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とある少年達の日常  作者: 蝶佐崎
第一章:4月
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第1話





 四月、春。


 四限目の終了と昼食の開始を告げる鐘が鳴って、俺は窓側で一人息を吐いた。だってあの先生退屈だし。

 俺は夜生彰(やよいしょう)、高校一年生になったばかり。席は中学と同じく、名簿のせいで最後尾に一人で座っている。隣の机を好き勝手使えるのは嬉しいけど、やっぱり寂しい。

 勉強道具を片付け始めた俺に、亮が飛んできた。


「うわ、真面目に勉強してる! 偉っ!」


 そう叫んだ長身の青年は江崎亮(えざきりょう)。運動神経が良い。色々あって、中平晶子(なかひらあきこ)の家に住まわせてもらっている。

 その晶子は、亮の頭を箸箱で叩き、そばの椅子を引きよせて座った。


「あんたは、せめてノートぐらいとりなさい。それでいっつも単位一つは落としてるじゃないのよ」


 晶子に同意するのか、こっちに来ていた綾瀬暁(あやせさとる)が頷いた。授業中は眼鏡をかけている。そういえば、最近視力が落ちたとか言っていたはず。


「特に漢文とか古典とか。ノート書いたら少しは評価上がるんですから」


 暁の成績は常に上位にいる。中学の頃から一度も勝てない相手を負かすためだと吠えてはいるけど、一向に勝てる気配は無い。

 亮が文句を言いながら、俺の前方の席に陣取り弁当を開く。暁もその隣に座った。

 四人で一つの机を囲んで食べ始める。

 これが、|四人(俺たち)のいつもの風景だ。





 とりとめもなく音楽だの芸能人だのを話していたところ、晶子が脈絡なく話題を変えた。


「そういえばオヤジが言ってたんだけどね。なんかこのあたりに、マフィアが逃げ込んだらしいのよ」


 彼女は父が警察署長で、町の事件を良く知っている。

 暁が眼を丸くした。


「マフィアって、あの映画とかでよくやる、密輸とか陰謀とかの?」

「そうそう。そんな感じ。それで、ウラの顔役、ってか頭って呼ばれてる奴をのしてアジトを造るつもりなんですって。あれ、もうのしたんだっけ?」

「何にしても、ウラに入っちゃ駄目なんだね?」



 俺達が住むこの町には二つの地域がある。詳しくはもうひとつ、別の地域もあるけど人間はいないので割愛するとして。

 一つは、この学校や住宅地がある地域。これを一般にオモテと呼ぶ。

 もう一つの地域をウラと呼んでいて、そちらは廃ビルやら鉄筋やらが散らばりチンピラやごろつき、果てはヤクザまで居ると聞く。

 オモテで喧嘩や犯罪行為を行うと、他の町よりも重罰を受ける。代わりに、ウラで何をしようが…………クスリ、未成年の飲酒、人殺し、喧嘩、まぁこういったことをしようと、罪に問われない。

 俺達も小さい頃、ウラに顔を突っ込む程度に入ったことがあるんだけど、チンピラに殴られて死にかけた。



「そういうこと。昨日銃声が聞こえたとかも言ってたしね」


 ぱくりと卵巻きを加えた晶子の後ろに、社会科の教師、空野想馬(からのそうま)先生が立つ。口元に邪悪な笑みを浮かべながら。


「げっ」


 そして何故か亮が飛び上がる。青くなる。


「えーざーきィー」

「先生、待っ、俺ご飯ッ」


 亮の能天に空野先生の拳が入った。


「ご飯食ったら社会科教室だ! いい加減追試を受けに来んか馬鹿者! お前を含めてあと数人だ」

「……先生、亮君の口から魂が」

「このぐらいで死んだら、俺は何度こいつを殺している、あァ?」


 何だか荒れておられる。

 空野先生は糸目に長髪に長身の男性だ。長髪は背中にかかるかかからないか、軽く纏めてある。高校一年生の歴史を担当している。ついでにA組(うち)の担任だ。

 先生はドカドカと教室を出ていった。それを見て亮が息を吹き返す。


「ごめん、今日は先に帰っててくんねーかな? いつまでかかるか分かんねーし、放課後に行こうと思うんだ」


 確かに、昼休みはあと十分で終わりを告げる。そして亮は歴史がとても苦手だ。いつも追々々試ぐらいまで行く。

 それを見越しての宣言に俺達は頷いた。



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