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異世界最強の節約勇者 〜神も魔王も全員、俺の財布の敵〜  作者: 勇者ヨシ君
第2章:仲間が増えるたびに、なぜか黒字になった

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「ネネちゃんのそばにいたい」

四天王第三席が来た。理由はシンプルだった。シンプルすぎた。

 街道を、全員で歩いていた。


 アルスが腕立てしながらついてきている。一万回の追加分、まだ続いていた。


「……アルスよ。まだ腕立てをしているのか」とネネが言った。


「(ぜえ)習慣ぜえです!!師匠に言われました!!」


「いい心がけだ」と田中が言った。


(褒めました)


 エリュシアは内心で静かに処理した。


(腕立てで旅をしている勇者を、褒めました)


******


 前方から、のんびりとした足取りの女が近づいてきた。


 おっとりした顔。ふわふわした雰囲気。どう見ても四天王には見えない。


「あ~! ネネちゃん!! やっと会えたね~!!」


 ネネが目を細めた。


「……フィルナ」


「ついてきちゃった~! ずっとそばにいたかったから!」


 全員が止まった。


 フィルナの腰元で、小さな水晶玉が光った。


 通信だ。


 水晶玉の向こうに、ゾルグの顔が映った。


「フィルナ殿ーーーー!! なぜ合流してしまうのですかーーーー!! 魔王様を連れ帰ると言っていたではーーーー!!!」


「あ、ゾルグだ~! ゾルグも来る~?」


「来ません!!計画があります!!計画が!!!!」


 水晶玉が切れた。


 田中がフィルナを一秒、見た。


「何ができる」


「攻撃魔法、回復魔法、支援魔法、結界、探知、あとお料理もできますよ~!」


「全部か」


「全部です~!」


 田中が二秒、見た。


「使える。来い」


「やった~!!」


(四天王第三席が、理由()()でパーティに合流しました)


 エリュシアは内心で一呼吸置いた。


(攻撃・回復・支援・結界・探知・料理。全部できます)

(すごいです。私は料理がへたくそです)

(……魔王軍の要職が、また一つ抜けました)

(魔王軍、大丈夫でしょうか)

(いえ、大丈夫ではないと思います)

(でも田中さんが「来い」と言いました)

(もう、手遅れです)


******


 道中、見知らぬ露店の前を通りかかった。


 田中が一瞬、足を止めた。


 棚に野球盤が並んでおり、ネネシールが束で売られていた。田中とは無関係の、どこかの商人の店だ。棚札には小さく「”昭和工廠”製」と書いてあった。


「……いい名前だ」と田中が言った。


(ショウさんという方がいらっしゃいます)


 エリュシアは内心で静かに確認した。


(これだけ流通しているのは、あの方が立役者だと思います)

(やり手です)


「……我のシールがここにも」とネネが言った。


「いい流通だな」と田中が言った。満足そうだった。


 フィルナが目をキラキラと輝かせてシールを見ている。


「あ! ネネちゃんのシール!!かわいい~!!おじさん、全部ください!!」


(私のシールも、神官が祭壇に飾っています)


 エリュシアは内心で確認した。


(フィルナさんが大量購入しています)

(……恥ずかしいです)

(でも)

(うれしいです)

(『いえ、うれしくないですっ!!』)

(女神として何か言うべきです)

(言えません)

(なぜ言えないのですか私は!!)


「わたしもシールになりたい~! ネネちゃんみたいに!!」


 田中が懐から麻ひもを取り出した。


 全員が止まった。


「『採寸』だ。そこに立て」


「やった~!!」


 エリュシアが一歩、前に出た。


「……”私”が、後で測ります」


「俺がやる」


「いいえ、”私”が()()()()


 いつもより声に力が入っていた。


 田中がエリュシアを一秒見た。


「……そうか」


 麻ひもを引っ込めた。


(……勝ちました)


 エリュシアは内心で静かに確認した。


(何に勝ったのかは、考えないことにします)

(でももう一度、私が測られたい.....)

