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キャンプファイヤーと告白

体育祭も終わり、制服に着替えた私はキャンプファイヤーの会場へと向かった。

流石というのかなんというのかこの学園のキャンプファイヤーは制服に着替えてキャンプファイヤーを中心にして立食パーティーのようなものをする。

私も制服に着替えてキャンプファイヤーの会場へ向かうと会場でなみさんと雅にぃが話しているのが見えた。

「なみさん!!」

私が声をかけるとなみさんが振り返ったのだけれども、その振り返った顔はだばだばと涙を流していた。


「えぇ?!!なに?!!」

思わず叫ぶと隣にいた雅にぃがふっと笑った。

「こいつにな、さっきの話したんだよ。」

さっきの話?


首を傾げる私に雅にぃはまた笑みを浮かべる。

何がそんなに楽しいんじゃい?


「お前がなみをお姉ちゃんみたいに思ってるっていう話」

「あぁーー、その話ですか。え?それでこの反応?!」

「そうそう。マジでこいつ泣きやがった」

語尾にwwwが付きそうな言い方で楽しそうになみさんを見る雅にぃ・・・。


こいつ、絶対Sやん・・・。


私が冷たい目で雅にぃを見ているとなみさんがいきなりガバッ!と抱きついてきた。


うぉ?!な、なに?!

「ずみれぇぇーーーーーー!!!!わた、わだじのごとそんなふうにおもってくれてだんだねぇぇぇーーーー!!!」

顔面、鼻水と涙だらけの顔を思いっきり制服になすりつけてくるなみさんに引かないでもなかったけどまぁ、ここは素直に背中をさすってあげた。

「全く、なみは本当にすぐ泣く・・・よね☆」

・・・ん?雅にぃどした?


急に声が高くなって幼くなった雅にぃに私が首を傾げるとその原因はすぐにわかった。

「あ、まーくんと桃ちゃん!」

後ろからこのふたりが来たから雅にぃは仮面をかぶった見たいですね・・・。あまりの変わり身の速さにびっくりしたわ。

「え?なみさんないてるんですか?大丈夫ですか?」

天使桃ちゃんがなみさんの様子に気づいて声をかけるとなみさんはジュルジュルと鼻をすすった後に「だいぞーぶ。」と一言。そしてその後に肩を震わせ始めた。

「え、なみさん今度は何?」

しばらくフルフルと震えていたなみさんは耐えきれない、と言うように雅にぃを指さした。

「え、雅にぃがどうかしたの?」

「だ、だって・・・、だね、ってだねって・・・。普段とキャラ違い、過ぎ・・・て」


あ、その事ですか・・・。

なみさんが言おうとしたことがわかった。うん、たしかにそれは思うわ〜。

だって雅にぃ、普段のキャラ中身おっさんだから口調とか荒いのにみんなの前では攻略対象と同じキャラ演じてるからギャップがすごいんだよね・・・


あ、指摘されたら私も笑えてきた。やば・・・

「ふっ、く、ふふふふふ、」

突然笑い出した私に桃ちゃんとまーくんは困惑し始め、なみさんは「でしょwwwwww」とさらに笑い出す。

雅にぃは数秒きょとんとした後、私達が何に対して笑ってるのか気づいたようで「・・・てめぇら、覚悟は出来てんだろうなぁ?」と私たちにしか聞こえない声でつぶやく。

あ、しまった・・・。怒らせたかも・・・。でも、笑い止まらん・・・。

「ご、ごめんなさい・・・。」

笑いながら私はなんとか雅にぃに謝る。

「・・・こんなに謝られた気がしない謝罪初めてだわ。あ、でもいいや。お前は、許す。俺に協力してくれたんならな?」

脅すように言われた私はうんうんと頷く。

協力ってあれだよね。なみさんのことだよね!

