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これ詰んだやつやん

お読みいただきありがとうございます!

舞い上がる桜吹雪、入学式での出会い、見つめ合う美男美女。そしてフラッシュバックするスチル。


唐突に蘇った記憶に私、北条すみれは「これ詰んだやつやん。オワタw」と薄れゆく意識の中で自分の運命を悟った。



◇◆◇


私の通う高校、蘭聖学園は学園の生徒の約8割が金持ちの坊ちゃんや令嬢ばかりだ。

そしてそこに通う私、北条すみれも例外なく金持ちの令嬢なのだが、レベル的には私の家はこの学園でもダントツ。

我が家は日本有数の大企業、北条グループ、そして私はそんな会社の社長令嬢だ。


そんな会社の社長令嬢たる者、常にプライドと目標は高く、自他ともに厳しく接し、自信を持って背筋を伸ばして恥のないように生活するのが当然・・・












な〜んて、今までの私何時代を生きてたんだよ。


ただいま、社長令嬢(笑)の私、北条すみれは保健室のベッドの上で頭を抱えて猛反省していた。

何をって?今までの人生全てをだよ!

今世はもちろん、前世まで後悔中ですよ!ウルトラ猛反省中ですよ!



なんで、なんでこうなった?!ていうか、この世界、前世の私がやってた乙女ゲームの世界じゃねーーかよ!!!!!聞いてねーぞ、コンチキショー!!!!


あまりの現状に本日2回目の気絶をしそうになった私は保健室のドアが開く音で何とか気を失わずにすんだ。

「すーちゃん、体調はどう?」

入ってきたのはこの世のものとは思えないほどの神々しさを放つ青年、

私の幼なじみの龍宮寺 誠だ。

タイミングがタイミングだけに本人を前に悪いとは思うが顔がひきつる。

「だ、大丈夫だよ。まーくん。」

「そう?まだ顔色悪い気がするけど・・・、荷物とってくるわ(・)ね(・)」

「うん、ありがとう」

まーくんが保健室から出ていくのを確認して私はふーっと息をついた。


あれほどの美青年だもの。確かに攻略対象って言われても違和感ないわ〜・・・。

どうやら倒れた私を保健室に運んできてくれたのもまーくんみたいだし・・・。きっとお姫様抱っこしてきてくれたんだろうな。

まーくん、そういうこと恥ずかしげもなくやるから。


やっぱりこの世界、乙女ゲームの世界だ。

でも・・・、そうだとしたらおかしい。


確信した私は意識を失う前に思い出した膨大な記憶を混乱しながらも整理しようと目を閉じた。



◇◆◇


前世の私はとにかく孤独だった。

正確に言えば友達もそれなりにいたし、職場でも特にトラブルもなく平凡に過ごしていた。でも思えば私はいつだって仮面をかぶっていた。

幼い頃、両親が蒸発して施設で育てられた私は今度は絶対に嫌われないように、一人ぼっちにならないように本当の自分を偽って過ごすようになる。そんな私に相談できるほど仲がいい人がいる訳もなく、薄っぺらい作り笑いを浮かべて周りに同意して、そして最後は居眠り運転で突っ込んできた車にあっけなく轢かれた。


そんな私が生前のめり込んだのが乙女ゲーム。

家に帰ってゲーム機を起動させれば優しいイケメンたちがこんな私にも優しく接してくれる。

ゲームの中の私は必要とされている。

元々根暗な上に色々なことを我慢していた私は乙女ゲームをストレスのはけ口としていた。


とまぁ、ここまでを思い出した『今世の』私は恥ずかしさでひとり顔を真っ赤にさせていた。


私、客観的に見たら超暗いじゃん!!

いや、普通に見ても根暗か!

ていうか、乙女ゲームがストレスのはけ口とか恥ずかしすぎるんですけど・・・。そこは癒される目的で使おうよ。

前世の私、そんなギンギンに血走った怖い目でイケメン見ないでほしいわ。犯罪者臭がしてくるレベルだわ!


とまぁ、この段階までだったら私もここまで絶望しなかった。

せいぜい、自分の黒歴史で悶えるくらいだった。

でも私は前世の記憶とともに前世でやっていたゲームの内容までしっかりと思い出してしまった。

そして自分の役割も・・・



私がやっていたゲームの名前は『トリックスター』

現代系乙女ゲームで、ストーリーは王道もののシンデレラストーリー。

物語は小中高とエスカレーター式のこの蘭聖学園に特別枠の外部生として全くの庶民のヒロインが入学するところから始まる。

ヒロインは、お金持ちがほとんどのこの学園で価値観の違いですれ違ったり対立したりしながらも持ち前の負けん気で学校を改革しながら突き進むというものだ。

そしてこのゲームには攻略対象を攻略するにあたって必ず超えなければいけない壁がある。


そう。それが悪役令嬢。

この乙ゲーの悪役令嬢の名前は、みなさん、もうお気づきでしょう?

