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暗めです

小学一年生。


本当の絶望を知った。




その日は私にとって何の変哲もないいつも通りの毎日の一部になるはずだった。

だから学校から帰ってきた私は家に両親がいなくてもどこかに買い物にでも出かけているのかな?と呑気にふたりの帰りを待っていた。もう二度と両親と会えないとは思わずに――――。


夜遅くになっても帰ってこなくて、なんとか冷蔵庫にあるものだけで夜をしのんで、朝になって学校に行って帰ってきても両親は戻っては来なかった。

3日後、私はやっと置き手紙があることに気づく。

小さなメモ紙には一言「ごめんね」とだけ書いてあった。


私は意味がわからず、でも両親が帰ってこないことが不安で泣きじゃくった。

その泣き声で私は近所の人に見つかり、施設に保護されることになった。


大きくなってから話を聞く限りでは私の家は営んでいた会社が破産寸前で一家で不幸な道をたどるよりはせめて私を施設に送ることが一番の道だと思ったのではないかというものだった。


そんな事を言われても、私は連れていって欲しかった・・・


施設に入ってから私はまず、人を信じることを諦めた。


小学一年生の私にとっては両親が一番信頼できる人だった。

両親以上に信頼していた人なんていなかった。

その両親に裏切られた私は、人は裏切るという固定概念が心の中に住みついた。

そして今度は捨てられないように、嫌われないよう、同じミスをおかさないように人をよく観察した。

その人が好むこと、行動、仕草、嫌われる事、全て観察して私が接する人全員に嫌われないように気をつけていた。


そして、裏切られても、もう絶望しないように仮面をかぶることにした。これなら裏切られても傷は浅い。

そう思っていたから。


成長とともにどんどん自我を無くして言った私だけど一つだけ譲れないものがあった。それは、『私は絶対に人を傷つけない』ということ。

これ以上私の様な生きる屍のようなやつが増えて欲しくなくて私は当事者に少しでもならないよう細心の注意を払った。


そうやって毎日を同じように過ごして頼れる人なんていなかった私にある日、新しい出会いがあった。


小学三年生の誕生日の日、施設に私に会いたい人がいると連絡が来た。

もしかして、両親が・・・


と期待を抱いた私は施設の門の前にいる活発そうな女性を見てガッカリすることになる。


それは顔のパーツは似ているような気はするが母ではなかったから。


その女性は私を見つけた瞬間、元々大きい瞳をさらに見開かせて私に勢いよく抱きついた。


後の自己紹介でその女性はお母さんのお姉さんで名前が梨奈だということを知る。

梨奈さんは今までずっと海外で暮らしていたらしく、母の蒸発を聞いて急いで日本へと帰ってきたらしい。

「気づいてあげられなくてごめんね・・・」

久しぶりのぬくもりに私はひどくびっくりしてしまった。

だからその時は「いえ・・・」とだけしか呟けなかった。



それからも梨奈さんは度々私のいる施設へと来るようになった。

でも私はその時、既に信じることを諦めていた。

だから何度も何度も養子にこない?と聞いてくれた梨奈さんの手を振り払い、差し伸べられた手を拒絶し、私は何度も私を信じようとしてくれていた、否、信じてくれていた梨奈さんを拒絶した。


私が拒絶すると、梨奈さんは一瞬だけいつもの男勝りな豪快な笑みを引っ込めて眉を下げる。私はそんな顔をさせたのが自分だと思うとひどく罪悪感が残っていつも真っ直ぐに梨奈さんを見ていられなかった。


そんな私達の微妙な関係は平行線のまま、私は高校生になり、社会人になる。

梨奈さんは未だに施設に通い続けてくれていた。

私は何度も梨奈さんの手をとろうとして、その度に一人で泣きじゃくった夜がフラッシュバックして手を伸ばすのを諦めた。

そして、そうする度に毎回梨奈さんにわざと傷つくような言葉を投げた。

もうこれ以上私の心に入ってきて欲しくなかった。


その頃、ちょうど施設を出て慣れない一人暮らしを始め、新しい職場でも表面だけを取り繕うのにも疲れて限界を感じていた。


そして、あの日が来る。


その日も梨奈さんは変わらず愛想笑いを浮かべるだけの私に諦めずに楽しい話をたくさんしてくれていた。わざわざ忙しいのに私の家に来てまで。

そして、梨奈さんは急に真剣な顔になって私に問いかけた。


「今、あなたは楽しい?」


「あなたが抱え込んでいるものを私にも背負わせて。」


その言葉で私は今の自分の惨めさを自覚した。

でもそれだけじゃなく、私にもう少し余裕があったのなら、私は梨奈さんのその時の優しげな声や心配するような表情に気づけただろう。


でも私はその言葉を素直に呑み込めなくて、梨奈さんにいつもより酷い精一杯の拒絶の言葉を吐いてしまった。



その時の傷ついた梨奈さんの顔を私は一生忘れないだろう。



そのまま梨奈さんを置いて家から逃げ出した私は時間が過ぎて冷静になってから気づいた。梨奈さんの声色や表情は私のことを嘲笑ったり、私の今の現状を憐れんでいるものではなくて心から心配してくれていたことに。


