010 ココロクルリさんと部屋を取り合い、対話で解決した?
ココロクルリさんが突然こんなことを言い出した。
「2階の間取りを変えたいんだけど?」
「それってリフォームしたいってコト?」
「りふぉ……? 中国語? で言わないで。わざと知らない言葉つかってバカにするつもりね?」
「ルリちゃん。リフォームって和製の英語だにゃ。このばあい、改築するってイミだよ?」
マカロン指摘乙。
ココロクルリさん、耳まで真っ赤になった。
思いの外ダメージが大きかったようで、マル虫のようになってしまった。
こりゃ……どーにかしてリカバリーしてやらんと、ドハマリしそうな予感。いきなりリセットされる可能性だってある。
「……あ、あーと! そーいやマカロンはココロクルリ師匠のコトを『ルリちゃん』って呼んでるね。ふたりがとっても親しそうでほっこりするよー」
「ルリちゃんってさぁ。偉いクセに、ときどきすごーくおバカになる時があるにゃあ。だからつい、『ちゃん付け』しちゃうにゃん」
わああっ。余計なコトを、バカチンがああぁっ!
「え、えーと。ココロクルリさん……さ、ところでどうして改築したくなったん?」
「えーとね……」
「うんうん?」
「……して」
「――え?」
「……付けして尊敬して……欲しい」
「うーん?」
聞こえないよぉ。
「ごめん。なんて?」
「だからっ! ――様付けして、わたしを崇めてッ」
はひ?
あ、あがめて?
ココロクルリさんを?
「……んーと。じゃあ、――こ、ココロクルリ……さま?」
「言いにくくないかにゃ?」
「んじゃ、ココロさま」
「ルリさまでいいんじゃにゃい?」
チラ……と、こっちを窺う彼女。想像以上に嬉しそう!
なんなの、このシチュ。
「ルリちゃん、メンヘラがすぎるニャ、ハナヲが困ってるにゃ!」
「いーや、いやいや困ってない、困ってないよっ! うんうんルリさま、じゃあこれからルリさまって呼ばせて頂きます!」
「やめてよ、恥ずかしい!」
「どっちなんだ!」
「つまりは『そうしてくれ』って言ってるんだにゃ」
わっかるかーい!
「――で? あらためて聞きますが、ルリさまは、なして改築がしたいんですか?」
「決まってるでしょ。部屋が狭いから、広ーく大きくして欲しいの!」
「部屋? ひょっとしてルリさまの?」
「あなたの部屋を大きくしてどーするのよ!」
わー……。
「でもさー。御言葉ですが、だいたいさぁ、ルリさまの部屋が家の中で一番大きいんやで?」
ハッと立ち直ったココロクルリさん――改めルリ・さま。
「もーしょーがないなぁ」
ちょっと来てよと手を引かれた。
さっきまでの遣り取りを忘れたかのような溌溂さ。マジ機嫌回復したの?
見せつけられたのは彼女の部屋。
所せましとモノがあふれている。ダンボール箱の量も異常。狂ってる。
片そうと努力したようだが、ケツを割った(=挫折した)模様。
得意の転移魔法も巧く使いこなせなかったご様子。そりゃこれだけの物量と種類があればねー。脳内こんがらかるよね。
「ルリさま。師匠。ルリさまの魔法で部屋の改装をしたらいいやん? あの町ごとそっくり改造したように」
「はあぁ? わたし、町の改造なんてしてないし! わたしが出来るのは転移。モノの改変なんて出来ないの!」
ふーん……そーなんや。
けども転移のたびに少しずつ町や家が変化してたんやけどなぁ……?
「……じ、じゃあダレが細部のディテールをイジったぽいの?」
「ハナヲー。細部とディテェールの意味が被ってるニャー」
「知らないわよ! サラとかじゃない? それより部屋、どーすんのよう」
わたしは提案した。
隣の部屋との壁を何処かに転移したらどうかと。
そうしたら一間になって部屋が広くなるよと。
「あっそれ、ナイスアイディア!」
結果的に、わたしは提案したコトを後悔した。
そうするコトでわたしの勉強部屋が無くなってしまったから。
2階の二間は一間になり、ルリさまの占領下に置かれた。
わたしは1階の和室に逃げ込んだんやった。
武力行使、ダメ。ゼッタイ!




