色々ありすぎっしょ
悪役令嬢なのにいじめフラグとかそんなのいらないんで、私、とりあえず逃げようと思います!!
「申し訳ありません、私今時間が無くて・・・、また今度の機会でよろしくて?」
「すぐに終わるわ。」
ふぬぅ・・・、敵に回り込まれた!!
えーと、えーと・・・、どうやって逃げよう・・・!!
「そう警戒しないでほしいんだけど。」
なみさんがそんなことを言うけど警戒しますって!!
明らかにこれ、「杉原様と仲良くしすぎなんじゃない?」みたいな警告じゃん!!!
「とって食いなんてしないから。落ち着きなさい。」
え?まって、このセリフ・・・
私はどう逃げようかとフル回転させていた脳みそを一回ストップさせる。
いや、でもそんな訳が無い・・・。偶然に決まってる。だって、あの人はもう・・・
「その様子だと気づいたの?」
「・・・え、」
「これ、あなたが私とあってすぐの頃、あんまりに警戒心むき出しでいるもんだからあなたにかけた言葉よ。」
「嘘・・・、だって」
「あなたが生まれ変わったのに私ができないわけないでしょ?」
そうして笑う彼女は、私にはもう、なみさんには見えなかった。
その笑い方、その喋り方・・・、全てがあの人を連想させる。
「梨奈、さん・・・?」
そんな事があるわけないとわかっているのに確かめられずにはいられない。震える声で私は問いかける。
「やっと気づいてくれた。」
その一言で一気に視界が滲む。目に薄い膜がはられて彼女の姿がぼやける。
「久しぶりだね、花梨。」
その名は私の前世の名前。
いつもあなたが優しく呼んでくれた名前。
もう二度と呼ばれることは無いと思っていた名前を呼ばれた私の涙腺は一気に壊れた。
自分でもわかるほど大粒の涙を流す。
私の様子に梨奈さんはびっくりしたようで大きく目を見開く。
「あなた、そんなにぼろぼろ泣くようキャラじゃないでしょ?」
人がぼろぼろ泣いてるのに、第一声がそれなんて・・・、本当に貴方らしいです。
いつもみたいに軽い憎まれ口を言おうとして出てきたのは小さな嗚咽。
何も言えないまま涙を流しているのがもどかしくて私は勢いよく恥もプライドも捨てて梨奈さんに抱きつく。
そんな下らないものは全部前世に置いてきた。
「逢いたかった・・・、逢いたかったです!!」
彼女の温もりを感じた私の口からそのセリフは驚くぐらい簡単に飛び出した。
「私もよ、花梨・・・」
そう言った梨奈さんの声が少し湿っていたような気がした。
◇◆◇
「ってことなのよ!まさか杉原も転生者だと思わなかったのよねー!しかも、私と同世代だしー」
「ていうか、よく乙女ゲームの世界だって気づきましたね」
「あなたが目をギンギンにさせてやってたゲームだったからね。あの姿、強烈すぎて嫌でも頭に染み付くのよ。」
「そ、そんなことは・・・」
あるんですよね。はい。否定出来ないのが悲しいです。
いま、梨奈さんもとい、なみさんが話していたのはどういう経緯で私が梨花だと分かったかという事。
なみさんによると、前世の記憶が戻ったのは小学生の時らしいけど、その時はここが乙女ゲームの世界だとも覚えてなかったし、私のことも含め、大事な事は思い出せなかったらしい。
ただ、前世の記憶はそういう記憶としてあるだけで特に気にしたことは無かったという。
それが、この高校に入って杉原と出会ってから全てを思い出したらしい。
乙女ゲームのこと、前世何をしていたか、そして、私の事。
その事を思い出してからは、なみさんはひたすら情報収集をしたらしい。
そしてなみさんは杉原の言動から杉原も転生者なのでは?と疑ってわざと取り巻きをしていたらしい。
で、私達がとうとう出会ったのがあのお出かけの日。
なみさんの中ではその時は「あ、悪役令嬢だ〜」としか思ってなかったらしいんだけど、私の性格と言動を見て私も転生者なのでは?って言うか花梨じゃね?!と怪しんで杉原に自分の事情をすべて打ち明けた所、杉原が私のことを説明して、なみさんは私が梨花だと確信したらしい。
「て言うか、よく分かりましたね〜。私一応誤魔化すの上手だと自負してるんですけど・・・」
私がポツリと呟くとなみさんははぁ、と呆れたようにため息をつく。
「だからよ。何年あなたと関わってると思ってんの?あなた、異常に誤魔化すのがうまいし、愛想笑いの雰囲気が花梨そのまんまだったのよ。」
「な、なるほど・・・」
「でも、何であなたそんなに感情を表に出すの上手になってんの?私がいないあいだに成長してて私、悲しいんだけど・・・」
少しだけ拗ねたようにでも嬉しそうになみさんが聞いてくる。
いや、あなたのおかげなんですけどね?