(いや、何を言ってるんですか私は)

(このことは、もう忘れましょう)

(永遠に)


******

 

 エリュシアがフィルナの計測をしていると、ペットのグラを見つけて目を輝かせた。


「わ~! 小さい翼竜!!かわいい~!!ネネちゃんのペット?」


 グラがフィルナをちらと見た。


 ネネの頭に乗り直した。


「資産だ。さわるな」と田中が言った。


「資産……」


「(腕立てしながら)師匠の(ぜえ)資産は(ぜえ)さわっちゃだめで(ぜえぜえ)すよ!!」


「腕立てしながら、喋らないでほしいな~……」


(フィルナさんが一番まともなことを言いました)


 エリュシアは内心で静かに同意した。


 グレインが腕組みしてフィルナを見ていた。


「グレインちゃ~ん! なんで来たの~?」


「……ゾルグには任せられない。それだけだ」


「なるほどね~!!」


 グレインが止まった。


「……お前に言われると、なぜかむかつくな」


「え~なんで~?」


(フィルナさんの「なるほどね」は、本当に理解した上で言っています)


 エリュシアは内心で整理した。


(グレインさんと真逆です)

(どちらが始末に負えないか、判断がつきません)


******


「行くぞ。ついて来い」


 田中が歩き出した。


 田中、エリュシア、ネネ、グレイン、フィルナ、グラ。アルスが腕立てしながら続く。


「ねえ、Aクエストってどこ行くの~?」


「行けばわかる」


「た~のしみ~!!」


(魔王軍の要職が三名、このパーティにいます)


 エリュシアは内心で静かに整理した。


(魔王城の固定費が今頃、大変なことになっていると思います)

(Aクエストが始まります)

(なぜかにぎやかです)

(……困った話です)

(でも......)


 声には出さなかった。


******


その頃、神界では―


 技術職の印章をつけた女神が、書類を差し出した。


「四天王第三席が田中のパーティに合流しました」


 ウルダが目を閉じた。


「……私は寛大です。許します」


「魔王城の要職が現在、三名不在です」


「……私は寛大です。許します」


「エリュシアシールの祭壇が、三か所に増えました」


「……私は、寛大……です」


「昭和工廠製品が王都圏外まで流通しています」


「……私は、寛、大、で……」


「田中関連の処理待ち書類が本日だけで三十一件になっています」


 主神の声が、かすかに震えていた。


「……わ、私は」


「ウルダ様?」


「か、か、か、”寛 大”、です」


 女神が、そっと書類を一枚追加した。


「あと野球盤トーナメントの優勝者に天界の祝福を授けてほしいという申請が王城から」


 天界に、しばらく沈黙が流れた。


(……SEGA神(わたし)は、どうすればよかったのか)


挿絵(By みてみん)

******


※神界業務日報 第三十回


本日の業務記録。


フィルナ加入:確認。理由:一言。

昭和工廠製品の流通:王都圏外まで確認済み。

祭壇:三か所に増えました。恥ずかしいです。うれし――うれしくないです。記録します。

採寸:私が担当することになりました。私ももう一度測ってほし......いえ、理由は書きません。永遠に。

フィルナさんの「なるほどね」:本当にわかっています。グレインはわかってません。アホです。記録しません。

魔王城の要職不在:三名。心配です。でも手遅れです。


以上です。


******


※ゾルグ奪還日誌 第三十回


フィルナ殿が合流した。

水晶玉越しに止めようとした。手を振られた。


計画書を書き直す。何度目かわからない。


魔王城の固定費が膨らんでいる。

要職が三名不在だ。

ゼフィーラ殿だけが、淡々と削減を続けている。


頼もしい。


……以上。


******


※フィルナのおたより 第一回


ネネちゃんに会えました!

グラちゃんにはさわれませんでした。資産だそうです。

シールは二十枚買えました。

グレインちゃんにむかつくと言われました。なるほどね。

田中さんは「いい心がけだ」と言っていました。腕立て勇者に。

わたしも腕立てしようかな~。


以上!

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