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とある少年達の日常  作者: 蝶佐崎
第一章:4月
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第17話


 何が、と言いたい。

 でも、淳の顔があまりに険しくて、口すら出せない。


「外から、微かだけど腐臭みたいな、嫌な臭いがする」

「光辰か?」

「幽霊に肉体はありません」

「じゃあ、」

「まさか。奴らか?」


 立夏が、緊張した顔で、淳を見た。


「奴ら?」

「アンデッドみたいな奴らがね、存在するんだよ」


 淳がピリピリと緊張しながら、窓に近付く。扉が開いて、竹刀を持った麻雲さんが入ってくる。


「私がやります」

「いや。向こうがどう出るのか、それが知りたい」

「ですが」

「大丈夫。もうすぐ空野先生も来るよ」


 淳が、ほっと笑った。


「先生に気付いて逃げた」

「おい!」


 外から聞こえた空野先生の声に、何故か力を抜いて座り込みたくなった。


「無事か? インターホンを鳴らさずに直行したが」

「ハイ。傷一つありません」

「そうか。中に入るぞ。それから、門のところで人間を一人拾った。琴花(ことはな)と名乗っているが、入れてもいいか?」

「どうぞ。すぐ左に正面玄関があります」


 麻雲さんが玄関に二人を迎えに行く。

 にしても、琴花さんだったわけか。隣で暁も目を丸くしている。

 暁も知り合い多いからなあ。


「もしかして、あとから来るというのは……琴花のことだったんですか?」

「ああ。マフィアの事で聞きたくてね。奴は今、ちょうど良いことに西部管轄の親分衆だ」

「ラッキーなんだか、ラッキーじゃねぇんだか」


 ぼやいた声に振り返り、相変わらずの彼に声をかけた。


「琴花さん。お久し振りです」

「お、彰!」


 スーツ姿に金髪碧眼のイギリス人である琴花さん。本名はヴェネッサなんとか。

 彼はウラの世界から離れられなくなった人間だ。元々、英国マフィアだったらしいし。

 琴花さんは明るく笑って、手を挙げた。


「久し振りだなあ。何年振りだ?」

「四年です」

「案外経ってなかったか。おいカラノ、ありがとうよ」

「ああ」


 空野先生は琴花さんに生返事を返しながら、雛菊さんにぎこちなく微笑んだ。


「お久しぶりです。雛菊さん」

「やはり想馬か! 相変わらず長生きだな!」

「ええ、お(かげ)様で」

「何だそれは、皮肉か?」

「本音八割皮肉二割と考えて頂ければ」

「む…………まあいい」


 先生に抱き着いた雛菊さん。それを見て暁と亮がこそこそと話す。


「なあ、アレじゃね?」

「亮もそう思いますか?」

「当たり前だ、ホラ…………」


 二人が声をそろえて言う。


「「愛人」」

「阿呆が」


 二人の頭にたんこふが乗った。


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