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魔王が滅んだ翌日、戦場に転生した俺は“魔王の生まれ変わり”と勘違いされて育てられた  作者: おにわさ


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1/7

プロローグ

 俺が目を覚ましたとき、そこは血と硝煙の匂いが立ち込める瓦礫の中だった。


 ……いや、正確には「目を開けた」と言うべきか。  なにせ、体がまったく動かない。  手足は短くてぷにぷに、声はうまく出ない、視界もぼやけている。


(……お、おい。なんだこの体……ちっちゃくない? いや、俺赤ちゃん!?)


 混乱と恐怖の中で俺は、自分の記憶を探った。  思い出すのは、終電帰りのホーム、暗い線路、視界に迫る光。  そうだ、俺は死んだんだ。  ブラック企業勤めの限界社畜、睡眠不足でふらついた足が線路に落ち――


 その後のことは覚えていない。


 だが目を開けた俺がいたのは、なぜか異世界っぽい雰囲気の戦場のど真ん中。  しかも赤ん坊の体で、地面に転がっていた。


 もはやテンプレートを疑うレベルの異世界転生。  だが、事態はさらにテンプレの“斜め上”をいっていた。


 魔族らしき存在が、俺の前に現れたのだ。


 黒衣をまとい、角と赤い目を持つその魔族は、俺の顔を見るなり絶句した。  そして、ぶつぶつと何かを呟く。


「この魔力の残滓……いや、これは……まさか……」


(いや、まさかってなんだよ。なんで赤ちゃん相手にそんな重たい空気出してんの)


「魔王様……! 魔王様が……ご転生なされた……!」


(はああああああ!?)


 その魔族は膝をつき、俺をそっと抱き上げる。  ボロボロの布でくるまれた俺の体を、大切そうに見つめるその瞳は、まるで救世主を拝む信徒のようだった。


 やがて、その周囲にも魔族たちが続々と集まってきた。  皆一様に顔を蒼白にしながら、震える声で叫んだ。


「これは……魔王様の波動……」 「転生の予言が……本当に……」 「我らが主、再臨せり!」


 おい待て、誰が魔王だ。  俺はただの社畜だぞ。魔王の“ま”の字も知らねぇよ!


 だが、俺の心の叫びなど赤ん坊の喃語にしかならない。


「うー……あ、あばば……」


「おお……! お怒りか……!」 「なんと雄々しき泣き声……!」


 違う! 違うから!  なんで泣いたら威厳があるって話になるんだよ!


 魔族たちは俺を中心に、跪き、祈り、感涙し、誰かは気絶すらしていた。


(やばい。この世界、誤解が……深すぎる……)


 こうして俺は、“魔王ノクス様”の生まれ変わりとして担ぎ上げられることになった。


 しかも最悪なことに、この状況を否定できる方法が一つもなかった。  何せ俺は、喋れない、動けない、泣くか笑うかの二択しか表現手段がない赤ちゃんボディ。


 地球では社畜、異世界では偽魔王。  なぜ俺の人生は、こうも選択肢に恵まれないのか。


 けれども――  この瞬間から、俺の“赤ちゃん魔王”としての第二の人生が始まった。


 そして、それは世界を巻き込む、壮大な誤解の物語の幕開けでもあった。

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