ジェットコースターって怖い
更新遅くなりました!
「で?どこ行きます?」
私は『ラブラブ大計画♡』と書かれたピンク色のパンフレットを半目で眺める。
「すみれちゃん、顔怖いよ〜。目が死んでるよ〜〜!!」
私の問いかけには答えずに宮谷はあははー、と笑いながらそんなことを言ってきやがった。
けっ、こっちはなぁ別に恋人でもなんでもない宮谷と成り行きとはいえこんな恋人がイチャイチャするためだけにあるイベントに参加して心がささくれだってんだよっ!!!!
「別に死んでませんよ。で?どこに行きます?」
目なんて死んでないも〜ん。だって私、華麗なる悪役令嬢だもーん。
なんてちょっと調子に乗ったこと思いながら私はもう一度さっきと同じ質問を繰り返す。
「・・・まぁ、いいや。あえて触れないでおくね。どこに行こう?」
なんかちょっと宮谷に哀れみの目を向けられた気もしなくもないけどまぁ、いいや。
改めてパンフレットを見ると各アトラクションにそれぞれイベントがある。
え〜、なになに?これ、イチャイチャして最後に鍵をゲットできれば記念賞品が貰えるのね。おしっ!
元庶民の私としては無料でもらえるものならなんでも貰おう精神なので俄然やる気が湧いてきた!!
「おぉー、燃えてるね、すみれちゃん。取り敢えず無難にジェットコースター行こっか?」
「あー、そうですね!行きましょ!」
私は宮谷の意見に勢いよく頷いてジェットコースターへと向かった。
「うわ〜、さすが人気アトラクション・・・。混んでますね・・・」
ただいま、ジェットコースター前。行列に並び始めました。
「まぁ、イチャイチャしながら気長に待とうね。」
「しません。」
宮谷の軽口に私がいつも通りあしらっていると手錠を繋がれた方の手を恋人繋ぎにされた。
「ちょっ、何してるんですか?!」
「ん〜?恋人繋ぎ」
「なんで?!!」
「何となく♡」
やめろ、男子高校生が語尾にハートマークつけるな!!
私は睨みながら手をはなそうとするものの手錠のせいで上手く手を動かせない。
「いいじゃん、別に。周りはもっとイチャイチャしてるから逆に目立っちゃいそうだし・・・」
少し拗ねた様子で私をジトーとした目で見てくる宮谷の言うとおり、周りはピンクの手錠をつけた沢山のカップルが恥ずかしげもなくイチャイチャしてる。
愛を囁きあったりぃ?ずっと一緒だよなんて言ってみたりぃ?挙句の果てには堂々とき、き、きききききキスしてみたりぃ?!!
なんだよ!!お前らこんなイベント出るまでもなくイチャイチャしてんじゃねーかよっ!!って言うかこんなこと参加してる私が言える事じゃないけど、カップルでピンクの手錠つけてイチャイチャするとか字面的にやばいだろ・・・。
どんだけマニアックなプレi((
何でもないよ☆
そんなこと考えるわけないじゃないですか。このわたくしが?そんなこと考えませんよ、おほほほほほ。
「すみれちゃーん?どこに行っちゃったのかな〜?なんでそんな遠い目をしているのかな?戻ってこーい!!」
私は宮谷の呼びかけでゆっくりと意識を戻す。
「はっ、すみません。ちょっとぼーっとしてました。」
「うん、だろうね。目がね、どこか遠くにいってたよ」
「ちょっと思ったよりもカップルのイチャイチャの破壊力が・・・」
ちょっと前世も今世もいい出会いがなかった私には刺激が強すぎたようだ。
くっ、と目頭を抑えた。
そんな私を見た宮谷は妖しげにそして面白そうに笑った。
え、嫌な予感・・・
「じゃあ、俺とイチャイチャしよ?」
そう、囁かれた。
妖艶に、
どこか大人っぽく、
私は顔が思いっきり赤くなるのを感じた。
「宮谷様・・・。」
「ん?」
私がギロりと睨んでも宮谷は可愛らしく首を傾ける。
可愛くねーし?!!いや、別に可愛らしいなんて思ってねーし?!
高校生男子の首を傾ける動作の破壊力たけぇなんて思ってませんよ!!
女子力負けたなんて・・・思ってないよっ!!
ちくしょう!!
「すみれちゃん、今日目が遠くなること多くね?何?なんか悟りを開いたような目をするのやめて!なんで?なんで今のやりとりで悟りを開くとこあった??!!」
耳元でさっきとは打って変わって宮谷の慌てた声が聞こえるけど、私は気にしない。
もうね、諦めの境地・・・
なんて馬鹿なやりとりをあと5回くらい続けるとジェットコースターに乗る番が回ってきた。
「なんか、疲れました。」
「同感だよ。なんか全く甘い雰囲気にならないし・・・」
ボソリとすねたように呟かれた声が聞こえたけど甘い雰囲気になんてしてやんねーよっ!
