ep 48
【先輩の胸を借りて】
ブロンズランクに昇格し、より実践的な訓練や依頼に励むようになった「戦乙女・ローズ」の四人。その日、彼らはギルドの地下訓練場で、それぞれの武器の練度を上げるための自主訓練に励んでいた。
そこへ、偶然通りかかったのは、シルバーランクへの昇格も間近と噂される先輩ガーディアン、ダインだった。彼は依頼帰りなのか、少し汗を流すために訓練場に立ち寄ったようだ。
「お、ダインさん!」ラビィが目ざとく気づいて声をかける。
「よう、ルーキーども。精が出るな」ダインは、背中のグレートソードを軽く叩きながら、にやりと笑って近づいてきた。
(ダインさん……!)リューネは、以前見た彼の圧倒的な強さと、デューク教官との模擬戦を思い出した。(あの人に稽古をつけてもらえたら、もっと強くなれるかもしれない……!)
「あの、ダインさん!」リューネは意を決して呼び止めた。「もし、ご迷惑でなければ……私たちに、少しだけ手合わせ稽古をお願いできないでしょうか? 先輩の胸をお借りしたいんです!」
「おう、いいぜ!」ダインは快く頷いた。「ちょうどいいウォーミングアップになりそうだ。よし、一人ずつかかってきな!」
アミュは「私は見学させていただきますね。皆さんの戦い方、勉強になりますから」と微笑み、壁際で見守ることにした。
【リューネ vs ダイン】
最初に名乗りを上げたのはリューネだった。
「お願いします!」剣と盾を構える。ブロンズになり、装備も少しだけ良いものに変えている。
「おう、リーダーからだな! 手加減は無しだぜ!」ダインも訓練用の(それでも巨大な)大剣を構える。
リューネは、デュークとの訓練で叩き込まれた防御技術と、相手の動きを読む観察眼を活かし、ダインの重い攻撃を盾で受け流し、あるいは紙一重で回避する。そして、生まれたわずかな隙を突いて、鋭い刺突を繰り出す!
しかし、ダインはリューネの動きを完全に見切っていた。軽やかなステップで刺突をかわすと、大剣の腹でリューネの剣を弾き飛ばし、がら空きになった彼女の喉元に、剣の切っ先を寸止めで突きつけた。
「……そこまで。動きは悪くないが、まだまだ直線的だな。もっと緩急をつけろ」
「くっ……はい! ありがとうございました!」リューネは悔しさを滲ませながらも、的確なアドバイスに深く頭を下げた。
【ラビィ vs ダイン】
次に前に出たのはラビィだ。
「次はボクだ! ダインさん、ボクが得意なのは弓だけじゃないんだからね!」
彼女は弓を置き、軽やかなステップで構えを取る。彼女が磨いていたのは、ウサミミ族の俊敏性を活かした**体術**だった。
「ほう、面白い!」ダインも興味深そうに大剣を下げ、ラビィの動きに集中する。
ラビィは、目にも止まらぬ速さでダインの死角に回り込み、鋭い蹴りを放つ! しかし、ダインは巨体に見合わぬ反応速度でそれをガードし、逆にラビィの腕を掴もうとする。ラビィはそれをひらりとかわし、連続で蹴りや掌打を繰り出すが、ダインの屈強な肉体にはほとんどダメージを与えられない。最後は、ダインが放った軽い足払いでバランスを崩され、あっさりと地面に転がされてしまった。
「スピードは認めるが、一撃が軽すぎるな。もっと体重を乗せる工夫が必要だ」
「うぅ~、やっぱり強い……! ありがとうございます!」ラビィは悔しそうに唇を尖らせながらも、礼を言った。
【ドラゴ vs ダイン】
最後に、ドラゴが満を持して(?)前に出た。
「今度こそ、オレが勝つダゴ! うおおおお!」
彼は巨大な両手斧を振りかぶり、力任せにダインに突進する!
「はっはっは! 元気がいいな!」ダインは笑いながら、その突進を正面から受け止めた。
ドラゴの斧とダインの大剣が激しくぶつかり合い、火花が散る! 凄まじいパワー対パワーのぶつかり合いだ。ドラゴは炎の息も繰り出そうとするが、ダインはそれを巧みな剣捌きでいなし、逆にドラゴの体勢を崩すと、斧を持つ腕を関節技で捕らえ、そのまま地面に押さえつけてしまった。
「パワーだけじゃ、俺には勝てんぞ、チビドラゴン。もっと技を磨け」
「ぐぬぬぬ……! さすがダイン兄ちゃん、強いダゴ……! 降参ダゴ!」ドラゴは、完全に押さえつけられ、悔しそうに降参した。
【リリカーナにて】
結局、三人はダインに全く歯が立たなかった。しかし、その表情には悔しさだけでなく、一流ガーディアンの実力を肌で感じられたことへの興奮と、新たな目標が見えたことへの充実感が浮かんでいた。
「はっはっは! まあ、ブロンズになったばかりにしちゃ、なかなか見込みがあるぜ、お前ら!」
ダインは、汗を流す三人に、満足そうに声をかけた。「よし! 今日は俺の奢りだ! リリカーナで美味い飯でも食うぞ!」
「「「えっ!? 本当ですか!?」」」
「やったー!」
「肉! 肉ダゴ!」
先輩からの思いがけない提案に、三人は(アミュも誘われ)大喜びで訓練場を後にした。
リリカーナに着くと、リリカが笑顔で迎えてくれた。
「あら、ダインさん! それに、戦乙女・ローズの皆さん! いらっしゃいませ!」(ダインも時々この店を利用しているのかもしれない)
ダインは一番大きなテーブルにどっかりと座り、景気よく注文した。
「リリカちゃん! とりあえずエール大ジョッキと、こいつらに腹いっぱい食わせてやってくれ! あ、俺のオススメの山賊焼きもな!」
すぐにテーブルには、ダインお勧めの山賊焼き(香ばしいタレで焼かれた巨大な肉塊だ)や、リリカ特製の料理が次々と運ばれてきた。
「うわー! 美味しそう!」
「いただきます!」
四人は、先ほどの訓練での反省や、ダインからのアドバイス、そしてこれからの目標などを語り合いながら、和気あいあいと食事を楽しんだ。ダインは、厳しいだけでなく、後輩の面倒見も良い、頼れる先輩だった。
「ダインさんみたいに強くなるには、どうすればいいんですか?」
「そうだなぁ……近道はねえよ。ひたすら鍛えて、経験を積んで、あとは……絶対に諦めねえこと、だな」
ダインの言葉は、リューネたちの胸に深く響いた。
美味しい料理と、頼れる先輩との語らい。それは、厳しい訓練の合間の、貴重で、そしてかけがえのない時間となった。
「戦乙女・ローズ」の四人は、ダインという大きな目標を改めて胸に刻み、明日からのさらなる成長を誓うのだった。




