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自分の気持ちがわからなくなった時は

着々とラストに近づいています。

もう暫し、お付き合い頂ければ幸いです!

日差しの強い中、体育祭は順調に進んでいた。

実行委員の頑張りが実ったと私的にも嬉しいんだけど、その一方で私自身も競技に出たりと心身ともに疲れてきた。


気になる勝負の方はといえば今現在、私のクラスと零斗のクラス、そして矢野宮のクラスが1位を争っている。

今一番優勢なのは零斗のクラスだった。

というのも、零斗は今のところ本当に全競技でまーくんに勝っているのだ。

私も最初は驚いた。

え、まさか。って半信半疑でまーくんに聞いたら悔しげに顔を歪めて「その通りよ」と言われた。

びっくり仰天だよね。


さっきも言った通り、1位は零斗のクラス。

2位は私たちのクラス。そして3位が矢野宮のクラスだ。

女子と男子の得点の総合で順位が決まるので女子も頑張らないとね!!




◇◆◇




競技が5個ほど終了するとお昼ご飯の時間になった。

私はクラスの人達と輪になって食べた。

あの行事の時にしかない独特な雰囲気が私は好きだ。

そういえば、桃ちゃんとまーくんは仲直りしたみたいでさっき、刺繍の入ったハチマキを持ったまーくんを励ましてる桃ちゃんを見かけた。

・・・けっ!


まぁ、仲直りにできたんなら良かったんですけどねっ!


私はそんなふたりを見て「ふぅ」と静かに息をついた。

私の方はなんの進展もなく、あれから零斗とも話せていない。

零斗も私も実行委員としての仕事があるし、それにあいつは競技が終わったあと、毎回すぐにたくさんの人に囲まれていて私は遠くから見ることしか出来なかった。


まぁ、自分の気持ちの整理がついていないのに私は何をしてるんだって感じなんですけどね・・・。

少し気落ちしながらもラブラブなまーくんと桃ちゃんを見送って私は校舎周りを気分転換を兼ねて少し歩く。

と、ブラブラと歩いていた私の視界に赤毛の男子が入った。

・・・あれは零斗?


1人かな?と思い、私は零斗に追いつこうと少し小走りで彼に近づいた。すると零斗は曲がり角を曲がる。私は一瞬零斗を見失いかけてから急いで零斗の方へ行くとそこにはさっきまではいなかった女子に囲まれてハーレムをつくっている零斗がいた。

なによ・・・。結局またハーレムつくってんじゃない。


なんだ、と思う反面、少し幻滅してる自分がいる。なんて自分勝手なんだろう。

そうは思うものの不満は止まらない。

やっぱり、チャラ男はチャラ男のままよ。だってその性格を直せるのはヒロインしかいないんだもの・・・。

私は、ヒロインじゃない―――。


悪役令嬢だと気付いて必死に頑張った。破滅フラグを回避するために、みんなに嫌われないために・・・。なのにどうして私じゃダメなんだろう。

やだな・・・、こんな汚い感情持ちたくない・・・。


イライラする自分に困惑して、自己嫌悪してどうすればいいのか分からなくて私はそのままそこで立ち止まった。

さっきまで膨らんでいた気持ちはみるみるうちに萎んでいく。

・・・なにしてんだろ、自分。


そのうち、話し声が聞こえてきた。


「ねぇー、なんで最近遊んでくれないの〜?」

「そうだよぉ〜、前みたいに遊ぼ?楽しいことしようよ」

耳障りなかん高い声が聞こえてくる。


耳を塞ぎたいのに、この場から逃げたいのにやっぱり足も体も金縛りにあったように動かない。

・・・なんで、なんで動かないの?!

焦る私をわきに相変わらず耳障りな声は誘うような甘い声をだした。

「零斗だって遊びたいでしょ?」

やだ!聞きたくない・・・!!