それを伝えたくて私は口を開く。
「私は、」
「すみれちゃん、大丈夫?!!」
と、そこに息を切らして必死の形相をした宮谷が。
「み、宮谷様?!何でここに・・・?」
「すみれちゃんが呼び出されたって聞いて。」
そう言って宮谷はちらりとなみさんを睨む。
宮谷、毎回思うんだけどさ、その目は一体どこで習ったの?まじでヤがつく自由業の方顔負けの睨みなんですけど・・・
っじゃなかった!誤解を解かないと!
「違うの、えっと、宮谷様が思ってることとは多分違うと思う。あの、この人、私の知り合いの方。」
「あ、そーだったの?すみません、睨んじゃって。」
ぺこりと宮谷が素直に頭を下げるなみさんが意味深にこちらを見て「ふ〜ん」と呟いた。
顔もニヤニヤ全開だ。
「そうか、そうか、この人が花梨、じゃなくてすみれのそういう人なの・・・、ふ〜ん。そーなの。あなたこういうのが好きなの。」
違う!この人絶対に盛大な間違いをしてると思う!!
「なみさん?違うからね?この人はなみさんが思ってるような人じゃないからね?」
「え〜、何〜?照れなくてもいいのに〜」
私が否定するとニマニマが増量された。
絶対この人信じてないよね、ねぇ!!
私がなんて説明しようか迷っているとしばらく何が起こったのかわからずに棒立ちだった宮谷が心得た!とでも言わんばかりににまぁ〜と表情筋をゆるんっゆるんっにさせる。
「こんにちは。俺、すみれちゃんの彼氏の宮谷 零斗って言います。すみれちゃんは俺が幸せにします!」
そう言って宮谷は私の腰に手を回す。
こ、こんちきしょー!!は〜な〜れ〜ろ〜っ!!
必死に腰にある手をどかそうとするけどうんともすんともしない。どけろ!!この手をどけろぉ!!!
と、唐突に腰に回されていた手の力がゆるんだ。
よしっ!!
私が一瞬の隙をついて抜け出すと宮谷は「仕方ないなぁ〜」と言いながら私の膝の裏に手を回す。
え?なに?
「よっ」という小さな声とともに私の体は浮遊感に襲われる。
「ぎゃあ!」
全く可愛くない叫び声をあげながら私は今の状況を理解しようと頭を働かせる。
えーと、えーと、今、宮谷が私の膝の裏に手を回して、で、私は宮谷の首に落ちないようにしがみついてて、何故かなみさんがやたらニヤニヤしてて・・・、ん?!
まって、これお姫様抱っこって言うやつ?!!
「宮谷様ぁ!!下ろしてくださいませ、こんな体制はしたないです!!」
「やだよ〜、すみれちゃんが腰に手を回されるよりもお姫様抱っこが良いっていたんだろう?」
言ってないわ!そんな事!!私の名誉にかけてそんなことは言ってないと誓える!!!
「やだ〜、お熱いわぁ〜、2人とも。私おじゃまかしら?」
なみさんは私が本気で焦ってるのをわかっててそんなことを言いながら退散していった。
ええええええ?!!!!まじで?!!あの人まじで私を置いていきやがった!
こんな体育館裏でお姫様抱っこなんていうカオスな状況で二人っきりにしないで!!!
なみさん絶対この状況楽しんでるでしょ?!!
なんてパニックの私に対して宮谷はこれでもかと言うほどの上機嫌。
おい、宮谷よ。何がそんなに嬉しいんだ、この野郎!
私のジメ〜っとした視線に気づいた宮谷がにっこぉ〜としただらしのない顔でこちらを向く。
な、なんだその緩みきった顔は?!!怖い!!いつもあんな笑みを浮かべてるから余計にその純粋な笑顔が怖い!!
