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とある少年達の日常  作者: 蝶佐崎
第一章:4月
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第9話



 昼休み、俺達は淳に弁当を食べながらこの町の話を教えた。三つの領域があること、言っても無駄だとは思うけど、あまりウラには入らない方がいいこと。塔には入ろうにも入れないこととかね。

 淳は食堂で買ってきたおにぎりを頬張りながら頷いた。


「うん。聞いたけど、向こうから突っかかってきたら飛ばしてもいいよね?」

「正当防衛ならいいですよ」


 暁が頷く。彼はコンビニで買ってきたと見られる湯気の立つヌードルを食べている。曇るのでメガネを外しているけど……何で不衛生がそばに二人も居るんだ。暁に関しては、いつもはお弁当だけど。

 それはともかく、と弁当を食べていた晶子が身を乗り出した。


「淳って空野先生と知り合い?」


 何でも、空野先生本人から聞いたらしい。


「先生の知り合いの知り合い。特徴しか聞いてない。その人に高校からやり直したらって言われて、気が付いたらこの高校に編入手続き終わってた」

「やり直し?」

「お袋が病気にかかったから、親父からもらってた仕送りの金を全部治療費に使ったら高校に通うために貯めてた金が無くなった。中卒だよ」


 淳はあっさりと言うけど、これはディープな話なんじゃないかな。


「だったらよ、この高校に通う為のお金はその知り合いが出してくれてんのか?」

「まあ、そんな感じ」


 晶子、亮、暁の顔が強ばった。


「……淳って何歳?」

「ピチピチの十五歳ですが何か」


 済ました顔で言った彼女はご飯を食べ終わり、ラップをゴミ箱に捨てに行く。

 その背中を見て、思わず声をかけた。


「弁当、うちで作ろうか?」

「へ?」


 淳がこちらを向いて、呆気にとられた顔を俺にさらす。

 弁当の方が健康にいいし、どうせ弁当作ってんの俺だし。


「弁当一人分増えるぐらい、どうってことないよ」

「いや、でも、彰のお母さんに迷惑とか、」

「母さんは俺が六歳の時に死んでる。親父も帰ってきたり来なかったりだから、今は妹の分も合わせて、俺が弁当作ってるんだよ」


 淳が、鉛を飲み込んだような顔をした。


「ごめん、悪いこと聞いた。でも凄いね!? 二人分も作るなんて」

「慣れたらどうってことないよ。で、どうする?」

「じゃあ、」


 お願いします、とでも言う気だったんだろうけど、第三者によって遮られた。


「おい淳」

「あ?」


 呼ばれて、反射で首をそっちに向けた淳は、だらしなく口を開いた。


「はれ? なんでここに?」

「俺の台詞だ」


 錆色の短髪に、鈍色(にびいろ)の瞳。

 トランプ研究会、六人目。岸立夏(きしりっか)が立っていた。

 それも苦そうな顔で。


「立夏? もしかしなくても知り合いだったの?」

「ああ」


 岸立夏。

 学校始まっての天才・鬼才と呼ばれているけど、家庭の事情でよく学校を休む。そのくせ放課後にひょっこり現れる、なんてこともよくある。髪は錆びた茶色、瞳は薄い灰色だ。さらに腹が立つぐらい無駄な美形。本人に聞くと、外国から来たと言っていた。

 暁とはよくぎゃいぎゃいと喧嘩する。暁も天才と呼ばれていて、今までテストで九十点以下をとったことがない。でもテストでは常に立夏が勝つ。そのせいか、暁はよく立夏に突っかかるし、負けず嫌いな立夏もよく売られた喧嘩を買うんだよね。

 短く答えた彼は淳の肩をむんずと掴んだ。


「岸立夏だ。立夏でいい」

「ハイ」

「お前、住所今言えるか?」


 淳が紙を取り出して言うと、立夏が呻いた。

 で、淳に何事か囁いた。

 淳もうめいた。


「……………………あの人は、何がしたいのさ」

「知るか。合理的だと思ったんだろう。家賃も食費もかからないからな」


 立夏がやや投げやり気味だ。

 どうしたのと聞くと、あっさり言ってくれた。通り掛かった詩呂も引っ張り込んで、俺達五人に。


「淳が、俺の家に居候することになった」

「「「「「ええええええええええ!?」」」」」




やっとレギュラーメンバーがせいぞろいしました。

何かが起きる・・・はず。

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