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ガーディアン  作者: 月神世一
ガーディアン入隊

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74/85

ep 41

【キマイラとの死闘】

エルフの子供たちを安全な場所まで誘導した(後でラビィが迎えに行き、ギルドへ連絡する手はずだ)リューネ、ラビィ、ドラゴは、デュークの身を案じ、息を切らせながら魔族のアジトへと急いで戻った。

洞窟の奥、巨大な工房へとたどり着いた彼らが目にしたのは、凄惨な光景だった。おびただしい数の魔族の亡骸が転がり、壁や床は黒い血で汚れている。そして、その中央で対峙しているのは、長剣を構えるデュークと、満身創痍ながらも禍々しいオーラを放ち続ける、あの魔族の首領ただ一人だった。

「く……は……流石は……『赤き閃光』、か……。これほどの数を、一人で……」

首領は、肩で息をし、体中から血を流しながらも、憎悪に満ちた目でデュークを睨みつけていた。

デュークは、冷たい、一切の感情を排したような視線を首領に向け、静かに長剣を構え直した。その剣先からは、まだ戦いの熱が立ち上っているようだ。

「ふん……だが、これで終わりだと思うなよ……人間……」

首領は、覚悟を決めたように、あるいは狂気に駆られたように、低く笑った。

「こ、こうなったら……我が身をにえとし、究極の力を……!」

首領は、おもむろに地面に転がる魔族の死体に近づくと、その黒い血を両手ですくい上げ、自らの体に浴びせ始めた!

「な、何をするつもり!?」

リューネが驚愕する中、首領の体が、まるで粘土のように、ぐにゃりぐにゃりと奇怪な音を立てて変化していく! 骨が軋み、肉が盛り上がり、皮膚が裂けて新たな部位が生えてくる!

「ぐおおおおおおおおおおおっっっ!!!」

首領は、もはや人間のものとは思えない、苦悶と歓喜が入り混じった絶叫を上げながら、その姿をみるみるうちに巨大な異形の怪物へと変貌させていった!

「わ、化け物……!」ラビィが震える声で呟く。

「こいつが……あの首領の、本当の姿……!」ドラゴも両手斧を構え直し、全身で警戒する。

変貌を遂げたその姿は、まさしく伝説に語られる魔獣――キマイラ。ライオンの頭、山羊の頭、そして毒蛇の尾を持つとも言われるが、この個体はさらに禍々しく、三つの獰猛な爬虫類の頭部と、コウモリのような巨大な翼を持ち、全身が硬い黒鱗で覆われている。その巨躯からは、先ほどとは比較にならないほどの、絶望的なまでのプレッシャーが放たれていた。

「ククク……見よ! これが魔族の真髄! 貴様ら下等生物に、我らの真の恐ろしさを見せてやる!」

三つの頭がそれぞれ別の方向を向き、同時に咆哮を上げると、キマイラは翼を広げ、凄まじい勢いでデュークに襲い掛かった!

デュークは、その猛攻を冷静に見極め、長剣で的確にいなし、反撃を加えていく。剣閃が走り、キマイラの硬い鱗に火花を散らす! しかし、キマイラの攻撃は三つの頭から繰り出され、その動きは予測困難で、再生能力も高いのか、浅い傷はすぐに塞がってしまう。デュークも徐々に押され始め、その額には汗が滲んでいた。

(デューク教官が……押されている!?)

(このままじゃ、まずい!)

「デュークさん! 加勢します!」

リューネは恐怖を振り払い、剣と盾を構えてデュークの援護へと飛び出した!

「リューネ! ボクも援護する!」ラビィも即座に弓を構える!

「オレも行くダゴ! この化け物、オレがぶっ飛ばす!」ドラゴも両手斧を握りしめ、キマイラに突進した!

三人は、デュークと連携を取りながら、キマイラに攻撃を仕掛ける!

リューネは、キマイラのブレスや爪攻撃を盾で必死に防ぎ、デュークやドラゴへの攻撃を逸らす!

ラビィは、三つの頭の動きを冷静に見極め、牽制や弱点となりそうな眼などを狙って、的確に矢を放ち続ける!

