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話の区切り上、短いです。
そして次の日、拓巳くんは先生から本を借りてきてくれた。
「あの司書の先生、面白い人だな」
「三積先生?そうね、楽しい人ではあるね」
何故か封をしてある袋を拓巳くんは私に渡す。
「何で封してあるの?」
「なんか先生が入れてたぞ。たぶん手紙じゃないか?返事書くって言ってたし」
あけると、新刊の本と一通の手紙が入っていた。本の裏表紙をめくって貸し出しカードを見る。まっさらな貸し出しカード。
私が先生に、まだ誰も借りていない新刊を貸して欲しいということ、そしてその後この本を渡辺幸成に貸して欲しいことを手紙で伝えていた。
「なつみは渡辺先輩知ってるか?」
「え、う、うん。名前は聞いたことあるけど・・・」
拓巳くんは私の気持ちを知らないはず。知ってるような口ぶりじゃないし。偶然って怖いなあ。
「部活の先輩なんだけど、先輩本を読む人だって今日知ったんだ。なつみが読むような本を読むらしい」
「へえ、部活して本を読んで、忙しい人ね」
知らないふりするのって結構大変。
「途中まで一緒に帰ったんだ。そのときにいつ本読んでんのか気になって聞いたら、夜読んで授業中寝てるらしい」
やっぱり拓巳くんも気になったんだ。笑いがこみ上げる。
「授業中に寝るんじゃ学校来る意味ないじゃない」
「そりゃそうだよなあ。でも、渡辺先輩頭いいんだぜ。すげえよなあ」
二人して笑う。拓巳くんは私の気持ちを知らないけれど。偶然であれ、渡辺先輩の話をしてくれた。すごくうれしくて、すごく感謝したい気持ちになった。
拓巳くんが帰ってから、先生の手紙を読む。先生は私の思い出作りに一役買ってくれたらしい。協力してくれる人がいるってとてもすばらしいことだと思った。
少しうれしくてないた・・・。
手紙を書こう。最初で最後の渡辺幸成への手紙を。
そして、高田なつみは卒業式を待たずにこの世を去る。