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ガーディアン  作者: 月神世一
ガーディアン入隊

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84/85

ep 50

【ナーガの襲撃】

ワカバと積荷を護衛し、デュフランへの街道を進む「戦乙女・ローズ」の一行。ラビィが先行して周囲を警戒し、リューネとアミュがワカバの近くを、ドラゴが力強く荷車を押しながら進む。隊列にも慣れ、順調に旅は進んでいるかのように思えた。

しかし、森を抜けて少し開けた街道に出た時だった。

「リューネ! 前方、何か争ってる音がする!」

先行していたラビィが、険しい表情で駆け戻ってきた。

「悲鳴と……蛇みたいな、シャーッていう音! たぶん、誰かがモンスターに襲われてる!」

「なんだって!?」

リューネたちが警戒して前方を窺うと、道の少し先で、数人の旅人(商人風の男たちと、荷物を運ぶ従者たちだ)が、緑色の鱗に覆われた半人半蛇の怪物――ナーガ――の集団に襲われているのが見えた! ナーガたちは、鋭い毒牙を剥き出しにし、手にした曲刀や、その長い尾で攻撃を仕掛けている。旅人たちは必死に応戦しているが、明らかに劣勢で、次々と倒れていく!

「どうする、リューネ?」ラビィが問いかける。目の前で人が襲われている。しかし、自分たちの最優先任務はワカバの護衛だ。下手に介入すれば、依頼主に危険が及ぶかもしれない。

(でも……見過ごせない!)

リューネの答えは一瞬だった。

「助けよう! ワカバさん、申し訳ありませんが、荷車の陰に隠れていてください! 絶対に守りますから!」

「えっ、でも……!」ワカバが戸惑うのを背に、リューネは剣を抜いた。

「ラビィ、援護を! ドラゴ、行くよ!」

「了解!」

「任せるダゴ!」

リューネは、襲われている旅人たちとナーガの間に割って入るように突撃し、一番近くにいたナーガに斬りかかった!

「はあっ!」

奇襲に近い形となり、ナーガは腕に浅手ながらも一撃を受ける!

「シャーッ!(邪魔者だ!)」

他のナーガたちが、リューネに気づき、その蛇のような瞳で睨みつける! ドラゴも雄叫びを上げて両手斧で襲いかかる! ラビィは後方から的確に矢を放ち、ナーガたちの動きを牽制する!

しかし、ナーガは手強かった。その鱗は硬く、動きは蛇のように素早く、予測しづらい。曲刀による斬撃や、強力な尾による薙ぎ払いに、リューネとドラゴも苦戦を強いられる。一進一退の攻防が続いた。

「くっ……! 多いし、すばしっこい……!」

「このままじゃ、ジリ貧だゴ!」

その時、後方からアミュの声が響いた。

「皆さん、援護します! 大地の恵みよ、かの蛇足を絡め捕れ! エンタングル・バイン!」

アミュが杖を掲げると、ナーガたちの足元(尾の付け根あたり)の地面から、いばらの絡んだ太いツタが勢いよく伸び上がり、数体のナーガの動きを封じ込めた!

「シャアアア!?(何だこれは!?)」

動きを封じられ、ナーガたちが混乱する!

「リューネ、今だ!」アミュが叫ぶ!

「はい!」

リューネは、動きの止まった一体のナーガに狙いを定める! 盾を相手の顔面に叩きつけて怯ませると、がら空きになった心臓部へ、渾身の力で剣を突き刺した!

「これで!」

ナーガは断末魔の叫びも上げられず、崩れ落ちた。

数が減り、さらに仲間が拘束されているのを見て、残りのナーガたちは動揺し始めた。

「ドラゴ!」

「おうダゴ!」

リューネは、ドラゴと戦っていたナーガの背後へと回り込み、剣で斬りつけた! 注意がリューネに向いた瞬間、

「今だゴ!」

ドラゴがその隙を見逃さず、両手斧を脳天に叩き割った!