「俺はもうそういうことはしないよ」


低い、男の人の声がした。

・・・零斗の声だ。


私が理解したと同時にまたもや、かん高い声が上がる。

「なんで!!?」

「前は一緒に遊んだじゃん!!」

「そうよ!なんで今更・・・」

「もう、そういうことはしないってある人に誓ったから。」


そんな言葉にも零斗は全くぶれない。

私はきっぱりと言い切った零斗にビックリしながらも胸が軽くなっていくのを感じた。

・・・私、単純だ。

そうは思うものの嬉しいものは嬉しい。

さっきまでの沈んだ気持ちが嘘みたい。


「・・・意味わかんないよ!」

「急になんで?!」

「そんなの知らないしっ!!」

「こっちの方が絶対楽しいに決まってんのに!」

「うん、でももう決めたんだ。ごめんね〜。他の人にも言っておいて。」

零斗があまりにキッパリと宣言したからか、かん高い声が一瞬、途切れた。


「・・・っ、あっそ!もう行こ!」

1人の女子がそう言ったのをきっかけに5人ほどいた女子が一気に帰っていく足音が聞こえた。

・・・零斗は?


少しだけ覗くと「ふーー」と息を吐き出しながら上を向く零斗が見えた。

暫く上を向いたままでいた零斗は「よしっ!」と気合を入れるように声を出して歩き出した。


私は声をかけようとしたものの私を呼ぶ声がしたため、結局声をかけることは出来なかった。




◇◆◇



結局、自分がどうしたいのかわからないまま体育祭は進んでゆく。

未だに零斗はまーくんに全勝している。

周りの生徒も零斗の様子に気づいたようで「本領発揮か?」とか、「いきなりどうしたんだろう?」なんて声が多く上がった。


その一方で普段真剣な姿を見せることが少ない零斗が本気を出したことで今までどこか零斗を遠巻きに見ていた人たちも注目するようになっていた。特に顕著なのは女子だ。

今までは零斗の周りに自ら進んでいるのは派手な女子ばっかりだったけど、今日はお淑やかそうな子から、活発な子まで色々な女子が零斗に顔を赤くして零斗のそばへと近づいていた。

私はその光景を見てイライラしているのを自覚しながらも私は誰にイライラしてるのかわからないでいた。


私自身の競技の方はと言うと私が参加する競技はハードル走なのだがぼーっとしながら飛んでいたせいで最後の一つのハードルを倒してしまい、結果、最後の最後で抜かれ2位で終わった。

余談だが、桃ちゃんは借り物競争に出て『自分にとって大切なもの』というお題で迷わずまーくんから貰ったと言っていたくまのキーホルダーを持ってゴールしたあと、自分のしたことに気づいて顔を真っ赤にしていた。

私達はそんな桃ちゃんとそれを見て悶えるまーくんを生暖かい目で見守っていた。

公共の場でイチャつくなや・・・。おばさんの心にダイレクトアタックされるから。今、おばさんの心凄いナイーブだから・・・。


まぁ、ということで自分が出た競技でも思うような結果が出なかったのに付け加え、ラブラブオーラでやられた私が少しトボトボとした足取りで自分の席に戻るとそこには心配そうにこちらを見る杉原がいた。

「あ、ごきげんよう杉原様。なんだか、とても会うのは久しぶりな気がしますわ。」

私が即座に猫をかぶると杉原は私の素を知っているからか少し口元をひきつらせながら「こんにちは」と一言。

なによ、その態度。失礼ね!私はいつも完璧な淑女よ、ほほほほほ。


「すみれちゃん、ちょっといいかな?」

おっと、杉原も周りに人がいるからか猫かぶりモードだ。

最近、ただでさえ会うことが少かった上になみさんと話している素の杉原の印象しかなかったからなんだかとても懐かしくかんじた。

・・・ていうか、これって久しぶりに相談かな?


私は「えぇ。暇ですから。」と頷いた。









「さて、と。」

あっつい日差しを避けてグラウンドから空き教室に移動した私たちは廊下に人がいないのを確認してからお互いの猫かぶりを脱いだ。

「まず、北条。お前の様子が最近おかしいからなみが心配してた。」

「へ?」

「俺もなみも、あと言わないけど誠や桃井、宮谷だって心配してる。」

「・・・そう、ですか。」

私は思ってもなかった指摘にビックリしながらそれだけ呟いた。

・・・私そんなにわかり易かったかな?


