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とある少年達の日常  作者: 蝶佐崎
第一章:4月
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第21話

 二日前の、夜中。父さんと優子はもう二階に上がって眠っていたとき。

 窓をしめようとしていた俺は、外から聞こえる声に、少しだけ、聞き耳をたててしまったんだよね。

 間の悪いことに。

 

 それで「塔」だの「結界」だのって言葉が聞こえてね。


「まあ、魔がさした、ってやつなんだろうね」


 家から出て、鍵を閉めてついていったんだから。

 でも、ついてった先で黒服と出くわして、彼らがウラの事を知らなくて、オモテでの犯罪もご法度だって知らなくて、いきなり発砲されたのはビビった。

 慌てて逃げても追い掛けてきたし。


「そういや、晶子に報告しようと思ってたんだった。…………忘れてたよ」

「え、彰まさかフツーに今まで忘れてたの!?」

「忘れてた」


 忘れてたような、言わなかったような。

 だってさ、もし言ったら。


「彰っ!」


 亮が気づいちゃうしね。

 亮は泣きそうな顔で俺を見て、俺の手を握った。


「お前、その、頭を、」

「亮。ちょっと静かにね? 話したいことはまだあるから」

「でも!」


 俺にしがみつく亮。

 暁や晶子は、亮が「何か怪我してるんじゃないだろうな、彰!?」のつもりでしがみついてると思ってる。

 詩呂と立夏は「またやってる」としか受け取らない。

 淳は…………………………


「彰。もしかして君と亮って、どっかで繋がってたりする? 何て言うか…………何かあったら分かるくらいには」

「そんなわけ、」

「そうなんだぜ!」


 やっぱり、気付かれた。そんな気がしたんだよね。

 気付かないようにさりげなくしてたんだけどなあ。このせいでパーだよ。


「そうだったの!?」

「でも一ッ回もそういうこと言いませんでしたよね!?」

「確かに」

「そんなマジック、あるのか」

「マジックじゃねーよ! って空野先生、」


 先生には、いろいろとお世話にもなったので話してある。

 ので、今も先生はとても落ち着き払って俺達を見ていた。


「ああ。知っていた。お前達が一度死にかけてから、そうなったんだったな?」

「まあ、概ねはそんな感じです。えー……黙っててゴメン」


 暁にデコピンされた。

 ドゴン。

 一瞬意識が飛んだ。


「ちょ、暁ヒドイって!」

「酷いのは君でしょう! 僕達にも話してくださいよ! 悔しいじゃありませんか」

「同感」


 晶子がうんうんとうなずいている。立夏がそれで、と俺を見た。


「話を本題に戻すぞ。あとで殴らせろ」


 そうそう。殴られるのは嫌だけど。

 まだ、亮がさっき何て言ったのか、気づいてほしくないんだよね、俺。

 切り札のなかの、切り札だから。

 切り札って言っても、両刃の剣だけど。


「奴の会話と、その時にいた者と、黒服について話してくれ」


 俺は、記憶を探る。



『主に言われた通りに、塔から出たぞ』

『うん。結界がちゃんと破られてるしね。そのお陰で俺達も直接ここに来れるし。大成功』

『他には何をすればいい?』

『ん? 何も』

『は?』

『何もしなくていいよ。自由気ままに暮らしていい。俺達と戦おうってんなら止めてほしいけど、それ以外ならお好きにどうぞ』

『自由って、何だ?』

『何でも好きな事をしてもいいってこと』

『好きな事って、何だ』

『ああ、なるほど。……好きな事ってのはね。人それぞれなんだけど………………何かがしたいって思うことはない?』

『………………………………………………。人』

『人?』

『脳に、時々、女性が笑っている姿が映る。名前は雛菊、着物を着ていて、黒髪黒目で、可愛いんだ。このひとに会いたい。会って、話がしたい』



 うん。たしかこんな感じ。

 そりゃ雛菊って名前に聞き覚えあるはずだよ。この頃ボケてきたのかもしれない。

 話したら、立夏が呆れ顔になっている。


「お前…………あまりにも忘れ物が多くはないか?」

「あ、立夏もそう思う? 脳のトレーニングとかもした方がいいかな?」

「聞くな。…………しかし、お前の記憶のお陰で色々と繋がった。夜生光辰の話の相手、特徴は分かるか?」

「分かる分かる。青い髪に、金色の目だった」

「アタリだ」


 淳が膝を叩いた。苦そうに笑っている。


「異界の者だ。名前はプレイフル=レイジ。軍師役みたいなやつだ」

「正真正銘、策士だな。また何か企んでいるのか………………まあいい」


 立夏が首を回す。

 そして雛菊さんを見て、気まずそうに目をそらした。


「夜生雛菊。お前の夫の死体を動かしているのは、夫の魂ではない。異界の者だ」

「は? よく分からないぞ」

「先ほど淳が説明しただろう? あの、アンデッドだ」

「もしかして、夜生光辰さんの魂はまだ塔のなかでさ迷っていて、体だけが別の魂を放り込まれてあちらこちらを動き回っている?」


 俺が聞くと、立夏は満足そうに頷く。合っているみたいだ。

 一方、雛菊さんは不愉快なのか眉をひそめた。

 そりゃあ潜めると思うよ。旦那の死体が勝手に使われてるんだから。


「本当なのか?」

「予想だからまだ確信はないがな。異界の者になった輩は、身体能力がいくらか上がる。それに任せて塔を出たとも考えられるからな」

「いや、待て」


 ここで制止を入れたのは空野先生だ。


「俺の恩人に、この町には異界の者は出現できないと聞いたが?」

「そうなんですか?」

「らしい。実際、見たことも無かったが」

「じゃあプレイフルはどうやってこの町に?」

「分からん。何かが起きたんだろうが………………」

「そもそも、どうしてこの町には出現できないんですか?」

「知らんことばかり聞くな」


 膨れた空野先生は、そうだと空を仰ぐ。


「アンヌさんの所に行って、聞くか?」


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