放課後の出来事
いつもより少し長いです
パチッ、パチッ
静かな教室でひたすらにホッチキスを止める音がする。
あー、だっりぃぃぃぃ
って言うのも私がこの音出してるんですけどね。
ただ今、私は教室で居残りぼっちなうです。
ていうのも放課後、実行委員の仕事があるって言われて待ってたら先生からすごい量の紙の束とホッチキスを渡された。
これで体育祭のしおりを作ってくれだそうです。
まーくんも桃ちゃんも手伝おうとしてくれてたんだけど放課後だと二人共参加出来ないらしくて結局、私はぼっちで作業している。
まぁ、しゃーないんだけどねぇ・・・。
はぁ、とため息をつくと扉の方から「辛気臭ぇ顔してるな」と含み笑いの声が聞こえた。
「あ、青木先生・・・」
青木先生って言うのは攻略対象の先生の事ね。
扉の方を向くと相変わらずだるそうな青木先生が立っていた。
んんん、カッコイイ!!最高です、その気だるさ!
心で悶えても顔に出さないように気をつけているとどう勘違いしたのか青木先生は「お疲れ?」と聞いてきた。
「あ、いえ。別に疲れたわけじゃないですよ。」
「そうか?その割には表情筋使われてないけど・・・」
あ、それ元々です。私、鉄の女(笑)らしいので。
なんてことをイケメン先生に言うのは恥ずかしいので私は「たしかに少し疲れたかも知れません」と誤魔化しておいた。
んー、にしても先生と二人っきりって話す事がないと少し気まずいよなぁ・・・。
私はとりあえず時間稼ぎのために伸びをして筋肉を伸ばす。
あーー、気持ちぃぃー!
「はぁぁ」と気持ちよさのあまり声が漏れると青木先生が「ふっ」と少しだけ笑った。
「・・・どうなされました?」
「あ、いや、いい意味で俺が思ってた北条と違うなーと思って。」
「・・・はぁ、」
今の短いやりとりの中で何か変わったことしましたっけ?
って言うか青木先生の中での私ってどんなイメージよ。
ちょっと不安になりながら曖昧に頷くと青木先生はなおもクスクスと笑った。
やっべ、可愛い。どうしよ。成人男性(教師)がめっちゃカッコイイんですけど・・・?!いや、顔がかっこいいのはもちろんなんだけどなんか仕草とか雰囲気が可愛い・・・。
あー、龍宮寺 誠ルート以外もちゃんとやればよかったぁーー!
とくに青木先生ルート!!全クリする気無かったから友達が言ってたのとネットで見つけた情報しか知らないんだよぉぉ。
ということを心の中で思ってる私ですが、表情筋は動いていません。ふふふ、鉄の女を舐めるんじゃねーぞ。ここでニヤつくような私ではないのだ!!
「北条ってさ、もっと・・・、なんて言うか、言い方悪いけど澄ましてるやつかと思った。澄ましてて傲慢な令嬢かと思ったけど違うっぽいな。」
少しだけ笑いを抑えて青木先生はそう言った。
えぇ、客観的に見ると私ってそんなにthe悪役令嬢みたいな女でしょうか?!
そんな評価だったのか・・・、そうなのか・・・。
今回ばかりはさすがの私でも少し落ち込むぞい。
しゅんと項垂れる私も見て青木先生が珍しく慌てだした。
「あー、違う、違う。あくまで遠くから見た時な?話してみればすぐわかるし、そんな落ち込むことねーって。」
「・・・はい。」
乙女は一度傷つくとなかなか立ち直れないのですよ、青木先生。
「あー、その、ごめん。他意は無かった」
青木先生の言葉の後、頭にポンポンと感覚があった。
・・・?
・・・・・・??
・・・・・・・・・?!!!
こ、こここここここここれって、先生に頭ポンポンされてます?!
お、おおおおおぅぅぅ、やった?!やった!!何か知らんけどやったぁー!慰めてくれたーー!ラッキーーーー!!ふぉぉぉぉぉぉーーーーー!!!!
