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第6.5話
どべしゃ、と黒服の男が床に転がった。それを見た仲間の黒服は一層彼に怯えた。
「ナ、ナァアンタ。オレ達ノ仲間ニナラナイカ?」
「そんなものに興味はない。それより」
彼はぼろぼろになった布を見せる。
「この布の柄の着物を着た女…………雛菊、という女を見なかったか」
ここは、何処だ。
あいつは何処に居る。
何故、体が動かない。
何故、側に俺の身体がある。
何故、俺の身体が勝手に動き出す。
行くな、俺の身体!
悪夢に俺は思わず飛び起きた。
夢なのに生々しかった。荒い息を整えて下に降りると、父さんが久々に帰っていた。
「彰! 早いな、今から弁当を作るのか?」
「うん」
「父さんも手伝っていいかな?」
俺の了承に、父さんは腕をまくった。