第20話
「証明してみよう。まずは魔法からね」
言った途端、湯呑みがぼおっと青くおぼろげに光る。やがて電気のようにバチバチと音が鳴り、一瞬湯呑みが眩しく輝いて、俺が目を閉じ、慌てて開けた頃には。
湯呑みはコースターに変わっていた。
ちなみに湯呑みとコースターは同じ色合いだ。
「これが俺の一番得意な力……魔法でね。物質の形を変えられる。同じ質量のモノなら何にでもね」
「錬金術みてーだな!」
「錬金術が何かは分からないけど………………金は形変えやすいよ」
どこか的外れな言葉を返しつつ、淳はまたコースターを湯呑みに戻す。
それじゃ、と彼女は悶絶したままの立夏をたたき起こした。
「立夏、アレやって」
「何故俺が」
「俺がやったらどこ行くか分からないし」
訳の分からない会話のあとに、立夏が溜め息をついて、手を翳した。
「目を閉じろ」
言われた通り、目を閉じる。
パチン。
どこかで指を鳴らす音が聞こえた。
こっそり目を開けると、俺の体を水が覆い、そして弾けて消えるところだった。
草原に、座っていた。
「目を開けてもいいぞ」
しっかり目を見開き、辺りを見回す。
やっぱり、草原にいる。遠くに白い建物がある。
大自然だ。風が気持ちいい。
空野先生と淳以外、みんな辺りを見回している。琴花さんは連れてこなかったらしい。
立夏が白い建物を指差した。
「あれが組織の本部だ。この世界まるごと、組織が管理している。…………よし、戻るか」
また目を閉じて、指鳴らしを聞いて、目を開けるともとの詩呂の家にいた。
立夏はにやりと笑い、両手を広げる。
「種も仕掛けもない。どうだ、納得したか?」
「おう!」
亮がキラキラと目を輝かせて言った。
「な、俺の体を包んだ水って何だ?」
「見ていたのか…………俺の力、魔法だ。人それぞれ属性がある。たまに属性が二つ三ついる人間もいるがな」
「へー!」
「ねえ立夏」
晶子が立夏の髪を指す。
「もしかしてあなた、さっき言ってた異世界から来た人間なんじゃないかしら? 髪も、地球には存在しない色だし」
「ああ。丹洪、という国から来た。家庭の事情だ」
「もしかして、淳も?」
「うん。俺は日本………………この世界の日本生まれだけど、血筋としては、軍国主義な別世界の日本から来てる。母さんがそこの人でね。駆け落ちだったから行ったことないけど」
「色々あるんだね」
受け入れるしかなさそうだ。
空野先生が、雑談をさえぎった。
「それで? 異界の者は何故お前達を狙おうとした」
「俺は当然のように命を狙われるんでね。そのせいじゃないですか?」
「いや淳、恐らくは俺だ。奴らに狙われている」
淳と立夏、心当たりは二人とも大いにあるらしい。
二人とも、短いとはいえ大変な人生を送ってきたんだなあと思う。俺なんてもうこの事態が嫌になってるしね。
「立夏は組織に入ってるの?」
「まだ時間の融通が聞く、下位だけどな」
「淳はどうして入ってないのに詳しいの?」
「そりゃーね…………ここの町に俺を放り込んだ恩人が色々教えてくれたんだ。何でも恩人さん、組織の上位に知り合いがいるらしくてね」
「へー。色んな人がいるんだね?」
「うん。楽しいよ」
にへらと相好を崩した淳に笑いかえす。
………………うん。
俺も言った方が、いいみたいだね。
「えーとね。ちょっと話ズレるけど。…………二日前の晩、その異界の者が、光辰さんと話すところ…………見たかも」
「「へ?」」
立夏と淳が、声をそろえた。




