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ガーディアン  作者: 月神世一
ガーディアン入隊

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76/85

ep 43

【王宮への招待】

魔族のアジトでの死闘から数日が過ぎ、リューネ、ラビィ、ドラゴの三人は、デュークの指導の下、さらに厳しい訓練に明け暮れていた。新たな決意を胸に、アイアンランクとしての一歩を踏み出した彼らだったが、その日常はすぐに破られることになる。

「リューネさん! ラビィさん! ドラゴさん! 大変です、大変ですよ!」

その日、訓練を終えてギルド事務所に戻った三人を、受付のイレーザがいつになく興奮した様子で手招きした。その顔は紅潮し、目がキラキラと輝いている。

「どうしたんですか、イレーザさん? そんなに慌てて」

リューネが尋ねると、イレーザは声を弾ませて答えた。

「先日の、エルフの子供たち救出の件です! あの活躍が、ついにグルンストラ王、グレーヌ様の耳にまで届いたのです!」

「「「ええっ!?」」」三人は驚いて声を上げた。

「グレーヌ様は、皆さんの勇気と活躍に大変お喜びで、ぜひとも直接お礼を述べたいと……。つきましては、パーティー『戦乙女・ローズ』の代表として、リューネさんを王宮での午餐ごさんに招待したい、とのお達しが、たった今、王宮の使者から届けられました!」

イレーザは、王家の紋章が入った立派な羊皮紙の書状を、少し震える手でリューネに差し出した。

リューネは、予想外すぎる知らせに目を丸くしたまま、書状を受け取った。

「わ、私が……王宮に……? でも、活躍したのはデューク教官で……私たちはその……」

「僕、王宮って初めて行くよ! すごい! どんなところなんだろう!」

ラビィは、リューネの戸惑いなどお構いなしに、目を輝かせている。

「王宮のご飯……美味しい物、いっぱいあるダゴ……?」

ドラゴは、早くもよだれを垂らしそうな勢いだ。

「みんな……」リューネは、二人の能天気ぶりに少し呆れつつも、まだ状況が飲み込めない。

イレーザは、そんなリューネの様子を見て、くすくすと笑った。

「ふふふ、そう驚かれることはありませんよ。もちろん、最初はデューク教官をご招待したのですが……」彼女は少し声を潜めた。「『今さらグレーヌの爺さんと、何を話すことがあるものか。若者の功績は若者が受け取るべきだ』と、にべもなく断られてしまいまして……。それで、パーティーリーダーであるリューネさんが、代表としてお招きを受けることになったのです」

(デューク教官……らしいといえば、らしいけど……)

リューネはますます混乱したが、イレーザは安心させるように続けた。

「グレーヌ様は、とても気さくで、民のことを常に考えておられる賢王と評判です。あまり緊張なさらず、お食事と会話を楽しまれればよろしいのですよ。ラビィさんとドラゴさんも、もちろんご一緒です」

「はい……分かりました。謹んで、お受けいたします」

リューネは、覚悟を決めて頷いた。ラビィとドラゴは、隣で「やったー!」と飛び跳ねている。

【王宮での食事会】

数日後、三人は(イレーザに厳しく服装指導を受け、ラビィとリューネは少しだけよそ行きの服を借り、ドラゴも体を綺麗に洗い)緊張した面持ちで、アルトゥンの中央にそびえ立つグルンストラ城、王宮へと向かった。

衛兵が立ち並ぶ壮麗な門をくぐり、磨き上げられた大理石の廊下を進む。壁には美しいタペストリーが飾られ、天井からは煌びやかなシャンデリアが吊り下げられている。ギルドや街の喧騒とは全く違う、静かで、荘厳で、豪華絢爛な空間に、三人は完全に圧倒されていた。

「すごい……まるで別世界みたい……」リューネは、目を丸くして周囲を見渡す。

「わー……キラキラしてる……」ラビィも落ち着きなくキョロキョロしている。

「なんか、いい匂いがするダゴ……」ドラゴはくんくんと鼻を鳴らした。

やがて、案内されたのは、大きな窓から陽光が差し込む、明るく広々としたダイニングホールだった。中央の長いテーブルには、すでに白髪混じりの、しかし威厳と優しさを兼ね備えた壮年の男性が座っていた。彼こそが、グルンストラ国王グレーヌだった。

「おお、よく来てくれたな、若きガーディアンたちよ」グレーヌ王は、温和な笑顔で三人を迎えた。「私がグレーヌだ。まあ、そう堅苦しくせずともよい。楽にしてくれ」

しかし、国王を前にして、三人はガチガチに緊張して固まってしまった。

「あ、あの……本日は、お招きいただき、その……こ、光栄です……」リューネは、しどろもどろになりながら、なんとか挨拶を絞り出した。

「リ、リラックス、リラックス……」ラビィは隣で深呼吸を繰り返している。

「お、お腹空いたダゴ……」ドラゴは、正直な感想を呟いた。

そんな三人の様子に、グレーヌ王は楽しそうに笑い、食事を始めるよう促した。

テーブルには、見たこともないような豪華な料理が次々と運ばれてくる。黄金色に輝くスープ、七面鳥の丸焼き、新鮮な魚介のパイ、色とりどりの果物……。

「さて、リューネ殿」食事を進めながら、グレーヌ王は改めてリューネに向き直った。「此度のエルフの子らの救出、まことに見事であった。そなたたちの勇気と活躍に、心から礼を言う。本当に、ありがとう」

