ep 29
盗賊たちを壊滅させ、廃墟に囚われていた人々を無事に救出したリューネ、ラビィ、ドラゴ。三人は、解放された人々を安全な場所まで送り届けた後、依頼主であるミナの母親が待つギルド事務所へと向かった。道中、解放された人々から何度も感謝の言葉をかけられ、三人の胸は温かいもので満たされていた。
ギルド事務所の前には、憔悴しきった母親が、今か今かと娘の帰りを待ちわびて立っていた。数時間前よりもさらに顔色は悪く、不安と期待が入り混じった複雑な表情で、落ち着きなく道行く人に目をやっている。
リューネたちの姿を見つけると、母親は駆け寄ってきた。その目は、懇願するようにリューネを見つめている。
「あ、あなたたち……! 娘は……私のミナは……無事、なのですか!?」
リューネは、母親の震える手を取り、安心させるように、力強く、そして満面の笑みで頷いた。
「はい! ミナさんはご無事です! 少しお疲れですが、怪我もありません。今、ラビィがこちらへ連れてきています!」
その言葉に、母親の顔が、まるで暗闇に光が差したように、パッと明るくなった。張り詰めていたものが一気に解け、堰を切ったように涙が溢れ出す。
「あ……あぁ……! よかった……本当によかった……! ありがとうございます……! 本当に、本当にありがとうございます……!」
母親は、何度も何度も頭を下げ、リューネたちに感謝の言葉を繰り返した。
ほどなくして、ラビィに手を引かれたミナが姿を現した。まだ少し怯えた表情をしているが、その足取りはしっかりしている。
母親は、娘の名前を叫びながら駆け寄った。
「ミナッ!!」
「お母さん……!」
ミナも母親の胸に飛び込んだ。二人は固く、固く抱き合い、再会を喜び、ただただ涙を流し合った。
リューネ、ラビィ、ドラゴは、その光景を少し離れた場所から、温かい目で見守っていた。
(本当に……よかった……)
リューネは、心の底から安堵のため息をついた。ガーディアンになって、初めて成し遂げた、かけがえのない「人助け」だった。ラビィもドラゴも、感動的な親子の再会に、思わず目頭を熱くしていた。
しばらくして、涙を拭った母親が、改めてリューネたちに向き直り、深々と頭を下げた。
「本当に……本当に、ありがとうございました。あなたたちがいなければ、この子は……もう二度と……。何とお礼を申し上げてよいか……」
言葉に詰まりながらも、その感謝の気持ちは痛いほど伝わってきた。
リューネは、少し照れながらも、胸を張って笑顔で答えた。
「どういたしまして。私たちガーディアンは、困っている人を助けるのが仕事ですから。ミナさんがご無事で、それが一番です」
この時、リューネは、ガーディアンという道を選んで本当に良かったと、心の底から思った。誰かの役に立てる喜び。誰かを絶望から救い出す達成感。それは、どんな報酬よりも、リューネの心を豊かに満たしてくれる、何物にも代えがたい宝物だった。
【依頼完了】
三人はギルドに戻り、受付のイレーザに任務完了の報告を行った。盗賊団のアジトを制圧し、行方不明者全員を無事に救出したこと、そして討伐の証拠となる素材を提出した。
イレーザは、三人の報告書と提出された素材を確認すると、感心したような、そして少し驚いたような表情を浮かべた。
「……素晴らしい働きでしたね、パーティー『戦乙女・ローズ』。アイアンランクの初任務としては、予想以上の成果です。正直、少し心配していたのですが……見事にやり遂げましたね」
彼女は珍しく手放しで三人を称賛し、規定の報酬が入った袋を手渡した。
「お疲れ様でした。これが今回の報酬です。そして、依頼主の方からも別途、多額の謝礼金がギルドに届けられています。後ほどお渡ししますね。これからも、皆さんの活躍を期待しています」
イレーザからの労いと期待の言葉に、三人は達成感と誇らしさで笑顔になった。
【祝勝会】
その日の夜。リューネ、ラビィ、ドラゴの三人は、もちろん「お食事処 リリカーナ」でささやかな祝勝会を開くことにした。
「いらっしゃい! リューネさん、ラビィさん、ドラゴくん! お帰りなさい!」
店に入ると、リリカが満面の笑顔で迎えてくれた。彼女も、三人が無事に任務を終えたことを聞いて、安心していたようだ。「今日はお疲れ様でした! 腕によりをかけて、美味しいものいっぱい作りますからね! いっぱい食べていってください!」
「ありがとう、リリカさん!」
「やったー!」
「肉! 肉ダゴ!」
三人は一番奥のテーブルに陣取り、まずはエール(ドラゴは果実水)で乾杯した。
「「「初任務達成、おめでとう! かんぱーい!!」」」
グラスを打ち合わせる音が、温かい雰囲気の店内に心地よく響いた。
テーブルには、リリカが腕によりをかけた料理が、これでもかと並べられていく。ジューシーな肉汁滴る大きなステーキ、色とりどりの新鮮な野菜がたっぷり入ったサラダ、魚介の旨味が凝縮された海鮮シチュー、ほかほかの焼きたてパン……。
「うわー! すごい! 美味しそう!」ラビィは目を輝かせている。
「肉だ! 肉だ! 肉だー!」ドラゴは巨大なステーキに釘付けだ。
「どれから食べようかな……」リューネも、美味しそうな匂いに食欲をそそられ、思わずお腹を鳴らした。
「「「いただきます!!」」」
三人は、一斉に料理に食らいついた。
「ん~~! このお肉、柔らかくて最高に美味しい!」
「ほんと! このサラダも、ドレッシングが絶妙でいくらでも食べられちゃうね!」
「魚もふわふわで美味しいダゴ! リリカちゃん、天才ダゴ!」
三人は、口々に感想を言いながら、夢中で料理を平らげていく。ドラゴは、宣言通り大きなステーキをあっという間に平らげ、満足そうに腹をさすっている。ラビィは、野菜も残さずきれいに食べ、デザートのフルーツに目を輝かせている。リューネは、一つ一つの料理をじっくりと味わいながら、今日の出来事を噛み締めていた。
初めての正式な依頼。人々の救出。仲間との連携。そして、得られた感謝と達成感。
それは、リューネたち「戦乙女・ローズ」にとって、決して忘れられない、ガーディアンとしての大切な一日となった。
美味しい料理とおしゃべりで満たされた祝勝会の夜。三人は、互いの健闘を称え合い、仲間との絆を再確認し、そして、ガーディアンとしてさらに成長していくことを、改めて心に誓うのだった。
いかがでしたでしょうか? 感動の再会から祝勝会まで、初任務の締めくくりを描いてみました。リューネたちのガーディアンとしての物語は、ここから本格的に始まっていくことでしょう。