「特になみなんかすげぇ、うるさいんだかんな。すみれの元気がない、ってさんざん嘆いた後にでも実行委員だから会いに行く時間が無い、なんで私は実行委員になっちゃったんだろうって泣きわめくんだかんな?!」

あー・・・、想像出来てしまう。


きっとそれを杉原が慌てながら必死に慰めてるんだろうな〜なんて想像をしながら私はフフッと少し笑みを零した。

「ったく。お前は元気が取り柄なんだから元気でいろよ。」

ぶっきらぼうに言った杉原は雑ながらもグシャグシャと乱暴に頭を撫でてくれる。

慰められてるのかな?これは?


そんな杉原の気遣いを感じながら私は「なんか、お兄ちゃんみたい」と呟いた。

「お兄ちゃんだぁ?」

杉原が驚いたように眉を寄せた。

「うん。私、前世も今世もお兄ちゃんはいないけどなみさんと雰囲気が似てるから。なみさんはなんかお母さんみたいな、お姉ちゃんみたいな存在だから・・・。」

「・・・そうか。そのセリフなみに伝えとくわ。きっとあいつ泣いて喜ぶぞ。」

なみさんに伝える様子を想像したのかくすりと笑う杉原をみて私は微笑ましく思いながらも「泣きますかね〜?」とおどけた。


・・・杉原は本当になみさんのこと好きなんだな。

「あ、バレてた?俺、外堀から埋めていくスタイルだから北条も協力よろしくな。」

・・・え?

・・・・・・えぇぇぇぇぇぇーーーーーーーーー!!!!!!!!!


え、えぇ、おぅぇー!?ってか私、声出てた?心の中で言ったつもりだったんですけど?!ってか今はそういう問題じゃねーか?!!

あっさり認めたな!杉原!!照れる様子もなく言い切ったよこいつはぁー!

「ってことで、俺がお前のお兄ちゃんっつーなら俺のことも杉原じゃなくて雅って呼べよ。雅にぃでもいいぞ」

ニタニタしながらこっちを見てくる杉原はいたずら小僧のそれだ。

ったく・・・。しょうがないな。いっちょ、お兄ちゃんとお姉ちゃんのために恋のキューピッド(笑)頑張りますか!

「じゃあ雅にぃって呼ぶ!私ちょっとそういう呼び方憧れてたし・・・」

「お、おぉ。意外と素直だな・・・。まぁ、元気でたみたいでよかったわ。協力頼んだぞ?」

「はいっ!」

私はピシッと敬礼して呆れたようにでもどこか楽しそうに笑う雅にぃにニコッと笑い返しながら見送る。

と、空き教室を出ようとしていた雅にぃが1度こちらへ向き直った。

「あ、そうだ。自分の感情に不器用なお前に一ついい事を教えてやろう。」

「え?」

何のこと?と私が問う前に雅にぃは続けた。

「自分の気持ちがよくわからなくなった時、自分の感情が分からなくてイライラした時。そういう時ってあるだろ?」

その言葉に私はドキッとする。私の気持ちを知ってか知らずか雅にぃは言葉を続ける。

「そういう時は自分の感情に無理に名前をつけようとしなくていい。感情って言うのは色々な想いが交わってできてる。

嫉妬にせよ、愛情にせよ、憤怒にせよ、それはあくまで一つの枠でしかない。無理に枠にはめようとしなくていい。まだ自分の気持ちがどういうものなのか分からないんだったらそういうものなんだって軽く考えてみろ。深く考えずに。」

「深く、考えずに・・・?」

雅にぃの言葉を反芻する私を見て雅にぃは満足そうに頷いた。

「そう。そうやって過ごしていたらいつか不確かだったその形はしっかりとした形をなしてお前の胸にすとんと落ちてくるはずだから。言うなれば今は感情の製造途中なんだよ。」

私の中にはない考え方に私はふむふむと素直に頷く。


なんだ、この気持ちを素直に受け止めてあげればいいのか。

なんだか、すごくすっきりした気分だ。

相当、この空き教室に入ってきた時と顔色が違ったのだろう。

雅にぃは面白そうな顔をしながら私の頭をまた乱暴になでた後、「お前もあいつも本当に不器用だな。」と呟いた。

雅にぃの優しそうな顔からしてあいつ、とはなみさんのことだろう。



私はふたりが上手くいくことを願いながらも雅にぃと別れた。








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