【第零話】出会ったのが運のツキ?
何もかもが見たことの無い景色。駅を降り、憧れていた都会に目を輝かせ、引越し先のマンションへ向かってスキップで駆け出した。賑わうお店や人々によって気分は高まり、駆け出した勢いで危うく人に当たるところだった。
空気は美味しくない。木々が生えてて、小鳥が楽しげに飛んでいるわけでもない。田んぼや畑はさっぱり見られない。だが、この賑わいと、欲しい物はすぐに揃えられそうな都会で、新しい生活を始めようと意気込んでいた。
新しい住処は、駅から十数分離れた大きなマンションの一室。何一つ不自由の無い、古臭い感じも無く、立地も日当たりも充分で、内装も全て新品で良いマンションだ。しかし家賃は他の部屋の半分にも満たない。
どうして他の部屋の半分未満の家賃で生活する事ができるのか。それは、この家が「事故物件」であるからだ。当初、この部屋を選んだ時は親に非常に反対された。しかし親にはなるべくお金をかけさせまいと自分の意見を押し通した。
家具は既に配置されていて、これが全て自分の物だと思うと、気分を高めずにはいられない。小走りでソファに飛び込み、仰向けになって天井をボーッと眺めた。
気が付くと、既に空は赤くなっていた。ソファで仰向けになっていたせいか、無意識に睡眠を取ってしまっていた。数時間に渡る電車の乗車や乗り換えで完全に疲れていたためだったのか、長く寝すぎてしまったようだ。
仰向けのまま背伸びをし、「さて」と言いながら上体を起こそうとした。その時突然、
「うらめしやーっ!!お茶目な幽霊、優香ちゃんが襲いに来たぞーっ!」
と、見た事も、聞いた事も、家に上げた事も無い少女が上から見下ろす形で驚かしてきた。




