042 ふたたびアカデミー ☆
試験期間が終わると、ルリ師匠は自分の部屋にこもり身支度を始めた。
「なーに? どうだったの、試験?」
「赤点ギリギリ。期末に賭けます。それよりどーしたんですか?」
「決まってるでしょ、異世界……に行くのよ。シンクハーフと一緒に」
異世界ってあの、デュクラスの国を経由した……?
「ずっと疑問やったんですが。どーしてお二人はそこまであの世界にこだわってんですか? そりゃわたしだって、そのうちに探索はしたいとは思ってるけども……」
「……わたしたち、どうしても会わなきゃいけないヤツがいるのよ。あの世界に」
ぶっきらぼうながら、問いにはちゃんと答えてくれるルリさまに、隠し事をするつもりはないんだと確信したわたし。
「それって、誰なの?」
と単刀直入に質問した。
荷造りの手を止めたルリさまは、
「――カマドウマ」
「ヒッ! カマドウマ?!」
「ウソよ。勇者コレット」
その名前を聞いた途端、何故か頭痛がした。
「ど、どうしたの? 大丈夫?」
「あの……ルリさま。いえ、ルリ師匠。そこにわたしもついてって構いませんか?」
◆◆
学校長に断って、わたしとリト、かんなぎリンちゃんを加えたメンバーで電車に乗った。
リーダーはシンクハーフ学年主任、万が一生じた場合の戦闘指揮はルリ師匠が執ることになった。
デュクラスの国へは定期の交易と言う表向きで、前回と同じく例のアカデミーに立ち寄ってシンクハーフさんの発明珍品を売る手はずになっている。シンクハーフさんがリンちゃんに商品の売れ行きや在庫を聞いていたのは、それらをどれだけ新調しなければならないかを把握したいためやったらしいと後になって知った。
駅に到着。今回は堂々と入国を果たした。
今回は前回のような男装はしていない。もちろん協議した結果、「メンドーやし、もういっか」と結論づけたんである。
故に堂々と魔法使のなりをしたわたしらは自然、目立った。敵愾心剥き出しでガンを飛ばしてくる者もいれば、直接的に突っかかって来る輩もいた。
けどもシンクハーフさんが例の転生魔法の使い手だと知ると、一定の礼儀をわきまえ妙な手出しをする者はいなくなった。怒らせると虫にされると間違った情報が流布したせいもある。とにかくメンドーくさいトラブルがちょっとでも減るのは有り難いよ。
むしろ厄介なのは、やたらわたしらに馴れ馴れしくして来る連中で、
「魔法使の生態が知りたい」
とか、
「魔法を習いたい」
とか、何かと理由をつけて話しかけて来る。ありていに言えば、ナンパ?
わたしらは一様にその手の免疫がないので照れたり怒鳴ったり、無視したりしてたんやがわたしの肩に手を回した輩に問答無用の攻撃魔法をお見舞いしたルリさまと、反射的に激高したオトコどもとの間であわや一発触発の空気になったりしたのは正直ビビった。
そこは何とリトがオトコたち一人一人に頭を下げ、自分たち用に持参した手作りのお菓子袋を手頭で渡しお詫びしたコトで一気に友好ムードに逆戻りした。
それは別にリトが意図して行った態度でなく、真面目で誠実な彼女やからこそ相手に刺さった行為やった。
とにかくもわたしらは予定通り商品をさばきつつ例の格技場に隣接された男子更衣室に何とか辿り着き、侵入にも成功して、ようやく異世界への扉を再び開けることが出来たんである。
20251129異世界の扉ハナヲとリト




