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魔王が滅んだ翌日、戦場に転生した俺は“魔王の生まれ変わり”と勘違いされて育てられた  作者: おにわさ


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4/7

勇者と魔王、森で出会う

 その日、俺はフィアと一緒に森の奥で虫取りをしていた。  さすがに護衛たちを遠ざけすぎると怒られるのだが、今日はロゼリアが別任務で不在だったため、少し羽を伸ばしていた。


「見て見て、ノクス! でっかいカブトだよ!」 「お、おお……これは……うん、すごいな……」


 正直、虫はそんなに得意じゃない。  けれどフィアの楽しそうな笑顔を見ていると、なんだかんだで付き合ってしまう。


 ――と、その時だった。


 森の向こう側、少し開けた場所に、誰かが立っているのが見えた。  銀の鎧に身を包み、背にはまばゆい光を帯びた剣。  年は十代半ば、けれどその佇まいには並々ならぬ威圧感があった。


「……あれ、人間?」


 フィアが小さく呟いた。


 そして、俺とその少年の目が合った。


 数秒の静寂。


 その後に来たのは、閃光だった。


 勇者カイが抜いたのは、聖剣〈アストリア〉。  斬撃と同時に放たれた光が、俺たちの頭上をかすめ、背後の木を真っ二つに裂いた。


「っのわああああっ!? なんでいきなり攻撃!?」


「下がって、ノクス!」


 フィアが俺の腕を引いて森の陰に飛び込む。  続けて護衛たちが駆けつけ、俺を囲うように陣形を取った。


 勇者カイは、剣を構えたまま静かに言った。


「……やはり、ただの魔族の子ではないな。光と闇、両方の気配……災厄の王か」


「え、いや、人間側ってそんな属性まで検知できる装置あったっけ!?」


「俺は勇者だ。そんな儀式に頼らなくたって、魔力の波動で“なんとなく”わかる」


「普通は魔力波は隠すものなんだが随分と俺を舐めてくれたな、災厄の王よ」


(違うんだよ、知らなかっただけなんだよぉおおお!)


 だが俺はふと思った。


(待てよ……この勇者、説得できれば人間の領地に連れて行ってもらえるんじゃね?) (そうすれば“魔王”だとか言われずに済む……!)


 以前読んだ書物に、“勇者カイは転生者の血を引く”とあったのを思い出す。  もしかしたら、こいつも同じような境遇かもしれない。


(よし、試してみよう! 転生者なら知ってるはずだ!)


「バス! 電車! 電気! ビル! コンロ! ライター! 日本刀! ジャパン!」


 ……俺は、必死に単語を並べ立てた。


 しかしカイは怪訝な表情で眉をひそめた。


「……何を言っている? 何かの魔法か? いや、だが魔力は感じられない……」


(全然通じねえぇぇぇぇ!)


「おかしいな、転生者じゃねーのか!? あの本どうなってんだ!?」


 俺がぼそっと呟いた言葉に、カイがふと反応した。


「転生者は……私の祖父だが、どうかしたか?」


(あっ、そっか……冷静に考えたらあの本ちょっと古かったし……!)


 わずかな望みは砕かれた。


 そして、俺たちがそんなやり取りをしている間に――


 護衛部隊が、完全に包囲陣形を整えていた。


(くそっ、しまった……! 時間稼ぎか……!」


(いや、ほんとそんなつもりはなかったんだけど……さてはこの勇者、ちょっとバカだな……)


 こうして、俺の“人間との初コンタクト作戦”は、あえなく失敗に終わったのだった。


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