私が転生したのはこのゲームの悪役令嬢、「北条すみれ」だったのだ!!!







・・・・・・。

・・・・・・・・・。

だったのだ!!!と言ったものの・・・なぁ。

確かにこの世界は乙女ゲームの世界に間違いはない。でも私はやっぱり違和感を覚えずにはいられない。


だって・・・、だって・・・・・・!


「す〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っちゃぁぁぁぁぁぁぁぁんんんん!!!!!!!」

バンっ!!という扉を開ける音と共に入ってきたのは私の荷物を取りに行ってくれていたまーくんだ。

「ど、どうしたの、そんなに慌てて」

「今朝の子よ〜!ほら私が可愛いって言ってた子!さっき廊下で目が合っちゃったわぁーーー!!」

「あ、あぁ。も、桃井 雛さんだったけ?」

桃井 雛というのはヒロインの名前。

フワフワとした茶色のボブにぷりっ、とした唇。そして大きなぱっちり二重。

確かに幼なじみは乙ゲー通り入学式、桜の木の下でヒロインと出会い、一目惚れらしきものをしたらしい。

それでも・・・!


ゲームの中のまーくんはオネェ言葉を話すようなキャラじゃなかったーーーーーーー!!!!!!!



それが私がこの世界が乙女ゲームの世界だと完璧に思えない理由だった。


「お、落ち着いて、まーくん。廊下に声聞こえちゃうから。」

「あら、それは困るわね。ん〜、でも可愛かったわぁ・・・」

そう言ってうっとりするまーくんの顔はなんとも言えぬ美しさ。

口を開くと残念なんだけどね・・・。


私が知るゲームのなかの龍宮時 誠は完璧主義で曲がったことが大嫌いな硬派な男子だった。

前世ではたまに見せる甘えっぷりに悶える女子が多数いて人気投票もNO.1だったと思う。まぁ、メインヒーローだしね。


まぁ、取り敢えず言えることはいまのまーくんとはまるで違うってこと。

あ、でも皆の前に出る時はゲームみたいな雰囲気だな・・・。

まーくんがこうなるのは親しい人の前だけだし・・・。

んーーーよくわからん!!


なんにせよ、このゲームで絶対に回避しないといけないのはバッドエンドだ。

なんてったってこのゲーム、どのルートに入っても私の邪魔が入る。きゃあ、働き者だね、私☆


特にバッドエンドはファンからもかなりの反響があった。

実はこのゲーム、バッドエンドは全て私の死亡ルートなんです!

はい!ちょっとここで一言言わせてください。


っふざけんなぁ!!!!

確かにさぁ、結構ゲームの中の私ヒロインにひどいことしたよ?私もハッピーエンドで「はっ、ざまあwww」とか超ゲス顔で退学処分になった北条すみれのこと見てたよ??でもさ!なぜ全てのルートで死亡?!!


ふぅ・・・、失礼。

バッドエンドについて詳しく説明すると、正確には2パターンのバッドエンドがある。

まず一つ目は終盤に来て選択肢を何回か間違えると攻略対象がヤンデレ化し、ヒロインを傷つけた私を殺害、その後ヒロイン監禁エンドというもの。なかなか狂ったスチルで結構怖かった・・・。


二つ目は好感度があまり上がらないまま終盤をむかえると、ヒロインと北条すみれのイベントが発生してそこでヒロインが北条すみれを殺害。ヒロインは学園から逃亡エンド。


そう。私、詰んでるのです。

死亡ルートしか見いだせねぇ!

ただ、一筋の希望として、ハッピーエンドは私は家から離縁され、退学処分されるだけですむ。



となったらもうやることは決まってる!!

私、幼なじみの恋を成就させてハッピーエンドに導きます!!




一応、前世普通の会社員やってたしいつ離縁されても働けるようにしとかないとね。

あ、あとヒロインはぜぇったいに虐めません!












それに、どうせ離縁されて退学処分なら今世くらいは仮面を被らずにありのままで好きに生きたいな・・・。

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