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ガーディアン  作者: 月神世一
ガーディアン入隊

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ep 38

【オルトロスの素材】

二つの頭を持つ魔獣、オルトロスは、ついにその巨体を地に横たえ、動かなくなった。激しい戦いを終えたリューネ、ラビィ、ドラゴの三人は、その場にへたり込み、荒い息を繰り返していた。アドレナリンが切れ、全身を襲う凄まじい疲労感と痛みに、指一本動かすのも億劫だった。

「……やった……勝った……んだよね……?」

リューネは、目の前に横たわる巨大な魔獣の亡骸を、まだ信じられないような気持ちで見つめながら呟いた。

「もう……一歩も動けないよ……」

ラビィは、完全に地面に大の字になって、空を仰いでいる。

「オレも……疲れたダゴ……お腹すいたダゴ……」

ドラゴも、愛用の両手斧を杖代わりに、ぐったりと座り込んでいた。

しかし、リーダーであるリューネは、すぐに気力を奮い立たせた。

「……いけない! 感傷に浸ってる場合じゃないわ! オルトロスの素材を回収しないと!」

彼女は、まだ震える足で立ち上がると、オルトロスの巨大な亡骸に近づいた。このクラスの魔獣の素材は、非常に貴重で高価なものになるはずだ。牙、爪、硬質な毛皮、そしてあるいは魔力を秘めた心臓や眼球など……。これらを回収することも、ガーディアンの重要な仕事の一部だ。

「これは、貴重な素材になるわ。討伐の証拠としても、ギルドに持ち帰らないと」

リューネは、腰のナイフを抜き、知識と、そして少しの本能を頼りに、手際よく素材の剥ぎ取りを始めた。

その様子を見て、ラビィとドラゴも、ゆっくりと、しかし確かな足取りで立ち上がり、手伝いを始めた。

「リューネ、これって……どうすればいいの? なんかヌルヌルする……」

ラビィは、オルトロスの硬い毛皮の扱いに戸惑っている。

「これはね、皮と肉の間にナイフを入れて、こうやって……少し力がいるけど」

リューネは、ラビィに手本を見せながら、素材の扱い方を教えた。

「うおお……! この牙、でっかくて重いダゴ……!」

ドラゴは、オルトロスの口から引き抜かれた、自分の腕ほどもある巨大な牙を、よろよろしながら運んでいる。

「頑張って、ドラゴ! それ、きっと高く売れるよ!」

リューネは、ドラゴを励ました。

三人は、互いに協力し、声を掛け合いながら、オルトロスから剥ぎ取れる限りの貴重な素材を回収し、持ち帰るための準備(大きな布で包んだり、荷車に積めるように分けたり)を整えた。作業が終わる頃には、日はさらに傾いていた。

【グルンストアへ】

さすがにこれ以上進むのは危険だと判断し、その夜、三人は街道から少し離れた場所でキャンプを張ることにした。

「今夜はここでしっかり休みましょう。明日に備えて」

リューネが言うと、ラビィとドラゴはこくこくと頷いた。

テントを設営し、火を起こして簡単な夕食を済ませると、三人は、まるで泥のように深い眠りに落ちていった。激しい戦闘と、その後の大変な作業で、心身ともに限界だったのだ。夜通し、誰も見張りに立つことなく、しかし不思議とぐっすりと眠ることができた。

次の日、朝日と共に目覚めた三人は、昨日までの疲労が嘘のように、体が軽くなっているのを感じた。休息と、そして大きな達成感が、彼らの活力を回復させたのだろう。

三人は、オルトロスの素材を慎重に荷車に積み込むと、改めてグルンストラ国、首都アルトゥンへの帰路についた。

それから数日後、大きなトラブルもなく、リューネ、ラビィ、ドラゴの三人は、ついにアルトゥンの街へと無事に帰還した。

【報告と報酬】

クレッセントワルツのギルドに戻った三人は、まず受付のイレーザに護衛任務の完了と、オルトロス討伐の件を報告した。オルトロスの素材(特に巨大な牙や、特徴的な二つの頭部の皮など)をカウンターに並べると、イレーザだけでなく、周囲にいた他のガーディアンたちからも、驚きと称賛の声が上がった。