その言葉には、国王としての威厳だけでなく、一人の民を思う温かさがこもっていた。

「い、いえ! 私たちだけでは……デューク教官や、ダインさんの助けがあってこそで……!」リューネは恐縮して答えた。

「ふむ、デュークか……」グレーヌ王は少しだけ遠い目をした。「あやつも、相変わらずだな……。まあよい。だが、最終的に子供たちを救い出し、魔族の首領を討ち果たしたのは、紛れもなくそなたたちの功績だ」

彼は国の現状についても語った。「ご存知の通り、このグルンストラは、豊かではあるが、常に周辺の化け物共や、魔族、あるいは北方の蛮族などの脅威に晒されておる。国軍も、そなたたちガーディアンも、常に備えを怠るわけにはいかず……それゆえ、なかなか国内の隅々まで目が届かぬこともあるのだ。今回の事件も、我々の不覚であった……」

「そ、そうだったんですね……」リューネは、国王の言葉に真剣に耳を傾けた。華やかな王宮の裏側にある、国の厳しい現実を垣間見た気がした。

一方、ラビィとドラゴは、難しい話はそっちのけで、目の前の豪華な料理に夢中になっていた。

「このお肉、柔らかくて美味しいー!」

「このスープ、すっごく深い味! 最高ダゴ! おかわり!」

その様子を見て、グレーヌ王は再び微笑んだ。

「はっはっは、若いというのは良いことだ。ところで、リューネ殿。エルフの長も、此度の件には大層感謝しておってな。そなたたちに、特別な褒美を用意したとのことだ」

「褒美、ですか?」リューネは首を傾げた。

「うむ。だが、それはまた後日のお楽しみじゃ。さ、まずは食事を楽しんでいってくれ」

グレーヌ王は、そう言って話を締めくくった。

豪華な食事と、国王との(少し緊張する)会話。リューネたちにとって、それは忘れられない経験となった。

【新たな仲間】

王宮での食事会から数日後。リューネたちは、再びイレーザからギルドに呼び出された。

「リューネさん、ラビィさん、ドラゴさん。先日、グレーヌ様がお話しされていた件です」イレーザは、いつものように微笑みながら言った。「エルフの長からの褒美の準備ができたそうです。王宮までお越しください、とのことですよ」

「褒美! なんだろう!?」ラビィはワクワクした様子だ。

「美味しい物だといいダゴ!」ドラゴは期待に胸を膨らませている。

三人は、イレーザに案内され、再び王宮へと向かった。今度は、前回通されたダイニングホールではなく、さらに奥にある、静かで美しい庭園に面した一室へと案内された。そこには、グレーヌ王と、そしてもう一人、息をのむほど美しいエルフの女性が立っていた。

長く輝く金色の髪、透き通るような青い瞳、白い肌。優雅な緑色の衣服を身にまとい、その佇まいは、まるで森の精霊か、古い絵画から抜け出してきたかのようだ。

「紹介しよう」グレーヌ王が口を開いた。「こちらが、エルフの長からの『褒美』として、そなたたちの元へ遣わされた、アミュ殿だ」

「「「ええっ!?」」」三人は、驚きと戸惑いで言葉を失った。褒美が、人……?

「初めまして。アミュと申します」

アミュと名乗ったエルフの女性は、優雅な仕草で三人に一礼した。その声は、鈴を振るように美しく、穏やかだった。

「エルフの長は、先日の子供たちの救出に深く感謝しており、その勇気と優しさを持つあなたたち『戦乙女・ローズ』の力になりたいと、こうしてアミュ殿を派遣されたのだ」グレーヌ王は説明を続けた。「アミュ殿は、エルフの中でも特に優れた魔法の才能を持ち、戦闘能力も非常に高い。これからは、パーティー『戦乙女・ローズ』の一員として、リューネさんたちと共に戦ってほしい、とのことだ」

「わ、私たちの……仲間に……!?」リューネは、まだ信じられないといった様子で尋ねた。

「はい」今度はアミュが口を開いた。「私も、あなたたちと共に戦うことを望んでいます。子供たちを救ってくださった、その強い意志と優しさに触れ、私もその一助となりたいのです。どうか、未熟者ですが、これからは仲間として、よろしくお願いします」

アミュは、真っ直ぐな瞳でリューネたちを見つめ、再び優雅に微笑みかけた。

驚きはあったが、断る理由などなかった。こんなに美しく、そして強そうな仲間が増えるなんて、願ってもないことだ。

「は、はい! こちらこそ! よろしくお願いします、アミュさん!」

リューネは、アミュの手を取り、満面の笑顔を見せた。

「やったー! 新しい仲間だー! よろしくね、アミュちゃん!」

ラビィは、嬉しさのあまり、アミュの周りをぴょんぴょんと飛び跳ねている。

「アミュねーちゃん、強いダゴ? オレと勝負するダゴ?」

ドラゴは、早速、アミュの強さに興味津々といった様子だ。

アミュは、そんな賑やかな三人の様子を見て、くすくすと優しく微笑むと、改めて頷いた。

「ええ。皆さんの力になれるよう、精一杯頑張ります。これから、どうぞよろしく」

こうして、リューネ、ラビィ、ドラゴのパーティー「戦乙女・ローズ」に、エルフの魔法使いアミュという、強力で頼もしい新たな仲間が加わった。四人となった彼女たちは、さらに力をつけ、グルンストラ国の平和を守るために、新たな戦い、そして新たな冒険へと挑んでいくことになるのだった。

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