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【更新中】過去の記憶を失くした転生魔法姫は、思い出したら世界が終わることを知らずにいる  作者: 香坂くら
その五 不条理設定変更

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047 設定変更そのご


 自身でも気がついて無い内面をさらけ出すことのできる魔法、【内視鏡(ディヴゲ)】。個体スキルとして自在に使いこなすのは、年下少女の【かんなぎリン】ちゃん。


 以前に使ってもらったコトのあるこの魔法を、もう一度試してほしいと思い立ち彼女を訪ねた。


「かんなぎリンですか。今日は風邪ひいて休んでますよ?」


 対応してくれたシンクハーフ学年主任は物珍しそうにわたしをジロジロ眺めて言った。品定めとゆーか、かなーり興味津々の目や。取って喰われそうに感じてると「折角ですのでお茶でもしますか?」 と、研究室内に招き入れてくれた。

 そー言いながらなかなか入れてくれないお茶を待っていると、「わたしは緑茶にしてください」と衝立越しにオーダーされ、「あーわたしが入れるのかぁ」と得心。「はいはい」とミーティングコーナーを立ち、学年主任の横をすり抜けて給湯コーナーに入った。


「学年主任。学生をしながら先生をするのって、けっこう大変じゃないですか?」


 少数であるが、学生の中には学校責任者としての立場になり、専門分野の授業をしたり、教育指導したり、学校運営に関わったり、はたまた新規魔法の研究や開発をしたり、フツーに生徒として別の教師のゼミに参加したり、単位を取ったりしてるんである。(以前に紹介した警察や地域自治への貢献もそう。あぁ、まさに何でも屋やね)

 魔法学校は人材不足なのか、アレグッシブなのか、革新的なのか、ちょっと大学院に似ているが、とにかくそうゆう指導体制を敷いて運営してるんである。


「んー? 生活があるから。……と言うより発明品を作るのにお金がかかるから」


 それはありますよね。ところで幾らもらってるんだろう。


「――で、何の用で今日は?」


 事情を話し、かんなぎリンちゃんにぜひ内視鏡(ディヴゲ)の魔法をかけてもらいたいと嘆願した。そしたら学年主任、「あの子にそんな能力は無いですよ?」 と淡々と、にべもなく否定された。


「もしそんな能力があれば、わたしが放っておきませんね。ただちに解剖してその原理を突き止めます」

「こっわ」

「笑うところですよ」

「ビビリます。……お邪魔しました」

「待って。ひとつ忘れ物があります」

「な、何ですか?」


 チケットのような物を渡された。【おともだち券】と手書きされていた。


「これは……?」

「とりま今晩、お泊りさせていただきます。ココロクルリにも伝えておいてください。――あ、夜ご飯はトンカツでお願いします」


 ……グーの音も出ない。


◆◆


「――ひとつお聞きしたいんですが」

「何ですか?」

(ノワル)姫という人を知ってますか?」

「副菜ですが、別にピーマンは苦手ではないです」

「晩ご飯の話はしてません。黒姫のコトです。シンクハーフ学年主任はご存じですか?」


 間を置いた学年主任は紅潮したカオをちょっと傾け、


「彼女は幼馴染です。とっても良い子です」


 と答えた。柔らかい目になった。


「その、黒姫さまはどこに住んでるんですか?」

「今は勇者の下で修業に明け暮れています。トンネルの向こう側にある街で暮らしてますよ。彼女にはしょっちゅう会いに出かけてます。仕事サボって。……タルイし」

「仕事サボって。フーン……」


 余計な一言も含まれていたが、だいたい分かった。頭を下げて部屋を出て行こうとした。学年主任に手を握られた。


「わたしは。しーたん、です。今後はそー呼んでください」

「し……しーたん」


 コクンと首肯し、退室。なんでか知らんけど、カオが熱くなった。


◆◆


 家に帰るとルリさまが、わたしの部屋である一階の和室でテレビを見ていた。


「あ。お帰り」

「今日このあと、シンクハーフ学年主任が遊びに来るそうです」

「今日も? 毎日毎日ヒマねぇ。別に構わないけど」

「毎日、ですか? そーなんですか? んーそうやったっけ?」


 フ……とルリさま、わたしを見た。


「――あなた、認知症じゃないでしょうね? まさかお昼に食べたメニューも思い出せないとか?」

「購買部のたまごサンドです、失礼な」


 アハハとテレビのギャグに笑い声を立てるルリさま。わたしの返事を聞いてない。


「リト、遅いですね。もうとっくにお店、終わってるはずやのに……」

「はん?」


 人の話を聞け―。

 リトがゼンゼン帰って来ないので心配だと繰り返し、バイト先の喫茶店に迎えに行くと告げる。


 そしたら。

 おでこに手を当てられた。


「――あなた、ホントにだいじょうぶ?」

「なにがッ?!」

「何がって――リトはあなたじゃない?」


 しっかりしてよ。ルリさまのそのわたしを気遣う不安げなセリフは、わたしの耳には届かなかった。


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