第19話
「この外に、居たな」
「はい。視線も感じました。腐臭も」
「ああ。まだ微かに臭う。鼻は良いからな」
俺は、全然そんな臭いは分からない。けど、二人があるというなら、あるんだろう。
「何なんだ、アンデッドって」
「それを話すんなら………………君の方がいいんじゃないの? 立夏」
「いや、ここはやはり奴らと長年戦ってきたお前が言った方がだな」
「でも、組織に入ってる君の方が、キッチリした『共通の情報』を持ってる」
「組織?」
聞くと、淳がにんまり笑い、立夏がそっぽを向いて頭をかいた。
やりこめられているのかな。
「立夏さ、よく病欠で学校休むんじゃない? あれってさ、サボりなんだよ」
「ほーう?」
真っ先に食いついたのは空野先生だ。立夏に笑みを向けている。
それもとびきり黒い笑み。
立夏の冷や汗の量がすごい。
「俺は病欠だと聞いたがな?」
「いやっ、病気の診断で休む時もあります!」
「まー、診断よりも組織関係で抜けてる方が多そうだけど?」
「淳、おまっ、」
立夏の顔が若干青い。
周りを見回しても、俺達の中に援護はひとりもいない。だってサボりなんてずるいしね。
空野先生がゴキゴキと指を鳴らしながら、立夏に歩み寄った。…………指が鳴るって音じゃなかったけど気にしない。
「岸。とりあえず、そうだな。………………一発受けとけ」
先生の拳が立夏の脳天に炸裂した。
立夏、撃沈。
やむなく淳が説明を始めた。
「本来俺は組織の人間じゃないんだけどね………………あ、組織ってのは、さっき言ってたアンデッド軍団から人間を守るための組織。正式名称は忘れた。
で、アンデッドってのは、まー分かりやすく言うと、悪の親玉がいて、そいつが他人の死体パチって別の新しく作った魂をぶち込んでるんだ。その魂ぶち込まれた死体が、アンデッド。で、それがいっぱいいるからアンデッド軍団。
一応その親玉がいる場所を異界、親玉を異界の主、アンデッドを異界の者って呼んでる。
ちなみに全部異世界の話ね」
「異世界?」
「そ。パラレルワールドとでもいうのかな…………外国みたいなものと思っていいよ。ただ、魔法使える国とか、言葉話してるの明らか人間じゃないだろうって国もあるけど」
へええ、と亮が身を乗り出している。詩呂と暁はただ聞いている。逆に晶子は半信半疑だ。
俺も少し、信じられなかったりする。
「失礼だけど、あたしとしては、そのアンデッドですら信用できないのよ。実際見てないものを信じることができない質だから」
「俺も同感。まあ魔法があるっていうのは分かる気がするけど………………何にせよ、異世界の証拠が欲しいな」
何故か淳が嬉しそうに顔を輝かせた。
ちなみに空野先生はどうでもいいのか、お茶をすすっている。雛菊さんは感心しきりだ。
琴花さんは寝ている。
麻雲さんはいつの間にかいなくなっていた。
「来ると思ったよ! 亮、暁、詩呂。君達はどう思ってる?」
「すげーと思うぜ!」
「僕も証拠が無いものを信じる気にはなれませんが………………幽霊も実在するんです。魔法だって異世界だって存在するんじゃないかと思って」
「同じく。有り得ないモノなら充分見てきた。今更異世界なんぞで驚けないな」
……詩呂は一体、何を見たんだろう。
でも、淳はうんうんと頷くと、空になった彼女の湯呑みを手にした。
ご無沙汰しています。
更新できず申し訳ありません。
もう少し不定期が続く予定です。
重ね重ね申し訳ありません。