ちょっとこれはニヤケが止まらん・・・
「先生、気にしてませんから大丈夫ですよ。ちょっとほかの事考えてました。」
「・・・そうか。それならいいんだけど」
「はい、ありがとうございます」
にやけ半分、感謝半分いや、にやけ8割、感謝2割で私が笑ってお礼を言うと青木先生はふいと視線を逸らした。
「あー・・・、なんかお前がモテるのわかる気がする。」
「え"」
あ、やべ、おっさんみたいな声が出てしまった
いや、私モテてないっすよ?モテたいのに!前世より全然美人なのに!!何故か全然モテないんですよ!
と、私の考えていたことは顔に出ていたらしく青木先生が「え、もしかして気づいてない?」と聞いてきた。
「気づいてないもなにも、私モテたことありませんよ」
「いや、だって、龍宮寺とも一時期噂あったし、今は宮谷と矢野宮からも口説かれてるだろ?」
「く、口説かれてないですっ!」
必死に否定する私を見て青木先生がニヤリとした。
「えー、なに。もしかして北条って純情?!」
先生、そのセリフはアウトです。セクハラで訴えますよ。
という気持ちを込めてジト目で訴えると青木先生は気づいたようで「あーごめん、ごめん」と謝った。
「んー、鈍感って時に凶器だよな・・・」
よくわからないセリフを呟いてたので無視しておこう。
それよりも!
「先生!時間あるならこれ手伝ってくださいません?」
「えー・・・、めんどくせぇ。」
「ひとりじゃ終わらないんですもの・・・」
「んー、仕方ねぇな・・・。ホッチキス取ってくる。」
「あ、ありがとうございます!」
やったね!
ほうじょう すみれはみちずれにできるひとをみつけた。
てれててってて〜♪
◇◆◇
しばらく紙の束をまとめていると青木先生が戻ってきた。
「わりぃ、遅くなった。ホッチキスがなかなか見つかんなかった。」
「いえ、大丈夫ですよ。」
という会話を最初にしてからはずっとパチッ、パチッという音を二人で黙々と鳴らしていた。
う〜ん、気まずいぞよ。でも近くにイケメンがいるってよき、よき。
眼福だぁー、とホクホクしていると青木先生が「俺の顔になんかついてる?」と聞いてきた。
やべ、見すぎた。
「いえ、何もついてませんよ。」
「・・・そうか?」
「えぇ。」
そこからまた沈黙・・・。
みちずれが増えたのはいいけど気まずい・・・。
と、廊下が不意に騒がしくなった。
ん?こんな時間に誰だ?
青木先生も私も廊下の方を向くと、女子数名に囲まれてる男子が見えた。
「みんな、手伝ってくれてありがとね〜」
・・・あれ?この声って・・・。
・・・零斗じゃね?
ちらりと廊下を覗いてみるとやっぱり廊下にいたのはハーレムを作った零斗だった。
その光景を見て私は思わず半目になる。
「ね、先生。あの光景見えます?あの人が私のこと好きだって言ってるのは多分、からかわれてるのではないかと・・・」
青木先生にそう伝えながらも最近「あれ?こいつもしかして私のこと本気で・・・」なんて考え出してた私は猛烈な恥ずかしさに襲われる。
ですよね、ですよねですよねですよねーーーー!!!
ちょっと、ちょっと、ちょぉぉぉーーーーとだけ期待しちゃったんです・・・!
だってえらい真面目な表情でそういうこと言われたら本気なのかな?って思うじゃないですか!!
結果、ハーレムつくってますけどね!えぇ!あいつはあーいうやつですよ!そうでした!そうでした!!忘れてましたよ!
怒りのあまりちょっと先生を掴む手に力が入る。
「痛てーわ。」
クスクスと笑いながら言われた私は自分が力を込めていたことに気づいて「すみません」と言いながら急いで力を抜いた。
「嫉妬?」
「違います!!」
「えー、でもなぁ・・・」
そこで言葉を区切った青木先生はちょいちょいと、私を呼ぶ。
私が近寄ると青木先生は耳打ちをしてきた。
「さっきの顔は嫉妬してる顔だったよ」
と。
う、ううううううわぁぁぁぁぁぁぁ!!!!
もうなんか色々恥ずいよぉぉーー!!
先生のエロボもそうだし、吐息がくすぐったいし、言ってる内容もやばいしーー!!!
