第10話
悶着あった結果、立夏が淳の分の弁当も作ると宣言。
で、放課後に至る。
五人は先に部活に向かった。立夏は若干俺達と一緒に行きたがってたけど。
で、結構な数の部活を見た。
それで分かったことが一つ。
「淳って、運動神経いいね」
「ありがとう。でも彰も凄いよ?」
淳は、やり方さえ教えたら、スポーツなら何でもできた。
俺は単に原理考えてやってるだけだし。
「亮も凄いんだよ。外部の高校からスポーツ推薦の話もきてたぐらいだし」
「そうなんだ?」
そう。亮もスポーツにかけては天才。
何をやらせてもできる。
淳も同レベルで凄いけどね。
「あとね。詩呂も立夏も凄いから。スポーツ関連」
「へええ!?」
「暁も筋力腕力脚力なら誰にも負けないし。晶子も元陸上部の長距離ランナーだけあって、持久走とかマジで凄い」
「トランプ研究会凄いね!?」
そう。気付いたら何故かこうなってたんだよね。
俺も暁も晶子も立夏も高校で運動部に入る気はなく、亮は色々あって部活を止め、詩呂もグレていた関係で今さら運動部に入れるかと言っていた。
で、ぶらぶらしていたところ、詩呂と立夏のクラス…………C組の担任だった先生に何か文化系の部活でも作ればと言われ、トランプ研究会を作った。
立夏とは、研究会を作ってから知り合ったんだしね。
「ま、寄せ集めなんだよ」
「ふーん」
そう言いながら、被服教室の扉を開ける。手芸部の活動場所だ。
入ると、真っ先に空野先生と目があった。
「ああ、部活を紹介しているのか」
対して淳は先生を見て目を丸くしている。
「先生が手芸部の顧問なんですか!?」
「驚くべきことに、そうなんだよね。初め聞いた時は、顧問にでもなって女子ハーレムあいてっ」
俺の頭に編む用の棒が飛んできた。
「阿呆かお前」
「初めですよ初め。…………淳、先生の作った作品を見てごらん」
言われて、作品をいれてある箱を淳が覗き込んで、一度顔を出して、箱に書いてある名前を確認して、俺達を見た。
「ごめん、これ本物?」
「本物」
「店で商品として売っててもおかしくないレベルなんだけど」
「お褒めに預かり光栄、だ」
面倒そうに先生が言う。
「お前も編むか? 今、ハンカチに刺繍で獅子を入れている最中だが」
「いいですごめんなさいあたしにそんな器用な真似はできませんから」
淳は笑顔で辞退した。
被服教室を出て、次に社会科教室を覗く。ここで郷土研究会をやっているから。
「…………あれ?」
「誰もいないね」
誰もいなかった。
パソコンが一台だけ置いてある。
「なになに…………チャットかな?」
「『生き字引の元市長と接触。のち、結果を貼る』だって」
みんな出かけているらしい。
俺達も退出した。
最後に、トランプ研究会の部室に向かう。
「トランプ研究会は部室、あるんだね?」
「使っていない教室を掃除して部室にしたんだよ。荷物もいっぱいあるからね」
トランプとか、パソコンとか、プリンターとか、カメラとか、研究のデータとか色々と。
高価なものを置いてあるから、部屋には鍵までついている。
「顧問は?」
「高校一年C組の担任の先生に押し付けた」
「押し付けっ………………」
淳は何も突っ込まないことに決めたらしい。
俺が部室の扉に手をかけたそのとき。
「っしゃキター―――――――――ッ革命!!」
「なにぃっ!?」
「そして上がりだ! 立夏、都落ちだぜ!」
「やられたっ」
悲鳴が聞こえた。トランプ、大富豪をしているらしい。
亮が大富豪になって、立夏が大貧民になったみたいだ。
晶子の歓声も聞こえる。また大貧民だったのかな。
扉を開けると、やっぱり床に座り込んでゲームをしていた五人がいっせいに俺達を見て、笑った。
「「「「「おかえり」」」」」
淳が、絶句した。
俺が、淳の分も応えた。
「ただいま」