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【更新中】過去の記憶を失くした転生魔法姫は、思い出したら世界が終わることを知らずにいる  作者: 香坂くら
その五 不条理設定変更

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049 設定変更そのなな


 昼食用の焼きそばパンを渡され、「気遣われた」と気付く。


「ごめんなさい、ヒラさん。最近ちょっと情緒不安定気味で……」

「遠慮なく、溜まったものをぶちまけてよ。殴るなり蹴るなり、何なりと」

「――じゃあ御言葉に甘えて……ってなるかーい。わたし、そんなに暴力女に見える?」

「あぁ安心した。ちょっとくらいは元気を出せるんだね」


 ん? わたし、もしかしておちょくられてた?


「あのー。んじゃ、悩み聞いてもらっていい? つまりはさ、わたしは一体誰なんでしょう? と。わたしの名前、答えられる?」

「――三澄……リトさん?」

「ブー外れ。わたしは、暗闇姫ハナヲ。だけどさ。みーんな、わたしのコトを三澄って呼ぶんやんねぇ、コレってヘンなのはわたし? それとも他の人ら?」

「あー、悩みってのはそっち系かぁ」


 そっち系ってナニ? やっぱバカにされてるの? それとも親身になろうとしてくれてんのかな?


「あのさ。ここって魔法学校やんね? なんで男子がいんの?」

「はは……男子は魔法を習っちゃいけないと?」

「そーゆーハナシではなくって。そもそも男子と女子は仲が悪くて、別々の国に暮らしてるんやんね? いつの間に仲良く共学してんの? って言いたいの」


 うーん……と考え込むキョウちゃん。

 ……アレ?

 わたしって。

 この人のコト、いま、『キョウちゃん』って……。


「どうかした?」

「――あ? いえ、別に……」


 ヒラ君。キョウちゃん。

 あれぇ、キョウちゃんの方が何故かしっくり来る。

 ええい! いっそ許可取っちゃえ!


「ねぇ。いきなり馴れ馴れしいんやけども……。ヒラ君のコト、キョウちゃんって呼んでいい? ……アカン?」

「構わないよ。じゃあボクも君の事を……アレ?」

「……どうかした?」

「いや……別に……何も……」


 黙り込むキョウちゃん。えらく考え込んでいる様子。


「あのさ、わたしらって昔、あったコトってある?」

「幼馴染だったかって話? さぁゴメン、どうだろ?」

「そーゆーのじゃなくってさ。前に一緒に戦ったコトがあるかって……」

「戦う? 誰と?」


 あ、アハ。

 やんね、戦うって何だよ! わたし、やっぱだいぶオカシクなってる。


「あーいや。忘れて」


 また考え込んでる、キョウちゃん。


「ハナヲ……ちゃん」

「はいよ……って、――え? 今わたしをハナヲって呼んだ?」

「……うん。呼んだ」


 ビックリし焼きそばパンを落としかける。

 耳に届く午後の予鈴。


「あの……わたし、行くね」

「ハナヲちゃん」

「な、なに?」


 真剣になった彼の目と合った。

 彼が言おうとしている「何か」を待つ。


「ハナヲちゃん。――暗闇姫ハナヲちゃん。防人、蜘蛛の糸事業……こんな単語、聞いたことはあるかい?」


 ズキン。

 アタマの奥底が熱っぽく痛んだ。


「うーんワカラン、ごめん。でも何だか引っ掛かる」

「――だよね。ボクも同じだ」


 走り出す背がもう一度止められた。


「追い掛けて来ちゃダメだよ?」

「は、はぁ?」


 追い掛ける? 何のコト?

 何が言いたいのか、自分でも分かっていない様子のキョウちゃん。

 けど、首を振るわたし。自分でもよく分かってない、わたし。


 静止するわたしたち。次に切り出すのはわたし。わたしの番。


「――イヤや。追い掛けるよ。だって心配やもん、キョウちゃんのコト」


 え?

 わたし、ナニゆってんだ? 台本に書かれたセリフのように。演じる役者のように。


「56」

「ごじゅうろく?」

「一度、ココロクルリさんに尋ねてみて? この数字がボクの頭から離れないんだ」


 56……?

 うーん?


「分かった。いっぺんルリさまに聞いてみる」

「……こんなボクを。ハナヲちゃんを裏切ったボクを。心配してくれてありがとう」

「何言われようと追いかけるからね。待っててね」


 お互いに、理解しない会話で通じ合いながら、左右に分かれた。

 午後の授業は出ず、まっすぐ家に戻った。


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