「シャ……ッ……!」

最後のナーガも絶命し、辺りには静寂が戻った。

「はぁ……はぁ……な、何とか……なったね……」

リューネは息を切らしながら、剣を杖代わりに膝をついた。ラビィとドラゴも、疲労困憊といった様子だ。アミュも、強力な魔法を使ったためか、少し顔色が悪い。

「ワカバさん! 大丈夫ですか!?」

リューネが振り返ると、ワカバが荷車の陰から恐る恐る顔を出した。

「は、はい……。皆様のおかげで……」

助けられた旅人たちも、リューネたちに駆け寄り、何度も何度も頭を下げて感謝の言葉を述べた。

「ありがとうございました! あなた方がいなければ、我々は……!」

「このご恩は決して忘れません!」

「いえ……当然のことをしたまでです」リューネは安堵の表情で答えた。

その後、三人は手際よくナーガの死体を解体し、素材(鱗、毒牙、もしかしたら魔石など)を回収した。

「もしよろしければ、これらの素材、フォレスト商会で買い取らせていただけますか? きっと良い値がつきますわ」

ワカバが商人としての顔を見せ、そう申し出てくれた。これもまた、ガーディアンの収入源となる。

【キャンプにて】

その日は、戦闘による疲労も考慮し、少し早めに街道脇の安全な場所でキャンプを張ることにした。焚火を囲み、簡単な食事をとる。助けた旅人たちから分けてもらった上等な干し肉が、疲れた体に染み渡った。

食事が一段落し、片付けをしていると、アミュが静かに、しかし真剣な眼差しでリューネに向き直った。

「リューネさん」

「はい、なんでしょう、アミュさん?」

「今日の戦闘、見事でした。皆さんの連携も素晴らしかったです。……ですが」アミュは言葉を選びながら続けた。「少し、苦言を呈してもよろしいでしょうか」

「え……?」リューネは、予期せぬ言葉に少し戸惑った。ラビィとドラゴも、会話に気づき、手を止めて耳を傾けている。

「私たちの第一の任務は、ワカバ様と積荷を、無事にデュフランまで送り届けることです」アミュは静かに言った。「今回、他の旅人の方々をお助けしたのは、ガーディアンとして立派な行いだと思います。ですが、それは結果的に、ワカバ様を危険に晒す行為でもありました。もし、あのナーガがもっと強力だったら? もし、私たちが返り討ちにあっていたら? ワカバ様はどうなっていたでしょう?」

アミュの言葉は、穏やかだが、的を射ていた。

「今回は、たまたま上手くいっただけ、とも言えます。私たちの行動が、本来守るべき依頼主を、より大きな危険に巻き込んでしまう可能性もあった……そのことを、忘れてはいけないと思うのです」

アミュの冷静な指摘に、リューネはハッとした。そうだ、自分は目の前の人助けに夢中になり、本来の任務の責任と、最悪の事態を想定することを怠っていたのかもしれない。ワカバさんの安全が、第一のはずだったのに。

「……おっしゃる通り、です。私は……少し、浮かれていたのかもしれません。助けることばかり考えて、危険を顧みませんでした……」リューネは、素直に自分の非を認め、深く反省した。

「ボクも、助けなきゃって、それしか考えてなかった……」ラビィも神妙な顔で頷く。

「オレも、戦うことしか頭になかったダゴ……」ドラゴも反省しているようだ。

「いいえ、皆さんを責めているわけではありません」アミュは首を横に振った。「皆さんの優しさと勇気は、本当に素晴らしいものです。ただ、ガーディアンとして依頼を受ける以上、時には非情な判断も必要になる……そのことを、心に留めておいていただければ、と」

アミュの言葉は、三人の胸に重く響いた。ガーディアンとして、ただ強いだけ、ただ優しいだけではいけないのだ。状況を冷静に判断し、最善の選択をする責任がある。リューネは、アミュの言葉を噛み締め、ガーディアンとしての新たな課題を見つけた気がした。

その夜、見張りに立つリューネの瞳には、以前よりも少しだけ、深い思慮の色が宿っていた。

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