6/15
― 樫本晴夫について(1)/大学時代の知人の証言―
取材日時:事件発生から七日後
取材場所:都内喫茶店(昼)
「ああ……樫本ね。
知ってますよ、大学の頃」
「正直言うと、
目立たないやつでした」
「講義が終わると、
さっと帰るタイプ」
「飲み会とかも、
ほとんど来なかったんじゃないかな」
「でも、
頭は良かったですよ」
「試験前になると、
ノート貸してくれって
人が集まるくらい」
「本人は、
そういうの嫌そうでしたけど」
「研究者になりたいって
言ってましたね」
「理屈っぽくて、
現実より理論、
みたいな人」
「人付き合いが
下手だったのは、
まあ、事実です」
「空気読めないっていうか」
「悪気はないんだけど、
言わなくていいことを
言うタイプ」
「教授とも、
あんまり上手く
いってなかったと思います」
「議論になると、
引かないんですよ」
「若かったんでしょうね」
「だから……
今回の事件を聞いて、
驚いたかって言われると」
「うーん……
全く想像できなかった、
ってわけでもない」
「社会に馴染めなかった人、
って印象です」
「そういう人が、
どこかで
壊れることは、
あるんじゃないですか」




