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とある少年達の日常  作者: 蝶佐崎
第一章:4月
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第14話


 おっさんの変な話し方は、殴られて歯が何本か逝ったからだと思う。


「雛菊? お前達、雛菊さんを知っているのか?」

「詩呂が、そういう名前の女性を拾ったんです」

「そうか。上条」

「何でしょう」

「雛菊さんとは、古い知り合いだ。今日はこいつらをどこかに埋める必要があるから無理だが……機会があれば会いたい。別の日に、お前の家を訪ねるぞ」

「分かりました」


 埋めるというワードをさりげなく使った空野先生。それを華麗に無視した詩呂。

 うーん。物騒だなあ。

 先生は手をあげてから、黒服の襟首を掴んだり背負ったりして、十一人全員を捕獲すると、道を歩いていった。


「手伝いましょうか?」

「いらん」


 イヤ、空野先生って凄いね本当に。

 詩呂はそれを見送って、じゃ、と足を進めた。


「家に行くか」





 門をくぐり、しばらく両端に刈られた芝生が並ぶ道を歩く。

 やがて、煉瓦でてきた、ドでかいお屋敷が見えてきた。詩呂のお家だ。


「失礼しまーす」

「ただいま」

「おかえりなさいませ」


 詩呂が扉を開けると、若い男性が頭を下げていた。上条家の執事、麻雲(まくも)さんだ。凄い美形な上に長身。

 詩呂は麻雲さんに鞄を預けて、奥に見える階段に向かう。



「ああ。麻雲、みんなを応接間に通しておいてくれ。雛菊さんを連れて降りてくる」

「畏まりました。皆様、鞄をどうぞ」

「ありがとうございます」


 ソツなく鞄を持った麻雲さんがカッコイイ。男である俺でもそう思う。美形は何してもキレイってやつだろうね。

 麻雲さんは鞄を抱えたまま、応接間に案内して下さった。

 広い部屋で、隅に高そうなモノがガラスケースに入れられて置いてある。船とか仮面とか巻物とか、その他モロモロ。

 あっちには近寄らないと心に決めた。こっちはソファーに座るだけでもおっかなびっくりなんだからね!

 鞄をどこかに置いた麻雲さんは、いつの間にかお茶の入った湯呑みをお盆に乗せて、俺達に配っている。

 三人分余った。麻雲さんはそれをテーブルに置いて、扉のそばに立った。飲まないのかな?

 淳が鼻を抑え、眉を潜めている。


「土臭い」


 扉が開いた。


「ごめん、遅くなった。くつろいでいるか?」

「詩呂」

「わりーけど、全くダメ」


 詩呂が女性を引っ張って入ってくる。女性は俯いているせいで、顔が分からない。

 でも、緊張しきりで全くくつろいでいないのは本当だ。亮なんて珍しく静かだったし。晶子は辺りを見回してばかりいる。暁もだ。淳は冷や汗をかいたまま微動だにしない。カチンコチンに固まっている。

 ただ、この中でも立夏は肝が据わっているというのか、豪胆だった。


「詩呂、そいつが雛菊か?」

「そうだ」


 呼ばれて、雛菊さんが顔をあげる。

 その顔を見て、思わず叫んでしまった。


「優子!?」「優子さん!?」

「あれ?」「なんでよ?」


 高い鼻。くっきりした顔立ち。大きい目。長いまつげ。

 俺の妹、優子にそっくりだった。


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