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とある少年達の日常  作者: 蝶佐崎
第一章:4月
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第16話


 訳が分からず首を傾げる俺をよそに、雛菊さんが顔色を変えて立ち上がる。

 浦和君に詰め寄った。


「こいつに瓜二つで、着物をきた男が歩いていたのか!?」

「お、おう。幽霊みてぇにフラフラ歩いてたな。……もしかして別人?」

「別人別人。俺昨日の夜は一歩も外出てないよ。ちなみにどんな着物?」

「青っぽくて、うす汚れてた」

「そっか。ありがとう」

「おー。じゃな!」


 浦和君が出ていく。

 立夏が、口を開いた。


「…………案外早く、所在が知れたな」

「でもさ、幽霊ってこんなに()えるものなの?」

「いえ」


 淳の質問に答えたのは、やっぱり暁だ。


「元々、人間には、幽霊が視える者と視えない者がいます。そもそも幽霊は物に触れられません」

「らしいな。そのあたり、意識だけ蘇らせた私にはよく分からんが」


 雛菊さんが言うには。

 あの世にはエライ人がいて、その人に意識だけ蘇らせてもらい、この世にいる知り合いに、泥と土で人形を作ってもらい、それに入っているとのこと。

 それでさっき、淳が土臭いって言っていたのか。

 その知り合いって何者なんだよ、と思いつつも、立夏の言葉に耳を傾ける。


傀儡(くぐつ)を作る手法に似ているな。それで? 浦和が夜生光辰とやらを視えたのは、浦和が視える(たち)なのか、夜生光辰が何かをしているのか、どちらだ?」

「光辰にそんな技術はない。から、単にあの青年が視えるだけだろう」

「浦和君って視えない人だと思ってましたけど…………そもそも、死者が視えるだの実体を持つだのが有り得るなんて、知りませんでしたからね」

「そうか」


 立夏が、何事か考えている。そして、何かを考えていた淳が、口を開いた。


「夜生光辰さんがどこで死んだか、知ってる?」

「塔で。あと数時間したら、牢から出してもらえるはずだったのに」

「そっか。ねえ、みんな」


 塔での地震。空野先生が言っていた、地盤沈下だろうか。

 淳が、笑みを見せた。


「考えてもみてよ。何で、塔に居たはずの光辰さんがこの町にいるのさ?」

「どうやって、塔から出たんだ?」

「そう。それに…………」


 淳が、忌ま忌ましいのか、眉を潜めた。


「あの塔から、酷い臭いがするんだ。腐臭だよ、人間の」

「取り出せなくて、僕の祖先が供養のためにお経を唱えたと聞きました」

「ならどうして、夜生光辰は成仏していない?」

「光辰は身体が丈夫なんだ。下手をすれば、想…………知り合いよりも。再生はしないが。だから、経を唱えられたときには、光辰はまだ生きていたのかもしれない、」


 話を聞いていて、俺は思わず、雛菊さんの口を押さえた。


「…………涙を溜めるくらい辛いのに、無理してまで話さなくてもいいですよ」

「……………………そう、なのか?」

「ええ。俺達で考えますから。空野先生はご存知ですよね?」

「想馬を知っているのか!?」

「俺達、先生の教え子なんです。空野先生に連絡をとって、来てもらいます」


 俺が言う横で、亮が携帯で先生の番号に電話をかけている。


「空野先生? 詩呂ん家までちょっと来てくんねーかな?」

「亮、いけた?」

「おう。結局、フルボッコにして警察に突き出したらしーぜ。事情も全部話して、ナイフも提出して」

「うーん。…………さすが空野先生」


 雛菊さんを、ソファーに座らせる。


「お疲れ様でした。今は休んでいてください。……ね、塔の谷って、跳躍で飛び越えられるほど狭かったっけ?」

「いや。もし飛べるなら…………人間離れしているぞ。夜生雛菊、夜生光辰は人間だったのか?」

「人間、だった。ただ、昔に変なものを飲み込んだことならある」

「何を飲み込んだんですか?」

「悪魔の石」

「「「あくまのいし?」」」


 なんじゃそら、と亮が身を乗り出す。

 でも、雛菊さんもよくは知らないらしい。


「私の父上が持っていたものだ。それを家臣であった男に奪われて、取り戻すさいに間違って飲み込んだらしい」

「飲み込んじゃったんだ!?」

「なんかヤバそうだけどよ、遺伝とかしてねーよな!?」

「してると思うぞ?」

「してんのかよ!!」


 そのとき。

 淳が静かに手を突き出した。


「静かに。そとに居る」



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