ドラゴは、キマイラの巨体に臆することなく、両手斧を叩きつけ、その注意を引きつけ、リューネとラビィの攻撃チャンスを作り出す!

三人の予想外の奮闘と連携に、キマイラも多少のダメージを負い、動きに乱れが生じ始めた。しかし、それでも魔獣の力は圧倒的だ。キマイラの放った薙ぎ払うような尾の一撃が、リューネの盾を砕き、彼女を壁際まで吹き飛ばした!

「くっ……!」

激しい痛みと衝撃に、リューネは一瞬意識が遠のきそうになる。

「リューネ!」

「リューネおねーちゃん!」

ラビィとドラゴが心配そうに叫ぶ。

「ま、まだ……! まだ、やれる……!」

リューネは、折れた盾を捨て、剣を杖代わりに、ふらつきながらも立ち上がった。そして、再びキマイラに立ち向かおうとした。仲間を、そしてデューク教官を守らなければ!

その時、激しい攻防を続けていたデュークの声が響いた。

「……よし。気を溜める。貴様ら、もう少しだけ時間を稼げ。……できるか?」

その声には、疲労の色と共に、確かな決意が込められていた。

(デュークさんが、私たちに……!)

リューネは、デュークに任せてもらえたことが、何故か無性に嬉しかった。そして、最後の力を振り絞る覚悟を決めた。

「はいっ! デュークさん! お任せください!」

「ボクたちが、絶対に時間を稼ぎます!」

「オレに任せるダゴ!」

三人は、再びキマイラに立ち向かった! 傷を負い、疲労困憊になりながらも、互いを庇い、声を掛け合い、必死に時間を稼ぐ! その姿は、まさに死闘だった。

そして、ついにデュークが動いた。

「……待たせたな」

彼が構える長剣に、周囲の空気が震えるほどの、眩いばかりの赤き紅蓮のオーラが集束していく! まるで、剣自体が燃え盛っているかのようだ!

「いくぞ……! 我が、全霊を込めて――!」

デュークは、低く、しかし決意に満ちた声で技名を叫んだ!

竜撃剣りゅうげきけん――ッ! 閃光斬せんこうぎり!!」

次の瞬間、デュークの姿は、まさに「赤き閃光」と化し、一瞬でキマイラとの距離を詰めた! 放たれた斬撃は、空間そのものを切り裂くかのような、紅蓮の軌跡を描く!

「――――ッ!?」

キマイラは、その三つの頭全てで悲鳴を上げる間もなく、デュークが放った渾身の一刀によって、その巨大な胴体を、綺麗に、一刀両断にされていた。

ズシン……!! という地響きと共に、左右に分かれたキマイラの巨体が崩れ落ち、アジトには絶対的な静寂が訪れた。

「…………」

「…………」

「…………」

リューネ、ラビィ、ドラゴは、目の前で起こった信じられない光景に、ただただ唖然としていた。

「す、すごい……」リューネは、震える声で呟いた。

「あれが……『赤き閃光』……デューク教官の、本当の力……」ラビィも、驚愕の表情を浮かべている。

「デューク様……強すぎるダゴ……」ドラゴは、目を丸くして、尊敬の眼差しでデュークを見つめていた。

デュークは、燃えるようなオーラを収束させると、静かに長剣を鞘に納めた。

「……終わったぞ」

その言葉に、三人はようやく我に返った。

「デューク教官……! ありがとうございました!」

リューネは、ふらつく足でデュークに駆け寄り、心の底からの感謝を述べた。

「……フン。礼には及ばん。それより、お前たちもよくやった。見習いにしては、上出来だ」

デュークは、静かに、しかし確かに、三人の奮闘を労った。その言葉は、どんな報酬よりも、三人の心に深く響いた。

こうして、リューネ、ラビィ、ドラゴの三人は、指導官デュークと共に、魔族の首領が変貌した恐るべき魔獣キマイラを討ち倒し、誘拐されたエルフの子供たちを救い出すという、困難な任務を成し遂げたのだった。彼らのガーディアンとしての物語は、また一つ、大きな山を越えた。

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