいようにいうと神界じゃな。」
「天使がいるということは私はこれから天国に連れて行かれるのですか?」
「いや、天国に連れて行くことはないぞ。天国に連れて行くならわざわざ最上級神の儂が出てこずに天使に任せるからの。お主がここにいるのは儂のお願いを聞いて欲しいからじゃ」
「お願い、ですか?」
「そうじゃ。儂を含め、上級神以上の神は自分の世界を作りそこを管理するのが仕事なんじゃが...やはり神といっても個性がそれぞれあってな、世界によって住んでる者も環境も全然違うのじゃ。そこで話し合って上級神以上の神全員で管理する世界を作り、そこで他の神の仕事を見て自分の世界に取り入れようと試みたんじゃが、世界を作って管理を始めるまでは良かったんじゃ。儂らからその世界の者にいわゆる神託をして管理してたのじゃが、入れ替わり立ち替わりそれぞれの神が「こうしたい」「ああしたい」と言い出してな、世界が混乱したのじゃよ。こんなことは想定外での、どうするか緊急に話し合った結果、むやみに神託をするのをやめようとなり、儂らは基本的に見るだけになったんじゃ。すると、世界は安定し出したのじゃが、今度は人同士の争いが起こってな、正直どうしたらいいのか困っておったんじゃよ。そんな時にある上級神が「現地で管理する者を作ろう」と言い出してな。誰を現地に送るかで言い争いになったんじゃ。その時出た案の中に儂らの代わりにその世界に全く関係ない奴を送り込んだら誰の味方もせずに公平に管理してくれるかもしれないとなったんじゃよ」
「それで選ばれたのが私だと?」
「そういうことじゃな」
「ちなみに断ることは可能ですか?」
「理由次第じゃが、あまりお勧めはせんよ」
「なぜですか?」
「お主がこの話を断った場合元々予定していた転生先に転載することになるが、その転生先はミミズなんじゃよ」
(ミミズは嫌だな)
「今ならお主の好きなチートをつけることが出来るがどうする?」
「ッ!」
私はなぜそのことを知っているのかと思ったが、神様だからだろうと判断した。確かに昔から本を読むのが好きだったし、癌の治療で入院していた時もずっとラノベにはまって読んでいた。35歳になって趣味がラノベというのも恥ずかしい気がしたので美香以外には黙っていたが。
「チートをもらえるということはいわゆる剣と魔法の世界ということですか?」
「そうじゃの。お主の好きなラノベやゲームのような剣と魔法の異世界じゃ。勿論エルフやドワーフなどの異種族もいるの。で、受けてくれるかの?」
「そうですね、そこまでしてくれるのなら受けてみようと思います」
「おおそうか、それはありがたい。他の上級神にいい報告ができそうじゃ」
「それで、もらえるチートというのは?」
「まずは、言葉が通じないとダメじゃから"全言語理解"。そして向こうで困った時用に"ヘルプ機能"これは質問したことに答えてくれる。そして最後に"言霊魔法"じゃ」
「"言霊魔法"とは?」
「うむ、"言霊魔法"とは魔力を使って喋った事象を現実に起こすことが出来る魔法じゃよ。例えば魔力を込めながら「火よ出ろ」と言ったら火が現れるみたいな感じじゃな。その火がどこに出るかは本人のイメージか、喋る時に指定しなければならないが慣れれば便利じゃよ」
(便利どころかすごいチートじゃないか)
「ちなみにその魔法はすべての神を集めたとしても使える者はいないの。儂も使うことができないの。似たような能力ならあるが」
「そんな魔法を私に授けてもいいのですか?」
「お主は前世で喋ることができなかったせいで言葉の重みというものを知っておる。お主なら悪用はしないじゃろ?」
(そこまでわかるのか神というものは)
「それと、さっきからお主が考えておることも儂に筒抜けじゃよ」
「えっ?」
「神に隠し事はできんよ。その考え事をしている時の口調がお主の素なのじゃろ?喋る口調と考える口調が違うのは聞いていて変な感じがするからやめてくれんかの?素の口調で喋って良いから」
「そうです...そうか。それならこの口調で喋らせてもらうけどいいんな?」
"俺"は言葉を失う前の口調に戻す。これも喋れなくなった弊害だな。紙とかに書いて伝えるとどうしても丁寧な言葉遣いになる。いつしか人と接する時は無意識のうちに丁寧な言葉遣いになっていた。
「儂が許したんだからいいんじゃよ」
「そろそろ転生させるぞ?お主に"言霊魔法"を植え付けるのに少々時間がかかるのでな転生準備で2年ほどかかるのじゃ。次に会う時は転生して3年したぐらいじゃの。その時にまたやってほしいことを話すとしよう。それじゃあ、いい異世界ライフを!」
「ちょっ、いきなりす...」
言葉を全部言い終える前に俺の視界は真っ白に染まった。
初めまして、こんにちは躑躅です。不定期投稿と言いつつも2日連続での投稿です。書き始めたら思ったより集中して書き上げることができました。まだまだ未熟な点はあると思いますが、誤字脱字の指摘、話の感想などお待ちしております。