信じていた
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最近、宮谷の様子がおかしい。
いや、元々おかしな奴ではあったんだけど、最近ますますおかしい。
何がおかしいのかと言うとやたら私を口説くようになった。こんな言い方すると私が自意識過剰みたいな感じになるけど違うかんね?!
前までそんなこと無かったのに最近は「好きだよ」とか「愛してるよ〜」とか「可愛い」とかめっちゃ言うようになった。最初は照れてしまって「嘘つくなんて最低ー!!」って言いながら顔を赤くしてしまうなんて乙女みたいな反応をしてたんだけど今は「あ〜、はいはい。嘘つくなんて最低な事よ」なんて流してます。
いや酷いと思うことなかれ!!
あの男すごいペースで口説いてくるし、最初に嘘つくなんて最低発言をした時も「あははー、だよねー、」ってヘラヘラと笑ってたし!!!いちいち相手にする方がダメよ!!
「すみれちゃん、好きだよ」
「はいはい。最低ー」
「もう〜、酷いなぁ」
と、噂をすれば曲がり角からやつが顔を覗かせた。
私は一瞬ぎょっとしたもののすぐにいつも通りの反応を返した。
ちょっと、今そこ通った人〜!ぎょっとした顔しないでぇー!これいつもの事なんですぅーーーー!私が悪女っぽくなっちゃってますけどいつもの事なんですぅーーーー!
だからこいつのせいでクラスのみんなは私と宮谷が付き合ってると思ってる。付き合ってねぇから!!大体こいつ絶対セ〇レとかいるって!!!あ、失礼。口が滑りましたわ、おほほ。
と、あと一つ言い忘れてたことがあった。
「すみれちゃ〜ん。」
杉原が私のことを見つけて手を振って近づいてくる。
あ、これは何か用事か。
私と杉原はあのお出かけのあと、なんだかんだで協力関係になった。色々と同じ世界に生きていた人の方が心強いし、この(精神年齢)おっさん、宮谷ルートの事ちょっと知ってたから役に立った。
宮谷ルートをざっくり説明すると、ヒロインと会うまでの宮谷は誰か女の子をターゲットにして何日でその女の子をおとせるかを友達とかけていたらしい。本当に最低な遊びだと思うけどヒロインと会ってからの宮谷はそういう遊びを一切やめて心を入れ替えるために今まで捨てた女の子達に謝りに行く、という内容らしい。
まぁ、ざっくり過ぎてあんまり参考になんなかったんですけどね。
話の大筋が分かったから桃ちゃんがどういう優しさを見せた時がいちばん宮谷が恋に落ちやすいのかは注意して見てる。
因みに桃ちゃんとまーくんの事なんだけどだいぶ仲が縮まったみたいでこの前、初デートしたらしい!!
や〜、嬉しい限りよ。私の精神年齢30代だし、なんか息子達の成長を見届ける的なね?元々、まーくんは弟って感じですごい可愛らしかったから。
まーくんと宮谷、杉原以外の攻略対象はちょっと視察に行ったらなんかあんまり桃ちゃんと関わりなかったから放置してる。
って言うのも私の予想では多分まーくんの独占欲が思ったより強いからだと思う。
しかもその独占欲も本人にはバレないようになの!!
さり気なく周りに恋人のように見せたり、言葉遣いをほかの人と変えてみたり・・・。
だから桃ちゃんは知らないと思うけどこの学園の殆どの人はあのふたりが付き合っていると思ってる。
桃ちゃんもあんな感じの女子だから私の想像するよりも遥かに平和に学園生活を送れてるみたい。ていうかイジメとかなんてまーくんが絶対にさせないと思う。
さてと、ここまで説明したらそろそろ杉原の相手をしてあげなくちゃ。
杉原と協力関係になった時にただの会話と相談の区別をつけるために決めたことがある。
私が杉原に相談する時は杉原様、と読んでからお辞儀。
杉原が私に相談する時は名前を呼びながら手を振る。
今回は杉原が私の名前を呼びながら手を振ってこちらに近づいてきているからきっと何か相談事かな?
「ごきげんよう、杉原様。」
「すみれちゃん、この前の事なんだけどさ〜」
話しながら少しずつ宮谷と自然に離れていく。
「宮谷様、少し失礼致しますね。ごきげんよう。」
「うん、バイバイすみれちゃん」
宮谷が手を振ってきたので私もお辞儀をして杉原と話を再開する。
「ちょ、空き教室で話がある。」
「了解しました〜」
その会話だけして私は黙って杉原のあとをついていく。
空き教室に入ると杉原の顔が可愛らしいものから急に大人っぽくなる。恐るべし、杉原。
「して、相談事とは?」
「あーーーーー、怖かったぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
「・・・は?」
空き教室に入って急に発狂しだす杉原にビックリする。
えーと・・・?何これ?どういう状況よ。
「いや、実はさ、最近すごい殺意のこもった視線を感じるわけ!!」
「はあ」
「で、怖くて誰だよって思ったら一定の期間だけその殺意が増幅する時があるわけよ。」
「一定の期間、って何ですか?」
私の問いかけに杉原が情けなく下がっていた眉をキリリっ、と上げる。
「お前と喋ってる時だよ、北条!!」
「はい?」
私と喋っている時に殺意が増幅する?え、なんで?