「行きましょ!宮谷様!!ジェットコースターはスグそこですよっ!」
前世も今世もあまりこういう経験がなかった私は少しはしゃぎながらジェットコースターへと向かう。
「すみれちゃん、可愛いね〜。」
「そういうの、いいですからっ!早く!!」
「はいは〜い。」
結局、私たちは三十分弱喋り倒して、やっとジェットコースターへと乗れた。
「それでは皆様ぁ〜、セーフティーレバーをしっかりと音がするまでお下げくださぁい!安全確認へとまいりまーす!」
私はワクワクしながらジェットコースターの出発を待つ。
・・・たしかこのジェットコースターのゲームのイベントは個別ルートに入った攻略対象がヒロインは実はジェットコースターに苦手だということに気づいて謝るヒロインを優しく窘める好感度アップイベントだった気がする。
・・・パンフレットに書いてあるミッションは、えーと、なになに〜?こ、恋人繋ぎでぇ・・・?!ジェットコースターに乗り込んで・・・、怖さを共有してラブラブ度を上げちゃおう・・・?
・・・まじかよ。
私がガーンとショックを覚えていると丁度安全確認が終えた係のお姉さんが再び喋り始める。
「はーい、それではイベントに参加されている皆様はお手をぎゅっと握ってくださいね〜!最後まで手を繋げず、怖くて離してしまったらミッションは失敗になります!
それでは準備はよろしいですかぁ?」
係員のお姉さんの言葉に従って宮谷がノリノリで恋人繋ぎをしてきた。
「ちょっ・・・!」
「イベントだからね!」
そんなノリノリでやらなくてもいいだろっ!!
私が宮谷の手をモゴモゴして拒んでもやつの白くて細い手はスルリと隙間を縫って恋人繋ぎをしてきた。
くっ・・・、こいつ慣れてやがる。
「宮谷様・・・、凄い慣れてますね。」
さすがお色気担当・・・、とは言わずにそう呟くと宮谷は私の言葉をどうとったのか急に余裕の笑みを消して焦り始めた。
「え?慣れてるって、女の扱いに的な感じ?違うからね?!俺はあくまでも関係だけであってこういう所には来てな・・・って、別にそういう関係さえあればいいみたいな感じじゃなくて・・・」
何を焦ってるんだろう?別に宮谷がお色気担当で女の人とよくあの〜、ゴニョゴニョしてることは知ってるんだからそんなに焦んなくていいのに。
と思いながら胸がもやっとした気がして私はあれ?と首を傾げる。
「それでは皆様、発車いたしまーーす!!」
係員のお姉さんの言葉で宮谷は少し後悔した顔をしながらも前を向いた。
なんだかその表情がなぜだかは分からないけど可哀想と言うか、可愛いと思ってしまった私はジェットコースターが発車する音に紛れさせながらボソリと「別に気にしてませんけど」と呟いた。
その言葉に宮谷が少し嬉しそうに振り向いたのは気のせいだろう。
ガタンゴトンと音を立てて上へと向かうジェットコースターに乗りながら私は考える。
あれ?ジェットコースターってこんなに怖かったですっけ?
・・・・・・。
って言うか私、ジェットコースター乗るの今日が初めてやーーーーーーーーんん?!!!!
上に登れば登るほど恐怖が出てきた。
怖くてつい体が強ばる。
ぎゅっと宮谷と繋いだ手にも力がこもる。
と、その様子に気づいた宮谷がこっちを見て優しく微笑んだ。
「大丈夫。」
その言葉に少しの安心を覚えた途端・・・
「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
ジェットコースターが勢いよく落ちた。
無理無理!!怖い、怖い!!何この乗り物?!!人間が乗っていい乗り物ですか?!!ぎゃぁぁぁ!!!
死ぬぅぅぅぅ!!!
パニックになる私の横では案外余裕そうな宮谷が私の様子を面白そうに眺めていた。
「大丈夫?捕まった方が怖くないよ?」
と言われた私は恥も忘れて宮谷にしがみつく。
「こ、怖いぃ・・・!!」
ぎゅっと服ごとしがみついてしまうと宮谷は「やべぇ、」と呟いた。
「え?何がやばいんですかぁ・・・!きゃぁぁ!!!!」
悲鳴とともになんとか聞くと宮谷は「ちょっとね」と少し耳を赤くして答えた。
「俺、超役得じゃん」
宮谷がボソリと何かを呟いたけど私は恐怖に耐えるのに必死でそんなのを聞いてる余裕はなかった。
◇◆◇
「・・・終わった」
スピードを落としながら止まったジェットコースターの中で私はふぅ、と息をついた。手錠で繋がれた私の右手は恐怖のあまり、繋いだ当初より固く、強い力で恋人繋ぎのまま、左の手は宮谷の服をぎゅっと掴んでいるのでなんとも間抜けな体勢になっていた。
「やだ〜、ラブラブですね。お二人共!彼女さんは怖がりなんですね!」
宮谷のイケメンぶりに少し顔を赤く染めながら係員のお姉さんがミッション成功か確認のために近づいてきた。
「彼女、怖がりなんです」
苦笑する宮谷はいつもより大人に見えてなんだかん私は少しだけ、むくれた。
「ま、そこが可愛いんですけどね。」
だから私は知らなかった。
宮谷がそう言いながら心の底から微笑んだことを。
その一言を言ったことで係員のお姉さんが顔を真っ赤にさせながらよろけたことを。