「協力?」

なみさんがキョトンと首を傾げる。

「いや、こっちの話。桃ちゃんも誠くんもすみれちゃんも優勝おめでとう!」

雅にぃの猫かぶりモードが再び始まる。

あ、だめ。笑っちゃダメよ。すみれ。笑っちゃ、だめ。


ピクピクと動く表情筋を凄まじい精神力で抑える。

雅にぃに微妙な顔で見られたけどまぁ、セーフでしょう。

「ありがとうございます!」

「ありがとう。杉原はおしかったな。」

まーくんもスイッチが入ってるみたいで普通に男言葉で話している。

「まぁね。もうちょっと本気出せばよかったんだろうけど準備で疲れちゃって・・・」

まぁ、あれだけなみさんと走り回ってれば疲れるわなぁ。

「あ、なみさん、お疲れ様でした。」

私が向き合ってなみさんにぺこりと頭を下げる。

「うん。ありがとう。杉原が手伝ってくれたおかげでだいぶ楽になった・・・」

「だから頼れって言っただろ?」

「うん」

なみさんの可愛らしい笑みに雅にぃも笑顔で応える。

あれ?結構いい雰囲気・・・?


私は桃ちゃんとまーくんと顔を合わせて気づかれないようにその場からいなくなった。


「あ、私そろそろ行かないと。」

「え?」

「どこに行くのよ?」

まーくんが元の口調に戻って質問してきたので私は素直に答える。

「零斗のとこ。返事しないと。」

それだけ言って私は二人に背を向けて少し早足で約束の場所へと向かう。

早く行かないと、時間に遅れちゃう・・・。


後ろでまーくんと桃ちゃんが「「ええええええぇぇぇーーーー!!!」」と叫んでるのが聞こえた。

後で質問攻めにされそう。









私は早足で約束の場所――――最初に私と零斗が出会った場所に向かう。


校舎の中に入ると静けさが私を包んだ。

・・・なんかあの時のことが遠い昔に感じられるな。


私は零斗がまだ来てないことを確認してゆっくりと外の景色を眺める。

既に薄暗くなった空には綺麗な月が浮かんでいた。



しばらくして約束の時間になると急にバタバタとした足音が聞こえてきた。

何事?!


