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魔王が滅んだ翌日、戦場に転生した俺は“魔王の生まれ変わり”と勘違いされて育てられた  作者: おにわさ


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7/7

会議とすれ違う意図

 先日の勇者襲来から、魔族の中枢では連日のように会議が開かれていた。  人間は魔王様の存在に気付いた。であれば、どうにかして成長するまで守らなければならない。魔王城の移転など、様々な案が飛び交っていた。


 そんな会議に、まだ五歳の俺が同席しているのには理由があった。


(そう、これを機に“俺は魔王ではない”として我が身の安全を最優先させようと提案するため……!)


 だが、その案を出す前に結論は出てしまった。


「勇者は五歳児の魔王に敗北した。その事実を利用し、人間側で勇者への不信感を煽ろう」


 そう会議はまとまってしまったのだ。


(えっ……!?)


 何もしていない俺に攻撃してきた挙句、敗北したとなれば、確かに人間側の世論は変わるかもしれない。だが、それは世界に向けて「五歳で勇者を凌駕する魔王が誕生した」と宣戦布告しているようにしか聞こえないのだが……。


 俺の目論見は、開始早々に潰えてしまった。


 仕方なく適当に会議を聞いていると、配下の一人から質問が飛んできた。


「魔王様は、今後人間に対してどのようにするおつもりですか? 人間は何もせずともまた襲ってくるでしょう。その対策を含め、魔族一丸となって対抗するためにも方針の決定が欠かせません」


 俺は言葉に詰まった。  襲われる前なら、平和的にいこうと即答できただろう。だが、実際には襲われ、対話の余地もなかった。そんな相手に、どうやって平和的に接することができるのか……?


 思考がよぎったせいで、曖昧な返答になってしまった。


「……俺からは、特に何もしないかな」


 配下たちは戸惑った表情を見せる。  そりゃそうだ、今まで争っていた相手に対して“何もしない”と言われれば、不信感を抱かざるを得ない。


 その時、別の者が立ち上がった。


「魔王様、失礼ながら発言をさせていただきます。魔族達は今も尚、人間から迫害を受けています。それでも何もしないというのですか?」


 俺は返答に困った。だが、ふと口から言葉が零れた。


「人間は迫害する生き物だからな。魔族という敵を作っておかないと、人間同士で争いを始めてしまう。共通の敵を用意しておきたいんだろう。そんな奴らに構っていたら、一生攻撃され続けるだろう。  だが、みすみすやられてやるつもりもない。だから自衛の手段として、各々鍛えるなり、情報を取るなりすればいいんじゃないか?」


 会議場が静まり返った。


 しばらくしてから、重々しい声が響いた。


「……流石魔王様。慈悲深く、思慮深い。つまり今の魔王領は資源的にも余裕があり、防衛戦の方が有利である。よって“自衛のために国防力を高めよ”との御言葉ですね」


(ん? なんか思ってたのと違う方向に進んでないか……?)


――――――――――――――――――――――――――――――


 王都の神殿。

 勇者カイが深手を負い、帰還したという報は瞬く間に広がり、議場は混乱に包まれていた。


「馬鹿な……勇者が敗北しただと!?」

「しかも相手は“魔王”と呼ばれる五歳の子供だと……?」

「信じられぬ……では、真の脅威は今後さらに成長するのか……」


 神官たちはざわめき、各国の使者も顔色を変える。

 勇者本人は床に膝をつき、悔しげに拳を握り締めていた。


「……奴は、ただの魔族の子ではなかった。確かに災厄の王の波動を纏っていた……!」


 その言葉により、恐怖と不安は一気に現実味を帯びる。

 だが同時に、勇者に対する失望の声も上がり始めていた。


「勇者といえど万能ではないのだな……」

「まだ幼子の魔王に敗北するなど、民にどう説明するつもりだ」

「……もはや聖剣は通用しないのかもしれぬ」


 カイは顔を上げ、必死に訴える。


「違う! 奴は異界の魔物を召喚し、私を追い詰めたのだ! あれは常軌を逸していた!」


 だが、その言葉は「言い訳」と受け取られるばかりだった。

 こうして人間社会には、“勇者不信”と“新たな魔王への恐怖”が同時に広がっていった。



勇者撃退(※実際は魔獣のおかげ)の件以来、俺の周囲の空気は一変した。


 元々“次代の魔王”として持ち上げられていたけど、今はもうそれどころじゃない。廊下を歩けば、兵士や侍女が床にひれ伏す。遊び相手だった子供たちも、近寄るどころか目すら合わせなくなった。


(いやいやいや……俺、まだ五歳児だからな? おやつの時間にクッキー食って牛乳こぼすレベルなんだよ!?)


 それでも誰も突っ込んでくれない。むしろ「魔王様のお力を受け止めてくださるとは……牛乳ごときに……」と感涙される始末だ。


 ルア先生の授業も、以前よりさらに厳しさを増した。 「魔王様、勇者を退けたとはいえ、魔法の発動が遅すぎます。次は三秒以内で詠唱を完了させてください」 「いやいや、俺まだ九九も危うい年齢ですけど!?」


 ロゼリアも護衛を超え、もはや過保護の域に達していた。 「魔王様、食事前の毒見を十回は行いますので」 「そんなに毒盛られないでしょ!? てかクッキーだぞ!?」


 俺の“日常”は、いつの間にか完全にズレてしまった。欲しかったのは平穏だったはずなのに、周囲が勝手に期待を膨らませ、俺を重く縛り付けていく。


(……俺、もしかして、この世界で一番自由がないのでは……?)


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