私は先生から飛び退く。
うわー、多分私、今顔真っ赤なんだろうなー。
マジで前世からそういう経験したことなかったんで心臓バクバクっす。もうやばいっす。
当の先生は大人の余裕とやらなのかにっこりと笑ってる。
くっ!これが大人の色気か・・・!!私も前世こういう人と出会いたかったぜ・・・。
目の前でニタニタしてる先生をみてちょっとイラッとした私はお返しで先生の耳元に口を寄せる。
「先生、セクハラで訴えますよ」
なるべく色気たっぷりに聞こえるようにそう囁く。
セクハラのとこを強調してやった!そして先生の真似をして吐息たっぷりじゃ!!どうだ!恥ずかしいだろ!
私の作戦通り飛び退いた先生に私はニッコリと妖艶に見えるように笑った。
ふふふ、今世は美人に生まれたからこういうのも攻撃力抜群なんだよっ!どうだ!!
ほんの数秒だけ顔が赤くなった青木先生はスグに元の調子に戻った。
「ったく・・・。からかっていいのは大人だけだよ。」
「えー、私もからかいたいですー!」
「本当に俺が考えてたのと全然違う性格してるよなー。面白いわー。」
青木先生はまたもやクスクスと笑った。
私、そんなに変な性格してないつもり・・・なんですけど?
自分のどこが変なのかわからずにきょとんとしていると不意にぐっ、と腰に手を回されて青木先生の方に引き寄せられる。
「次あんな悪戯したら襲うぞ」
そしてそう囁かれた。
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『花梨ちゃーん』
『なにー?』
『青木先生ルートやった?』
『私、誠様ルート一筋だからなぁ・・・』
『えーーーー。やろうよ〜。青木先生ルートスチルエロいのばっかなんだよぉ!!』
『ええー・・・』
『私が好きなのはねー、放課後の教室でヒロインが青木先生に抱き寄せられるスチル!ヒロインに囁きかける場面が本当にやばいのよーー!!エロいの!』
『囁くだけなのにエロいの?』
『うん!!』
『・・・えぇー』
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不意に前世、クラスメイトの女子と話した記憶を思い出す。
・・・あの時疑ってごめんね。たしかに囁くだけでも18禁だね。
キャパオーバーしそうだよ・・・。
抱き寄せられたままの体制で私は現実逃避する。
顔は真っ赤なんだろうけど・・・。
と、突然ガラッ!!!と大きな音がした。
「なにしてんだよ!!!」
扉が開く音とともに、とても荒らげた大きな声が聞こえてきた。
声の主が誰かわからないまま私と青木先生がベリっと剥がされる。
「え?」
戸惑いながら顔を上げるとそこには先程までハーレムを作っていた零斗がいた。
「な、なんでいるの?」
私の問いかけには答えずに零斗は青木先生を睨む。
その目は今までで見た中で一番怒りを含んでいた。
「何してるんですか?」
低い、低い声で零斗が青木先生に問いかける。
「これはまずいところを見られちゃったね〜。」
それでも青木先生はまったく堪えた様子はなく、ニヤリと笑った。
おぉ!この睨みに動じないとは!かっこいいです!青木先生!!
「大丈夫、大丈夫。何もしてないよ。」
「この状況でなにいってんの?」
ちょ、れ、零斗さーん?先生相手に敬語忘れてますよ?!
しかも先生のことそんな睨んでいいの?!
アワアワと焦る私を気にせずに青木先生は「おー、怖っ」とおどけた。
「ちょっと遊んでただけだから。そんな睨むなって。な、北条?」
突然の私への問いかけに私はただただ、こくこくと頷いた。
「・・・すみれちゃん、いくよ。」
「え?」
零斗はその後、何も言わずに私の荷物をとって教室を出ようとする。
「え、でもまだ終わってな・・・」
そう、まだ私は実行委員に仕事があと少しだけ残ってる。
帰るんだったらあれ終わらせないと・・・。
と思いながら私が後ろを振り向くと青木先生が「あとは俺がやっとくわ」と苦笑いしていた。
「す、すみません・・・!」
「大丈夫、俺が煽ったようなもんだし」
最後のセリフが良くわかんなくて聞きなおそうとするも、零斗がますます歩くスピードを上げたので聞けないまま教室を出た。
・・・零斗、ガチおこですか?!!!
誰かぁ〜〜、Help me!!




