プロローグ
夜中。三日月が辺りを照らす中。
走っていた。
血塗れの左腕を押さえる。
何度も後ろを振り向く、追手の姿が無くても勢いを緩めようとは思わない。
「早く……早く……!」
警察に言わないと。彼女のお父さんに言わないと、
パン!
その頭を、何者かが、銃声と共に撃ち抜いた。
男は、今から脱出する塔を見下ろす。が、直ぐに前を向く。
無表情のまま。
月が、彼の足元に蠢く何かを照らす。それは赤子のように何本もある手を伸ばし、月を掴む動作を起こした。
「会いたい」
黒い闇のなかに、一人で立つ。
何も見えない。
ぞる、と質量を持った―――――いや、質量すらないのか―――――何かが、腕にまとわりつく。
行かないで。
そう、心細げに言われて、心が揺らぐ。
揺らいだ心の隙間に、膨大な量の、言葉による恐怖と哀願と――――――――――憎悪が飛び込んできた。
俺は。明日も。
いつもの日常を送れるんだろうか?
どうも、蝶佐崎と申します。
この頃ろくに更新できていないくせに何を血迷ったのか、また新作を作っちまいました。
どれも頑張っていきます。どうぞよしなにお付き合いくださいませ。