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異世界最強の節約勇者 〜神も魔王も全員、俺の財布の敵〜  作者: 勇者ヨシ君
第2章:仲間が増えるたびに、なぜか黒字になった

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「……石投げか」

腕立てが終わった。次が始まった。


 宿場町の広場で田中たちがいるところに、商人?のショウが走り寄ってきた。


「田中さん、ちょいと朗報でっせ! 野球盤トーナメントが貴族の間で流行っとりまして、次の大会の協賛(きょうさん)依頼が三件来てますわ」


「いくらだ」


「一件五千G。計一万五千Gでっせ」


「受ける」


「毎度おおきに! あとネネ様シールの追加発注も十件ほど」


「作る」


(協賛と追加発注を、合計二秒で決めました)


 エリュシアは内心で静かに処理した。


(昭和工廠、本格稼働しています)


「それとですな」とトルネコが少し声を落とした。「エリュシア様シールも、神官どもにかなり流行っとりまして。追加発注が八件ほど来てますわ」


 エリュシアが止まった。


(……恥ずかしいです)


(でも)


(八件……)


(うれしいです)

("いえ、うれしくないですっ!!")

(私は女神です)

(女神が祭壇に飾られているのは、まあ、おかしくはないです)

(でもシールで飾られているのは、おかしいです)

(でも八件……)

("考えないことにします。永遠に。")


「……作ります」


 気がついたら、言っていた。


(私が言いました)

(手遅れです)


「毎度おおきに~!」


 田中がトルネコを一秒見た。


「トルネコ」


「……なんでっか、それ」


「商売が上手い。運がいい。お前はトルネコだ」


「……よう知らんけど、悪い気はしませんわ」


(また命名されました)


 エリュシアは内心で静かに記録した。


(トルネコとは何ですか)


******


 そのとき、アルスが突然、立ち上がった。


 腕立て伏せの体勢から、まっすぐに。


「師匠!! 腕立て、"終わりました"!!!」


 全員が振り返った。


「何回だ」


「一万五十回です!!!!」


 田中が二秒、見た。


「よくやった。次は腹筋一万回だ」


「はい師匠!!」


 その場で腹筋を始めた。


 起き上がりながら前に進んでいる。腹筋しながら移動している。ぴょんぴょん跳ねながら進んでいる。


「……何だあれは」とネネが言った。


「なんか……気持ち悪いね~」とフィルナが言った。


「……なるほどね」とグレインが言った。


(なるほどね、ではないと思います)


 エリュシアは内心でそっとつぶやいた。


(でも否定する言葉が出てきません)


 田中がぴょんぴょん跳ねているアルスを三秒見た。


「……いい心がけだ」


(また褒めました)

(腹筋で跳ねている勇者を、褒めました)


******


 トルネコが声を落とした。


「もう一件、商売と違う話でっせ」


「言え」


「別の世界から来た、節約型の勇者が王都近くにいるらしいんですわ。腕が立つとの話で。今んとこ誰とも接触してません。ただ……」


「何をしている」


「石を、拾ってるらしくて」


 田中が止まった。


「……石を」


「道端の石を、ひたすら拾っとるそうです」


「タダか」


「タダです」


 田中が少し間を置いた。


「……そうか」


(石がタダであることを、最初に確認しました)


 エリュシアは内心で整理した。


(でも田中さんが、少し、間を置きました)

(珍しいです)


******


 夕暮れ。


 全員が宿に入った後、田中が一人、外に出た。


 宿場の外れ。街道の端に、人影があった。


 切りっぱなしのポニーテール。引き締まった体。道端にしゃがんで、石を一つひとつ手に取って確かめている。笑っていない。表情がない。ただ、黙々と、石を選んでいる。


 田中が立ち止まった。


 三秒、見た。


(タダか)


 少し間があった。


(……タダならよい)


 煙草に火をつけた。


 その瞬間。


 田中の中で、何かが一度だけ、静かに()えた。


 (チート)が、反応しなかった。


 ほんの一瞬だった。気のせいかもしれなかった。


 田中は煙草を最後まで吸い切って、宿に戻った。


 エリュシアが少し離れたところから、それを見ていた。


(……似ています)


 内心で、一行だけ報告書を書いた。


(でも、これは言いません)


******


 宿の中。全員がいる。


 アルスがぴょんぴょんしながら腹筋を続けていた。


「師匠!!(ぴょん)戻りましたね!!(ぴょん)どこ行ってたんですか!!(ぴょん)」


「外だ」


「そうですか!!(ぴょん)」


 フィルナが遠い目をした。


「……腕立てより、気持ち悪いね」


「……なるほどね」とグレインが言った。


(今回のなるほどねは)


 エリュシアは内心で静かに確認した。


(わかっていると思います)


******


その頃、神界では―


 技術職の印章をつけた女神が、書類を一枚差し出した。


「別世界の節約勇者が田中の近くに現れました」


 ウルダが目を閉じた。


「……私は寛大です。許します」


「田中の力が一瞬、反応しませんでした」


 ウルダが少し間を置いた。


「……寛、大、です」


「原因は不明です」


「…………」


「ウルダ様?」


「……今のは、記録しないでください」


(寛大ではない何かが、始まっています)


(……SEGA神(わたし)は、どうすればよかったのか)



※おじさん解説!


「トルネコとは何か」

 トルネコとは、1990年にエニックスから発売されたドラゴンクエスト4に登場するキャラクターだ。

 職業は商人。名前はトルネコ。フルネームはトルネコ・ノバク。

 武器より売上を大事にする。仕入れと利益を常に考えている。運がいい。

 後に「トルネコの大冒険」という単独ゲームが作られた。1993年だ。不思議のダンジョンシリーズの元祖だ。名作だ。

 ショウ・バイン・ガルスはトルネコに似ている。商売が上手い。運がいい。裏もやっている。

 トルネコは裏はやっていなかった気がするが、細かいことは気にするな。ポポロ異世界とかあるだろうが。


 以上だ。


―――――


※神界業務日報 第三十一回


本日の業務記録。


昭和工廠追加発注:確認。

エリュシアシール追加発注:八件。記録します。うれし......、うれしくないです。

感想は書きません。永遠に。

トルネコ命名:完了。命名者:田中剛。誰ですかトルネコって。

アルスの腕立て:完了。腹筋一万回に移行しました。

移動方法:ぴょんぴょん。特記事項として記録します。気持ち悪いです。

田中さんが夕暮れに一人、外に出ました。

戻ってきたとき、少し煙草の煙が残っていました。


以上です。


******


※魔王の家計簿 第三十一回


本日の収支。


野球盤協賛収入:確認。シール追加発注:確認。

収益は増えている。


別の世界の勇者が来た。石を拾っているらしい。

石はタダだ。

田中も最初にそれを確認していた。


……なんか、似ている。


以上。


******


※ゾルグ奪還日誌 第三十一回


別世界の節約勇者、確認。

情報収集中。


魔王様の様子:特に変わりなし。


シールの追加発注が十件。

魔王様の尊厳に対する計算が合わない。


以上。

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