第15話
顔を知っている暁も目を見開いている。晶子と亮も首をひねった。
反対に、雛菊さんも俺を見て目を丸くしている。
俺の反応を見て、淳がやっと口を開いた。
「優子さんって、彰の弟?」
「うん。…………本当に瓜二つなんだけど」
「お前もだ」
雛菊さんが口を開く。戸惑った顔で、俺を見たまま。
「私の…………夫にそっくり」
「夫がいるんですね?」
「いた。が、地震で死んだ」
「ご冥福をお祈りします」
言うと、雛菊さんはじっと俺を見た。
「名前は?」
「夜生彰です。あなたの名字は? 雛菊さん」
「夜生だ」
返ってきた言葉に、晶子が目を丸くしている。暁は何かを考えているようだ。
「………………夜生雛菊さん、ですか?」
「ああ。そして旦那の名前は夜生光辰。私が探している男の名前だ」
「ですが、」
「ごめんなさい彰、少しいいですか?」
暁が遮る。話を暁に任せた。
でも、旦那は死んだって言わなかったか?
暁は雛菊さんの前に立ち、数珠を見せる。
「雛菊さん貴方、幽霊ですよね?」
「よく分かったな」
「実家が寺なもので。もしかしてその光辰さんと言う方………………まだこちらで、さ迷っていらっしゃる?」
「…………………そうだ。後から逝ったのに、あいつは向こうに居なかった」
「そうですか。彰、雛菊さんと光辰さんは君のご先祖様です。そして、光辰さんがまだ成仏していないので探しに来たと。そう考えてよろしいですか?」
「その通りだ」
なんと。うちのご先祖様だったらしい。
拝もうと手を合わせると、払われた。
「止めんか、気持ちの悪い」
「うわあ、優子にそっくり」
「お前もそのぼんやりしているところが、光辰に瓜二つだな」
「えーと……………………どうも?」
「もういい。おい、坊主」
「はい」
「お前、想馬を知っているか? 空野想馬」
「知っていますよ。連絡をつけましょうか?」
「頼む」
そう言った雛菊さんはお茶をじっと見て、
「お飲みください」
「うむっ。ありがたくもらおう!」
麻雲さんの言葉に顔を輝かせた。いそいそと手を伸ばす。先に晶子のとなりに座り湯呑みを持つ詩呂の、そのまたとなりに座った。
晶子が彼女を見て、和んでいる。
詩呂が、まだ扉のそばに立っていた彼を見て、眉を潜めた。
「麻雲、お前も座って飲め」
「身に余るお言葉、ありがとうございます。ですが私は執事ですので、」
「五月蝿い。人が立つ部屋でくつろいで飲めるわけがないだろう。これは命令だ」
「……では、お言葉に甘えて。お茶を煎れて参ります」
「その茶を飲めばいい。奴の分の茶なら要らない」
「それはいけません。煎れて参ります」
麻雲さんは出ていった。慌てているらしいけど、全く慌てているようには見えなかった。
美形って何してもカッコイイんだね。美形は滅べ。
詩呂はまだお茶に手をつけていない。
「誰か来るの?」
「呼んだ。彰なら知っているんじゃないかな」
「俺?」
おっかなびっくりしていると、玄関の方から声がした。
「しぃーろぉー! 来たぜぇー!」
詩呂がやれやれという顔で席を立つ。
そして、怒鳴った。
「応接間に来い!」
「おー!」
声と共に入ってきた青年。
名前は、浦和水城君。
詩呂の幼なじみだ。家も近いらしい。それ以外は知らない。あんまり関わりたくもないし。
浦和君は俺達研究会のメンバーを見て、やや戦いたように立ち止まった。
「俺、お邪魔? 研究のテーマ決めてた?」
「邪魔ではないが……パソコン室にでも行っているか?」
「そうする。じゃなっ! あ、そうだ」
浦和君が俺を見て、目を輝かせる。
「夜生さ、昨日の晩、俺ん家の前フラフラ歩いてなかったか? 着物きて」
「へ?」
お久しぶりです。長期間放置してすみません・・・!
一ヶ月経ってるけど改めてあけましておめでとうございます。