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とある少年達の日常  作者: 蝶佐崎
第一章:4月
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第7話


 朝。学校にて。


「しょおおおおおおおおおおおおおうううううううううううううううううううう!!」


 ドドドドドドドドド…………と亮がいつものように突進してくる。笑顔をキラキラとあたりに撒きつつ。

 怖いので、いつものようにとりあえず避けた。

 べしゃ、と床にスライディングした亮はさっと起き上がり、俺に飛びつこうとする。ので、これもいつものように拳で吹き飛ばして撃退した。


「………………………………」


 淳がドン引きしている。うん、すると思うよ。

 それにまっったく気付かない亮は頬を赤く腫らせながら嬉しそうに俺に挨拶した。


「おはよう、彰!」

「おはよう」

「淳もおはよう!」


 亮が淳に飛びつく。淳はそれを受け止めてから、亮にささやいた。


「おはよう。…………亮、もしかしていつもさっきのアレやってんの?」


 淳サン、丸々しっかり聞こえてますよ。


「あったり前だろ!」

「…………殴られるって解ってて何でやるのか分かんないんだけど」

「いやぁ……………………」


 亮がデレデレと鼻の下を伸ばして返した答えに、脱走したくなった。頬に手あてて溜め息つくなよ。


「アレやらないと、一日が始まらないって言うか……」

「イヤイヤイヤ止めてよお願いだから」


 思わず突っ込んでいると、ガラリと教室の扉が開いて晶子が駆け込んでくる。


「あたし今日日直よね!?」

「うん」


 鞄を下ろし、筆記用具だけ持って、また駆け出して行った。それを、眠たそうな暁が眺めながら教室に踏み込む。


「忙しそうですねー……。ああ、淳、空野先生がお前の事を探していましたよ」

「ありがとう。じゃー行ってきます」


 淳が鞄を肩に引っ掛けて出ていく。

 教室にはまだ大して人は着ていない。

 そういえば、学校の説明をしていなかった。

 俺達が通う逢坂(おうさか)大学中等学校は、まあ名前を読む通り、中学六年まである。実質中学三年からエスカレーター式で高校に上がれる感じだ。

 更に国立で、結構昔からあるらしい。なので学費が少なく、かなり助かっている。

 校風のようなものは、「人との出会いを大切に」らしい。そのせいか、年に一回、確実に他の国立高校との交流がある。留学生を多く受け入れてもいるしね。

 ま、大体こんな感じの学校だ。部活や学校の体制は面倒なので後に回した。


「なーにブツブツ言ってんだ? まだ眠いか? 眠いんなら膝枕してやろうか!?」

「いらない。むしろ邪魔」


 亮は朝、寝ぼけているのか、いつもこのおかしなテンションで登校してくる。そして俺に飛びつく。避けなかったり撃退しなかったりすると、亮はワキワキと指を変に動かして俺の服を脱がそうとするので、拳で撃退することにしていた。


「亮はやっぱり変態ですねー。…………彰に一生を捧げると吠えたあの瞬間から変態なんでしょうね」


 のんびり言った暁。………………って。


「暁!? そんなの聞いたことないよ!? 捧げるってナニ!?」

「あれ、知りません? 面倒だから本人に聞いてください」


 言われて亮を探すと。

 亮は顔を真っ赤にして、クラスのロッカーの隙間に潜り込んでいた。


「…………………………亮?」


「恥ずかしいんだよ…………ああ、あの頃の俺が羨ましい…………」

「ごめん聞きたくなくなってきた」

「彰? 少しいいかい」


 呼ばれて、教室の扉を振り返る。


「詩呂?」

「やぁ」


 俺を呼び軽く手を上げた彼女は上条詩呂(かみじょうしろ)

 染めた金色の長髪に、生れつき青い瞳。すらりとした体躯(たいく)。遠くから見ればお嬢様に見えなくもない。実際お嬢様だし。

 ちなみに詩呂は、俺達と同じ部活に入っている。


「どうしたの?」

「暁や亮でもいいが、日本史の教科書を忘れてしまった。貸してくれないか?」

「何限目?」

「一限目。準備のため既に来ておられた空野先生に教科書を忘れたと白状したら、拳をいただいた。さらにお前達に教科書を借りに行けと蹴り出された」

「貸しますよ。二限目に僕達のところが日本史ですから、授業終わったら返しに来てくださいね」

「承知した」


 暁に教科書を借りた詩呂はそれで、と淳が出ていった方向を見つめる。


「先程の子は? 空野先生に会いにきていたが」

「転校生。淳って言うんだ」

「また守る女子(おなご)が増えたか。望むところだ」


 ちなみに、詩呂は騎士とでも言うのか…………男ならフェミニストだ。「女子は守るもの」と豪語していて、お姉様、女番長、姐御など、あだ名は尽きない。守るものと言うだけあって、喧嘩もなかなか強い。昔グレていたからね。


「でも、淳は喧嘩強そうだよ」

「そうなのか? …………まぁいい。ありがとう、また返上にくる」


 泰然と詩呂は出ていった。

 ちょっと古風な口調は彼女がおじいちゃん子だかららしい。詩呂の家の執事さんに聞いた。

 淳が戻ってくる。後ろから空野先生もついてきた。


「お前達、席につけー」


 息を切らした晶子が日誌を抱えて戻ってくる。


「朝の会、始めます。起立!」


 連絡を終えて、淳は無事自己紹介を終えた。



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