ep 25
アイアンランクの階級章を授与され、正式なガーディアンとしての一歩を踏み出したリューネ、ラビィ、ドラゴ。三人は、新たな決意を胸に、クレッセントワルツの受付カウンターへと向かった。パーティーとしての活動を開始するには、まずギルドへの正式な登録が必要だ。
事務所は今日も活気に満ちている。依頼を探すガーディアン、任務の報告をするパーティー、情報交換をする者たち。数ヶ月前、リューネが初めてこの扉を叩いた時の、どこか閑散としていた雰囲気が嘘のようだ。これも、ダダさんの活躍と、そして多くのガーディアンたちの努力の賜物なのだろう。
カウンターには、いつものように受付嬢のイレーザが座っていた。彼女は三人の姿を認めると、にこやかに微笑み、そして少し驚いたように目を丸くした。
「あら、リューネさん! それにラビィさんもドラゴさんも。なんだか見違えましたね! 少し……いえ、かなり頼もしくなったんじゃないかしら?」
厳しい訓練を経て、三人の顔つきや立ち姿には、以前にはなかった自信と精悍さが備わっていた。
「お久しぶりです! えっと……その……」
いざカウンターの前に立つと、リューネは少し緊張してしまい、言葉を詰まらせた。
「ふふ、私の名前はイレーザです。まだちゃんと名乗っていませんでしたね。ギルドの受付と事務を担当しています。これからパーティーとして活動されるなら、色々とお世話になると思いますので、以後、お見知りおきを」
イレーザは、凛とした声で、しかし優しく微笑みかけながら自己紹介した。
「ラビィだよ! よろしくね、イレーザさん!」
「オレはドラゴ! よろしくダゴ!」
ラビィとドラゴも、元気よく挨拶を返す。
「ええ、こちらこそよろしく。それで、今日は何かご用ですか? 新しい装備の相談かしら?」
イレーザは用件を尋ねた。
「はい! あの、私たち、パーティー登録をしに来ました!」
リューネは背筋を伸ばし、胸を張って答えた。
「まあ、ついに! おめでとうございます! 承知いたしました。では、登録手続きを始めますね。少々お待ちください」
イレーザはにこやかに頷き、手際よく書類を準備し始めた。
「それで、パーティー名はお決まりですか?」
「はい!」リューネは、少し頬を染めながらも、自信を持って答えた。「**『戦乙女・ローズ』**でお願いします!」
「ヴァルキュリア・ローズ……素敵な名前ですね。かしこまりました」イレーザは書類にパーティー名を記入し、登録印を押した。「はい、登録完了です。こちらが、パーティー『戦乙女・ローズ』の冒険者証になります。失くさないように、大切にしてくださいね」
イレーザは、三枚の真新しい金属製のカードを手渡した。カードには、クレッセントワルツの紋章と共に、パーティー名と各自の名前、そしてアイアンランクを示す刻印が施されている。
「わぁ……!」「これが……!」「やったダゴ!」
三人はそれぞれの冒険者証を受け取り、感慨深げに、そして大切そうに眺めた。これが、自分たちが正式なガーディアンであり、一つのパーティーであることの証なのだ。気持ちが新たになるのを感じた。
登録を終えた三人は、早速、受付の隣にある依頼掲示板の前に立った。所狭しと貼られた依頼書に目を走らせる。薬草採取のような簡単なものから、特定のモンスター討伐、遺跡の調査、護衛任務まで、多種多様な依頼がある。
「何か、今の私たちにできそうな依頼はないかな?」
リューネは、真剣な表情で依頼書を一枚一枚確認していく。
「うーん、ゴブリン討伐とかはあるけど、結構奥地のだし……こっちは、ワイバーンの目撃情報調査? さすがにまだ無理そうだね……」
ラビィは少し不安そうな表情で、依頼内容の難易度に眉をひそめた。
「オレは、強いモンスターと戦いたいダゴ! ブルホーンとか!」
ドラゴは、報酬額の高い討伐依頼を見つけて目を輝かせている。
どの依頼を受けるべきか、三人が相談を始めた、その時だった。
「リューネさんたち」
カウンターからイレーザが近づいてきた。その手には一枚の依頼書が握られている。
「もし、最初の任務がお決まりでないなら、こんな依頼はいかがですか?」
イレーザが差し出した依頼書には、「緊急」「高額報酬」の文字が目立つように書かれていた。
「最近、このアルトゥン市内で、住人が立て続けに行方不明になる事件が起きていまして……その捜索依頼です。原因はまだ不明なのですが、事態を重く見た自治会から、緊急でギルドに依頼が来たんです。報酬も、アイアンランクの初任務としては破格ですよ」
イレーザは、にこやかな表情は崩さないが、その声には少しだけ案じるような響きがあった。
「行方不明者の捜索……ですか?」
リューネは依頼書を受け取り、詳細に目を通した。失踪者の名前、年齢、最後に目撃された場所などが記されている。子供や女性も含まれているようだ。
「はい。衛兵隊も捜査はしているようですが、人手も足りず、難航しているようで……。ガーディアンの力も借りたい、と」
(街の中で人が消える……? モンスターの仕業? それとも……)
リューネは考えを巡らせた。危険な任務かもしれない。しかし、困っている人がいるのなら、見過ごすことはできない。彼女はラビィとドラゴを見た。二人も、真剣な表情で頷いている。
「分かりました。その依頼、私たち『戦乙女・ローズ』が受けます!」
リューネは、迷いを振り払い、決意を込めてイレーザに告げた。
「ありがとうございます! さすがですね」イレーザは安堵したように微笑んだ。「では、詳しいお話を事務所の方でお聞かせください。依頼主の方からの情報もありますので」
イレーザに案内され、三人は事務所の奥へと向かう。
正式なガーディアンとして、そしてパーティー「戦乙女・ローズ」として、初めての本格的な任務。それは、街を覆う不穏な影の謎を追う、困難な捜索任務から始まることになった。