勢いよく後ろを振り向くとそこには頭ボサボサ、制服ぐちゃぐちゃの零斗がいた。

「え?どうしたの?」

「おくれてごめん!!女子にもみくちゃにされて逃げてきた!」

「はぁ?」

「行きたいところがあるからって言ってんのに今日に限ってなかなか離してくれなくてさ、段々女子の人数も増えてきてたし・・・。」

疲れきったような零斗を見て私は思わずくす、っと笑ってしまた。

するとその様子を見た零斗は柔らかい声で静かに呟いた。

「すみれちゃん変わったね。」

「え?」

思わぬ零斗の一言に私は問い返す。

「最初にあった時はもっと張り詰めた雰囲気だった。それが今はすごく柔らかい雰囲気になってる。昔のすみれちゃんも好きだけど今のすみれちゃんはもっと好きだな」

しみじみと言われて私は思わず赤面する。

でもそう言ってほにゃあと笑う零斗だって変わった。だから私も呟く。

「零斗も変わったよ。」

「そう?あー、でもたしかに毎日楽しくなったな。」

首の後ろに手をやって照れくさそうに笑う零斗を綺麗だなぁなんて見ながら私は続ける。

「出会った時はさ、とにかくチャラくて、女子と遊んでる印象しかなかった。」

「う"っ・・・、そこを突かれると痛い・・・」

「ふふ、まぁ本当のことだからね。・・・でも、零斗はどんどん良い方に変わっていった。笑い方も柔らかくなった。」

「・・・すみれちゃんのおかげだよ。」

「ううん。零斗は自分で『変わった』んだよ。」

「・・・」

何も言わないで固く目を瞑る零斗に私は少し心配になりながら続ける。


「私はそんな零斗にたくさん助けられた。救われた。

私は、そんな零斗が好きです。」


私の言葉の後には静寂が続く。


そして長すぎる沈黙に私が心配になった数秒後、零斗がやっと呟いた。



「え?」



幽霊でも見たかのように私を見つめてくるので私が少し怒ったような顔をしてみせると零斗は「嘘だ」と呟いた。

「・・・いや、俺はもう騙されないぞ。」


数秒後、零斗がポツリと呟いた。

何に騙されないんだよ?!と思った私は悪くない。

だってさ、せっかくの告白になんの返答もなしに何秒も時が過ぎてやっとなにか喋ったと思ったら「嘘だ」って酷くない??!


「すみれちゃんの好きって友情的なやつでしょ?俺はもうすみれちゃんの言葉で勘違いはしない!他の女の子と一緒にしちゃダメなんだよねー。すみれちゃんの場合は。」

なんかドヤ顔で落ち込んでるんですけどこの人・・・。

あー、私こんな人好きなのかぁと思わないでもないけど好きになっちゃったもんは仕方ない。


「恋愛的な好きですけど。」


私の返答に今度こそ零斗は完璧に固まった後にのろのろと腕を上げて自分の顔をつねる。

「夢、じゃない・・・。今度こそ、夢じゃない?」

「現実だよー」

私がぼーっとしている零斗の顔の前で手をひらひらとさせるとその腕をガッと掴まれた。

「すみれちゃん、俺のこと好きなの?本当に?」

「うん。お返事遅れてごめんなさい。」

「・・・うん、・・・うん。・・・うん!!」

何回も首が折れるんじゃないかという勢いで頷いた零斗を見ていると私の体が不意に浮遊感に襲われた。

「・・・え?」

・・・もしや!!!


横を見ると零斗の顔が近い!!!

・・・これはお姫様抱っこですよねぇ?!!!!


高い!!めっちゃ高い!!!怖い!!

誰だ!お姫様抱っこは女子の憧れって言ったやつ!!

これ、自分が重くないかめっちゃ気になるし、思ったより高くて超怖いんですけど?!!顔近いし!!

「下ろして!」

「ダーメ。俺のお姫様。」

蕩けるような微笑みを浮かべた零斗はそのまま早足で外へと出る。


待って待って!!!どこへ向かってるの?!!てかスピード早い!!怖い!!


「ちょ、止まって!!」

「しっー。」

零斗は喚きまくる私の額にちゅ、っと音を立ててキスをした。

ぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!!

もう無理!もう無理!!キャパオーバー!!

乙女ゲームの再現は画面越しじゃないと心臓壊れる!!!無理無理無理!!


顔を真っ赤にして何も喋らなくなった私を見て零斗は悪戯が成功した子供のように楽しそうに笑った。

・・・くそっう!!



そのまま零斗は歩みを止めることなく進み続け、やっと立ち止まった場所はキャンプファイヤーの会場だった。


「ちょ、ちょっと?!零斗?何する気??」

小声で零斗に質問しても零斗はにっこにこと笑うだけで私の問いには答えない。


皆は私たちの姿を見つけて、一斉におしゃべりを辞める。

ちょ!喋ってて!!!喋ってていいから!!!何これ、羞恥プレイですか?!

人混みの中にはしっかりと顔をニヤつかせたまーくんや桃ちゃん、なみさんと雅にぃもいた。

桃ちゃんは可愛いから許すけど後の人は後で覚えておけよ・・・。


恥ずかしいやらなんやらの中でそんなことを思いながら私は零斗にしがみつく。

ぬぁ!もう恥ずい!!ていうか地味に落ちそうで怖い!!


そんな私を零斗はしっかりとした持ち方に変えて大きなはっきりとした声でニコニコの笑顔で言い放った。


「すみれちゃんが恋人になりました!!!」

と。



何故か一部のクラスの男子からは「おぉ!」とか、「やっとか」という声が聞こえる。

そして私のクラスメイトは相変わらず生暖かい目でこちらを見ていた。

だからその目やめろ!


