044 設定変更そのに
魔法っ子たちのドタバタ地味系・日常系・ファンタジー
はじまりー
「わたし、バイトがしたいです。紹介してください」
唐突にリトが懇願するのでワケを尋ねるとモジモジとするばかりでなかなか答えない。
「ま、いーよ。バイトならルリさまに頼んだげる」
「ホントですかっ? ありがとうございます!」
「けどもさ、時給はそんなに高くないよ? いいの? お金貯めたいんやったらもう少し割のいいバイトを……」
後頭部に強烈な痛み。ルリさまやった。余計なコト言わんでいいと怒られた。つまりは人材不足に悩んでると。とゆーコトで即決採用なんやろ。
「バイトってわたし、経験なくって。だからハナヲが働いてる所がいいって言うか」「そういう動機もアリやんね、ね? ルリさま?」
「喫茶店? って未経験なんですが、大丈夫でしょうか?」
「成せばなるんじゃない? ま、少なくともハナヲよかマシでしょ」
あーそれ、ヒドイですっ。
そうしてリトのバイト生活が始まった。勉強とバイトの両立は大変。けども一週間もしたら、わたしよかテキパキと仕事をこなすようになった。最初の頃は先輩面していい気になってたが、あっちゅー間にリトの方がベテランっぽくなり、逆に教えてもらうコトが増えちゃって。まったくタジタジ。
「実は学校の先輩、誕生日が近づいてて」
「うんん? えーとォ。やから、それで……? 何がどーしたん?」
「壊滅的にニブチンね、アンタ! バイトで稼いだお金で誕生日プレゼントを贈りたいってんのよ、リトは!」
「はう、あうう! ココロクルリ先輩、はっきり言いますね。 ……そ、その通りですが」
日頃お世話になってる部活の先輩がいて。ふーむナルホド。その人の誕生日に贈り物がしたいと。そーゆーコトか。――うむうむ青春じゃ。
「わーった! わたしも応援しちゃる。……けどさぁ、ひとつお願いがあんねんなぁ、ぐしし」
「変な笑いやめてください。……分かりましたよ、相手が誰か。ちゃんと白状しますんで一緒に行きましょう。その代わり、ホンットーに応援してくださいよ」
リトのお目当ての人はわたしの勘通り、剣道部の……。
「えっ? そっちなん?!」
てっきりアキ・サネミツさんかと思ったのに。
「ヒラ君の方が良いって……その……変わってるね」
ヒラ・ノリツネ君。わたしらの一個上の先輩。
確かに彼、カワイイ顔してるけど。ちょっと頼りなさげやし、アキさんのような精悍さってか、キリッとした覇気が無いよ? いっつもニコニコしてるだけなんだよね。リトの好みがワカンナイよ。
「……へー。はー。そーなんや。意外やぁ」
「どー思います? わたし、剣道部のマネージャーがしたいんですよね。そうしたら部活の日は必ずヒラ先輩と顔を合わせられるし。……ムリかなぁ?」
「えーとぉ……どーやろーねぇ……」
「顧問の先生に相談してみようかな。――あ、もちろんバイト期間が終わってからだけど」
別にいーんやない? と答えたわたし、男子らの練習風景を覗いてやろうと思ってたコトも忘れ、さっさと立ち去りかけた。
「ちょちょ。いったいどこ行くんですかっ?」
「用事思い出したから帰る。マネージャー、頑張ってなー」
背中にブツクサ文句ぶつけられたがムシ。
だって。
わたし。
何だか急にヤな気分になっちったんやもん。
ナゼって? 分かんないけど、しょうがないでしょ。
「けどもリトがヒラ君に……」
どーゆーキッカケでキョウミを持っちゃったんやろ……?
あぁ、アレか?
――そう。アレは一週間ほど前の話。
リト、学校の帰りに他校の男子ら数人から声を掛けられた。ここまでは割かしありがちな話で、次の日に報告を受けたわたしも話半分に聞いてたんやが、そこに、あの例の、リトのお姉ちゃんのカレシが割り込んできて、その男子たちを追い払ったんやな……。(実際、ナンパ男子たちをタコ殴りにしたって話。暴力はアカンて)
で、その、リトのお姉ちゃんのカレシとやらが、なかなか厄介なヤツで。
翌日に顔を合わせた時に「助けたお礼にデートしろ」ってリトに迫って来たらしい。繰り返すがお姉ちゃんってカノジョがいるクセにやで?
――で。
そん時はわたし、たまたまリトと帰り一緒やったんやな。わたしは当然の流れでリトを庇ってさ、何とか彼女をその場から逃したんやけど、その代わりに「お前が付き合え」と。アホなコトにそう言うワケよ。
それがさ。あんまししつこくて。その場逃れで曖昧にOKしちゃったんやな。そしたら待ち合わせの日時まで一方的に告げてとっとと去られた。
――ん?
で、そんで、どーなったかって?
結局ソイツ、約束の日に待ち合わせの場所に来んかったんやんね。来たら来たで火弾ぶつけたろーって、心に鎧着込んで身構えてたんやが。
甚だナゾに思ってたら、数日後にリトからこんな話を聞いた。
そのカレシ、わっざわざ魔法学校の校門前でリトを待ち伏せしてて。(わたしとのデートもムリヤリ約束しておきながら)、そりゃリトとしては全力でキョヒするよ。そしたら街なかに関わらず暴れ出してリトを追いかけ回して。
そこへ偶然通りかかったヒラ君に助けられたと。
アイツ、ヒラ君に因縁ふっかけて殴りかかって返り討ちにあって。さらに逆上しちゃって、なんと凶器を持ち出したもんやから、手加減しなくなったヒラ君に足腰立たんほどにコテンパンにのされたそうで。
――と、まぁ、それからやなぁ。リトの様子がヘンになったんは。
じゃあそれで、なんでまた、わたしの気持ちがざわつくのか……とゆーと、ホントーにワカラン。
リトを応援するって言ってしまった手前、それを前面に押し出すわけにも、その理由を自分なりに追及するわけにもいかず、数日間をモヤモヤクヨクヨの固まりで過ごしたんでした。
――あのナンパ事件からちょうど10日後。朝、リトの目が腫れていた。
「ヒラさん、カノジョがいたんです。うう……エエン……」
よろめくリトに胸を貸しながら、わたしは……。
わたしはその日、どう過ごしたのか、ゼンゼン思い出せん。
とにかくひたすら、リトをなぐさめてたような……気がするんやんね。
彼にカノジョがいたなんて……。
そう、なんや。
カノジョ……いたんか……。
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