そして同時に走りざまに見た梨奈さんの傷ついた顔が頭から離れなくて私は涙が止まらなくなった。


そこでようやく私は梨奈さんの事をとっくのとうに信頼してしまっていたことに気づく。


どんなに私が酷い言葉を言っても、どんなに仕事が忙しくても無理して時間を作って私に逢いに来てくれた。


いつでもあなたを迎え入れられるんだよ〜なんて軽く笑ってずっと、あまりに長い年月を待っていてくれた。


一人暮らしを始めてからもちょくちょく料理を作りに来てくれた。


幼い頃から母親の代わりに溢れんばかりの愛情をくれた。



それなのに私は梨奈さんに1度も感謝を伝えていない。




そのことに気づいた私は今すぐ梨奈さんに謝らないとと思って左右をよく見ずにただ信号が青だというのだけを確認して走り出した。そして・・・



感謝の気持ちを伝えることは出来ないままに私は居眠り運転のトラックに轢かれた。






◇◆◇




桃ちゃんとの教室での一件から私は4日間学園を休んでいる。

病は気からとはよく言うけど、「学園、行きたくない・・・」なんてずっと考えていたら次の日、本当に高熱が出た。

けど、熱はもう下がってるから明日頃にはもう学園に行けちゃうんだよね・・・。


事情を聞いたであろうまーくんが何回もお見舞いに来てくれたらしいけど私は風邪がうつったら悪いからと直接はあっていない。


これも逃げなんだろうなぁ・・・。


私は泣き腫らした目でそんなことを思う。

この4日間、私は身体中の水分を全部出し切ったんじゃないかというくらいに泣き続けた。

今回の出来事で前世のことも思い出してしまった私は罪悪感でずっと泣いていた。


今思えば、宮谷に最初に出会った頃思わず口から出ていた「貴方、辛くない?」っていう言葉は、昔の私を見ているようだったからなんだろうな・・・



でも・・・結局、私は前世と同じことをしてる・・・。

また人を傷つけた・・・




もう、人と関わりたくない。

私と関わっても誰も幸せにはならない。



私はなんのために生きてるんだろう・・・



ズブズブと答えのない問いに呑み込まれてゆく。

どうして・・・、私は生まれ変わってしまったんだろう。

よりによって記憶を持ったままで・・・。

どうして、どうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうして・・・!!!!!!


ピンポーーーン


唐突に呼び鈴の音が響いた。急いで涙をふく。

今、お手伝いさんは買い物、両親はそれぞれの仕事に行っていて家には私以外の人はいない。


仕方なく私は泣き腫らした目が見えないように下を向いたままパジャマの上にカーディガンを羽織ってドアを開けた。


「はい・・・」

「すみれちゃん?」

聞きなれた声に私は急いで開けかけた扉を閉じようとする。

ガッ、


でも相手の方が反応スピードが早くて私は逃げられなくなった。

「はいるよ?」

「・・・はい。どうぞ。」

私は逃げるのを諦めて大人しく、宮谷を家の中へと入れた。



電気もついていない、カーテンも閉じたままの私の部屋に宮谷を招き入れた後で私は急いで仮面をかぶる。

「お見苦しい姿を見せてしまい申し訳ありません。今カーテン開けますね。」

そう言って私は急いでカーテンを開けて陰気臭い部屋の空気を入れ替えるために少し窓を開ける。


「すみれちゃん・・・」

「なんでしょう?」

私は愛想笑いを浮かべたまま宮谷に返事をする。

「みんな、待ってるよ。誠くんも、俺も、・・・桃ちゃんも」

桃ちゃん、という単語にビクリと体が反応してしまう。


「嫌ですね、それじゃあ私が仮病みたいじゃないですか。私は別に本当に熱が出てしまっていただけですよ。そんな私が一生学園に来ないみたいな言い方」

「なら、どうしてそんなに辛そうな顔をしてるの?」

「なんのことですか?」

「すみれちゃん、今君は笑えてないよ。目も真っ赤だ。」

笑えてない?そんはずはない。だって私はいつだって本当の気持ちを隠せるように完璧に笑えるように・・・


「すみれちゃん、学園に戻ってきてよ。」

「・・・」

「すみれちゃん・・・」

宮谷の切ない声に私は心臓にギュッと掴まれたような痛みが走る。


「私は、人とは関わらない方が良かったのです。私が欲を持ってしまったから、またこうして生まれてしまったから。」

「何を・・・言ってるの?」

宮谷の声が少し怒りを含んだ気がする。でも私の口は止まらない。


「私はもう二度と生きることを望んではいけなかったんです!!本当に大切にしなければいけない人を一番傷つけてしまった!!!私はこの世界に生まれてきてしまったことが間違いだったんです!」

「俺を変えた君に!生まれてきたことが間違いだったなんて言わせない!!!」

私の叫びに被せるようにして宮谷の怒声が聞こえた。それと共に強く宮谷に私の腕を掴まれる。

私は顔を上げて宮谷を見る。


私は今日、初めて宮谷が真顔でこんなにも感情を出して怒っているのを見た。

「君が何を抱えているのか俺には知るすべはないし、君をどうやったら救えるのかもわからない。でも、君にだけは、生きてることが間違いだなんて絶対言わせない。」

真面目な声が、少しいつもよりつり上がった目が、梨奈さんの面影と被って私は涙をこらえきれずに泣いてしまう。

「・・・ふっ、う、うぅ・・・」

嗚咽を堪えても結局こらえきれずに最後には声を抑えることなく宮谷に抱きしめられながら大泣きしてしまった。


傷つくのが怖かった。

今も傷つくのは怖い。


でも今の関係を私は壊したくないから、そう思えるほどに私は今の居場所が好きだから、少し向き合ってみようと思う。

少しずつでも。



「皆、待ってるからね。」



抱きしめられたままの状態で頭上から優しい声が聞こえた。

すみれはただ臆病なだけの子です。

裏切られるのが怖くて、向き合えないそんな臆病な女の子です。


誰の心にもあるそんな気持ちを書きたかったんですけど・・・(伝われ)


お読みいただきありがとうございました!!

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