「まぁ……! これは……本当にオルトロスを!? アイアンランクのあなたたちが!?」

イレーザは、普段の冷静さを失い、目を丸くして三人の顔と素材を交互に見比べた。そして、報告書に目を通し、しばらく考え込んだ後、満面の笑みを浮かべた。

「……信じられません! まさに素晴らしいとしか言いようがありませんね! パーティー『戦乙女・ローズ』! 今回の功績は、特筆に値します!」

彼女は心からの賛辞と共に、三人を労った。「本当にお疲れ様でした。ゆっくり休んでください」

そして、イレーザは規定の護衛任務報酬に加え、別の重そうな革袋を取り出した。

「これは、今回のオルトロス討伐に対する、ギルドからの特別報酬です。危険な魔獣から街道の安全を守った功績は大きい。遠慮なく受け取ってください」

「「「ありがとうございます!!」」」

三人は、予想以上の報酬に喜びを隠しきれない。苦労が報われた瞬間だった。彼らは革袋を受け取り、互いに顔を見合わせ、満面の笑顔を浮かべた。

【祝勝会】

その日の夜、パーティー「戦乙女・ローズ」の三人は、オルトロス討伐という大金星と、無事の帰還を祝して、もちろん「お食事処 リリカーナ」へと繰り出した。

「リューネさん! ラビィさん! ドラゴくん! おかえりなさーい! それに、オルトロス討伐、おめでとうございます!」

店に入ると、リリカが満面の笑顔で出迎えてくれた。彼女も噂を聞いていたのだろう。

「今日は腕によりをかけて、お祝いのご馳走を用意しましたからね! いっぱい食べていってください!」

「ありがとう、リリカさん!」

「「「かんぱーい!!」」」

三人は、エール(ドラゴは相変わらず果実水だが、量が倍だ)の入ったジョッキを高々と掲げ、互いの健闘を力強く称え合った。

テーブルには、リリカ特製の料理が、これでもかと並んでいた。山のように盛られたドラゴ用のローストミート、ラビィが大好きな彩り豊かな温野菜サラダ、そしてリューネのために用意された、繊細なソースがかかった白身魚のムニエル。その他にも、熱々のシチューや焼きたてのパン、デザートのフルーツまで、まさに祝宴にふさわしい豪華さだ。

「わー! 美味しそう! リリカさん、ありがとう!」

「お肉だ! お肉! お肉だー!」

「どれもこれも美味しそう……!」

「「「いただきます!」」」

三人は、勢いよく料理に食らいついた。

「ん~~! このお肉、とろけるように柔らかい!」

「ほんと! 野菜も甘くて、ドレッシングも最高!」

「魚、うまいダゴ! 皮がパリパリだゴ!」

三人は、口々に感想を言いながら、今日の(というより、ここ数日の)苦労が全て吹き飛ぶかのように、夢中で料理を平らげていった。ドラゴは、巨大な肉塊をあっという間に骨だけにすると、満足そうに大きなお腹をさすっている。ラビィは、お気に入りのサラダをおかわりし、幸せそうに頬張っている。リューネも、仲間たちの楽しそうな顔と、美味しい料理に、心からの笑顔を浮かべていた。

今日の激闘、仲間との連携、そして勝利。ガーディアンとしての厳しい現実と、それを乗り越えた達成感。美味しい料理を囲みながら、三人は今日の出来事を語り合い、笑い合った。

リューネ、ラビィ、ドラゴ――パーティー「戦乙女・ローズ」は、この忘れられない経験を通して、また一つ大きく成長し、その絆を深めた。そして、これからも、多くの困難が待ち受けているであろうガーディアンとして道を、仲間と共に、人々の笑顔を守るために戦い続けることを、改めて心に誓うのだった。

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