「もうーーー、この4日間すみれちゃん不足で倒れそうだった。」
宮谷はそのまま私の首筋にスリスリと自分の頬を擦り付ける。
・・・は?
もう一度いうぞ、
・・・・・・は?
「えーと・・・?」
私の戸惑いも全くお構い無しに宮谷はスリスリと頬ずりを続ける。
「あ〜、すみれちゃんの匂いだ。すみれちゃんの感触だ〜。」
ちょ、なんか変態臭がするぞ、攻略対象よ!!
固まる私を気にせずになおも宮谷は頬ずりをやめない。
「約4日間、すみれちゃんと話せず、触れず、見れず。
もう禁断症状やばいわ〜、」
な、ななななななな!!!なんですと?!!
ちょっとこいつ誰だよ!!出会った頃の警戒心MAXの宮谷は?!どこいった?!あの頃の宮谷!!!
あまりの恥ずかしさに自分でもわかるくらい顔が真っ赤になる。
と、それに気づいた宮谷が頬ずりをやめてくすりと笑った。
ん?嫌な予感・・・!!
「すみれちゃん、可愛い・・・。たべちゃおうかな?」
少し掠れた声でフェロモンダダ漏れのまま宮谷が耳元で囁いた。
だからこいつはなんで毎回毎回卑猥に囁くんだ?!!
「み、宮谷様!」
私が少しお姫様抱っこのままの体制で暴れると宮谷は「おっと、危ないよ〜」とかなんとか言って私を抱える腕に力を込める。
ぎゃぁーーー!今ので密着度があがってしまったァ!!!
「ダメでしょ、暴れたら。危ないよ。」
近い!!耳に近い!!!!ていうかもう色々近いです!!
距離感とか、距離感とか、距離感とか、距離感とか、!!
顔がもうついちゃうって!何こいつ?!チャラ男、欲求不満なのか?!
「待って、その顔そそる。そんな顔する子には悪戯しちゃおうかな?」
はむっ、
「ひゃぁ!!」
み、みみみみみみみ!!!!!!
皆さん!!聞いてください!こいつ今耳噛みました!!私の耳を甘噛みしました!!変な声出たよぉーーー、泣いていい?もうこれ泣いていいよね?ていうかもう半泣きです!
通常のテンションを保てなくなった私に宮谷がぼそっと呟く。
「そう言えば、すみれちゃんこの前泣いてた時もすごい可愛かったよね・・・。」
え?なに?!いつの事?!!まって〜!昨日のことならもう今すぐ記憶から消去してほしい〜!!
「今の顔もすごいそそるし・・・、もしかして俺、誘われてる?」
さ、誘われてる??もう何いってんの?意味わかんない・・・!
とにかく私はこの状況から抜け出したくてぐっ、と目に力を入れる。
「宮谷様・・・、お、おろしてください。」
ちょっと震えたけど次はちゃんと声を出して伝えることが出来た。
「え、あ、あぁ。」
さっきまでの様子が嘘のように宮谷はあっさり私を下ろしてくれた。
「いや、すみれちゃん、無自覚なの?潤んだ瞳で上目遣いとかもうちょっと俺、危なかったわ・・・」
宮谷がボソボソと言ってるけど私には何も聞こえない。
「・・・地面の上に・・・立てた・・・!!」
そんなことより今の私は浮遊感がなくなり、自分の足で地面に立っているということの方が大事なのだ!!
ていうか正直もうテンション高くしないとやってけないくらいには恥ずかしい。
「あ〜、すみれちゃんーーー」
後ろから宮谷の声が聞こえて振り向くと視界が暗くなる。
「え?」
ちゅっ、
前髪が宮谷の手によってあげられておでこに柔らかい感触があった。
「4日間、心配したんだからこれくらいは許してよね」
そう言って宮谷は私が状況を理解出来てないうちに鼻歌を歌いながらどこか言ってしまった。
本当にまるで猫のようだ・・・。
ってそんなんじゃなくて!!!
い、いいいい今のってデコチューですか?!!!
じ、人生で初めてだったのにーーーーー?!!!(前世含む)
サブタイトルそのままの気持ちです。
本当は梨奈さん(なみさん)とすみれの再開をもっとちゃんと書こうと思ったのに・・・!!
変態(宮谷)が暴走して・・・!!
無念です・・・。
お読みいただきありがとうございました!w