「えーと、どういうことでしょう?」
「はぁ?!まだ気づかないわけ?!!そんな恐ろしいやつ一人しかいねぇじゃん!宮谷だよ!宮谷!!」
「え?なぜ宮谷様なんです?」
「・・・・・・・・・まじかよ。」
「え?」
「・・・」
「え、なんで急にだんまり?!!」
「ちょっと気の毒になってさ・・・」
「ど、どうして?!」
「・・・」
「また無視?!!!」
だって分かんないんだもん!!なんで??私が杉原と喋るとなんで宮谷が殺意を向けるの??!マジで意味不明です!!!!
意味のわからない答えに私がうんうん唸っていると杉原が「はぁ、もうこの話は終わりにしよう。なんか悲しい。いろんな意味で。」って呆れた声で言ってきた。
ちょっとムカつくんですけど、こいつ。
「まぁ、取り敢えず打開策としては俺はお前にこれからは必要以上に話しかけないからお前も俺に必要以上に話しかけんなよ。」
「え、何でですか?!!嫌ですよ!転生者同士はなし合うんですもん!!寂しいじゃないですか!」
「俺の寿命が縮むのとお前の心の平穏どっちが大事なんだ!!!」
「私の心の平穏に決まってるじゃないですか!」
「おぉ、表出ろや、お前!!」
っと言うのは冗談で。そうか、そこまでその殺意はHPを削ってくるんだね。それなら仕方ないか。
「分かりましたよ。相談事以外はなるべく話しかけないようにします・・・」
「おお、分かってくれたか!よかったよかった。」
杉原葉そのまま満足そうに頷いて「まぁ、せいぜい捕まらないように頑張るんだな、鈍感娘」なんて失礼な言葉を言うだけ言って空き教室から出ていきやがった。
誰が鈍感じゃ!!
私もでるか・・・。
ガラガラ、と空き教室のドアを開ければ廊下の少し澄んだ空気が肺に入ってきた。
今は放課後、周りに人はいない。静まり返った廊下でそろそろ帰る準備をしないと、と考えていると教室から微かな声が聞こえた。
「桃ちゃんって本当に可愛いよね〜」
「ほんと、ほんと。私も最初は誠様の恋人って聞いてビックリしちゃったー。」
「こ、恋人?!そ、そんな滅相もない・・・」
「えー、結構噂になってるよ〜」
聞こえてきた声は3つ。
1人は桃ちゃんの声。あと2人の声は聞いたことのない女子の声なので多分違うクラスの女子かな。
「それにしてもさ・・・、」
そこでひとりの女子の声が低く、小さいものに変わる。
「北条 すみれって、邪魔じゃない?」
どきん、と心臓が大きく飛び跳ねる。
「それ!!いつも思ってたの私!桃ちゃん、一緒にいるのよく見るけど本当のこと言うと怖いでしょ」
「そう、そう、正直いつも誠様にまとわりついてて誠様が可哀想だっつーの。」
「てかあの人仲いい人なんていなくね?」
聞いちゃダメだと分かってるのに耳はうるさいくらいに音を捉える。
彼女達の嫌な笑い声や、私への悪口が聞こえてくる。
桃ちゃんの声は、しなかった。
肯定をしないかわりに、否定もしなかった。
否定、してくれないんだね。桃ちゃん。
心のどこかで期待していたから私の足はこの場から逃げなかったのだろう。どこかで否定してくれる、なんて欲深いことを思っていた。
そんな事、あるはずないのに。
「すみれちゃん?」
突然聞こえた声に私は驚いて振り返る。
その時、目に溜まっていた涙が少し零れてしまった。
あぁ、この男に涙を見せるなんて情けない。
そこに立っていたのは宮谷だった。
宮谷の声で教室にいた桃ちゃん達が私の存在に気づく。
女子の2人は顔を青ざめさせた。桃ちゃんの顔は怖くて見れない。
「す、すみれ様!!」
怖くて下を向いていると桃ちゃんが私の手をつかもうと手を伸ばす。
「触らないでっ!」
本当は大丈夫、気にしてないからって前世みたいに笑わなきゃいけないのに。本当は聞いてないふりしなきゃダメなのに。
信じていた人に裏切られるというのが久しぶりのことすぎて。
絶望というのを久しく感じていなかったから、
私はその手を振り払ってしまった。
私の反応に桃ちゃんの傷ついた顔が見えた。
やめて、そんな顔しないで。また勘違いしてしまうから。
そしてそんな醜い感情とともにまたやってしまったという考えが浮かぶ。
「え、酷・・・」
「それは流石に、ねぇ」
後ろでは私の傷ついた様を見て自分たちの立場も忘れて調子に乗った女子ふたりがそう呟いた。
「私は!!」
それ以上私の心に土足で入ってこないで!!!
「誰のことも信用しないし!!」
私の心をこれ以上傷つけないで!!
「これからも信用なんてしない!!」
・・・私を一人にしないで、裏切らないで
それ以上耐えられなくなって私は走り出す。
だから、嫌だった。だから嫌だったんだ!!
人は必ず裏切るから!だから、だから嫌だったんだ・・・。
少しでもあの居場所を心地いいと思ってしまった自分が嫌だ。
人を信じてもいいことなんて無い・・・。
私は行先も決まらないままそんな子供みたいなことを思って走った。
次回、真面目回です。