てか、なんちゅーーー事言ってくれとんねん!!?


「ちょっ?!零斗!」

私が数秒固まった後に零斗に注意すると零斗はもう1度蕩けるような笑みを浮かべ、「大丈夫」と呟いた。

「今までの関係は誠心誠意誤って全部清算してきた。今日、ちょっと絡まれた子もいるけどその子達にもしっかりと別れを告げた。すみれちゃんに手は出させないよ。」

わーい、やったね。


・・・いや!そういう問題じゃないよ?!!たしかに私のチキンハートではあんなキラキラ女子からのイジメとか耐えられないけどね?!そこは有難いけどさ?!!

何故!!今!!ここで!!、それを言ってしまう?!!


何の罰ゲームだよ、と思うものの今までで一番幸せなんじゃないかぐらいの顔をしてる零斗にそんなひどいことは流石に言えるはずもなく私はもう俯くしかない。



私は冷やかしと歓声の中でひたすらに羞恥に耐えていた。




でも、少しだけ幸せだった気がしなくもなくもない。


少しだけね!!!






◇◆◇



結局あの後、お姫様抱っこからようやく開放された私は皆の冷やかしにあいながらお互いの健闘を讃えていた。


と、1人で飲み物を選ぶ矢野宮を見つけたので声をかける。


「矢野宮様、体育祭お疲れ様でした」

私が声をかけると矢野宮はびっくりしたようで勢いよく振り返った。

「あ、北条さん・・・」

「はい?」

「さっき、すごかったね」

思わない人からの指摘に私は顔を赤くさせる。

「いや、あれは・・・」

もごもごと口ごもる私に矢野宮は静かに問いかけた。

「北条さん、君は今、幸せ?」

「え・・・?」

矢野宮の方を見返すと矢野宮自身も思わず、と言った感じで口を抑えている。

「あ、ごめん。なんで俺、こんなこと・・・?意味わかんないこと言ってごめんね。」

「いえ・・・。でも、そうですねぇその質問に答えるのなら・・・。」

矢野宮は私の方をしっかりと見つめる。


「とても、とっても幸せです。」


前世(むかし)と違って今ならはっきりと言いきれる。

私は今、最高に幸せだ。


矢野宮は私の答えにしばらく目を瞠った後、「そう」と答えた。

そうして浮かべた笑みは今までの中の矢野宮の笑みで一番晴れ晴れとした笑顔だった。

私もそれにつられて心から笑う。


「やっと君の本当に笑った顔を見ることが出来た・・・」


矢野宮がポツリと呟いたその小さな言葉は風に遮られて聞き取ることは出来なかった。





と、遠くから「すみれちゃーん」と私を呼ぶ零斗の声が聞こえた。

私がチラリと矢野宮を見ると矢野宮は笑顔で私の背中を押した。


「行ってきな。俺のことはいいから。」


そのはにかむような表情が不意に前世のクラスメイトの男子の面影とかぶった。


・・・あれ?


でもそれは一瞬のことで私は見間違いかと思ったけど気になってしまって矢野宮にこう話しかけた。


「昔、私にとても気を使ってくれた男の子がいるんですが。」

私がいきなりの話し出したことにビックリしながらも矢野宮は話を聞いてくれる。


「矢野宮様はその方ととっても似てますね。優しいとこがそっくりです。」

私はそれだけ言うと「それじゃあ」と矢野宮に別れを告げた。

なんでこんなことを言ったのか自分でもわからなかったけど何故か言った方がいい気がしたから話したとしか言えない。

なんせ、そのまま背を向けてしまったからもう弁解もできない。


だから知らない。


矢野宮が後ろで一筋だけ涙を流していたことも。


矢野宮が自分の感情に困惑しながらも私の背中にむかって「ありがとう」と呟いていたことも。












次で完結です!

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