ep 20
集団戦、水上戦と、怒涛のような特別訓練が一段落し、リューネたちツリーランクの見習いにも、久しぶりに丸一日の休日が与えられた。厳しい訓練漬けの日々から解放され、アルトゥンの街はいつもより少しだけ輝いて見えた。
「ねえ、ラビィ。今日、ボクが昔お世話になっていた孤児院に、少し顔を出そうと思うんだけど……もしよかったら、一緒に行かない?」
朝食の後、リューネはおずおずとラビィを誘った。ガーディアンになって得たわずかな報酬を、少しでも孤児院の足しにしたかったのだ。ラビィなら、きっと快くついてきてくれるだろうと思った。
「孤児院? リューネがいたところ? うん、行く行く! 子供たちとかいるんでしょ? 楽しみ!」
ラビィは案の定、目を輝かせて快諾してくれた。
二人は連れ立って、アルトゥンの少し外れにある孤児院へと向かった。古くはあるが、綺麗に手入れされた小さな建物からは、子供たちのはしゃぐ声がかすかに聞こえてくる。リューネにとっては、ガーディアンになる前の、懐かしい場所だ。
扉を開けると、優しそうな笑顔のシスターが二人を迎えてくれた。
「まあ、リューネちゃん! よく来てくれたわね! 元気そうでよかったわ」
「シスター、お久しぶりです! あの、これ、少ないんですけど、みんなのために使ってください」
リューネは少し照れながら、訓練の合間に貯めた銅貨の入った小さな袋をシスターに手渡した。額としては本当に微々たるものだが、今の彼女にできる精一杯の気持ちだった。
「リュ、リューネちゃん……! なんてこと……! あなただって大変なはずなのに……。本当に、本当にありがとう……! 大切に使わせてもらうわね……」
シスターは涙ぐみ、リューネの手を固く握りしめた。孤児院の運営は常に厳しく、この寄付は大きな助けになるのだろう。
「それにしても、見違えたわね。あんなにお転婆で、しょっちゅう木から落ちて怪我ばかりしていた子が、こんなに立派なガーディアン見習いになるなんて……」
シスターは、リューネの成長した姿に目を細め、感慨深げに言った。
「ええっ!? リューネ、わんぱくだったの!? 木から落ちてたの!?」
隣で聞いていたラビィが、興味津々な様子で目を丸くする。
「や、やだー! シスター、もう昔の話はやめてくださいよー!」
リューネは顔を真っ赤にして、照れ臭そうに笑った。
その後、リューネとラビィは、孤児院の子供たちと一緒に時間を過ごした。年下の子供たちに絵本を読んであげたり、少し大きな子たちとは鬼ごっこをして走り回ったり。ラビィは持ち前の明るさとウサミミで、あっという間に子供たちの人気者になっていた。リューネも、最初は少し照れていたが、子供たちの屈託のない笑顔に触れるうちに、自然と心が和んでいくのを感じていた。午後は、シスターを手伝って、掃除や洗濯、食事の準備などの雑務もこなした。
夕食の時間になると、質素だが愛情のこもった温かいスープとパンが食卓に並んだ。
「「「いただきます!」」」
子供たちの元気な声が響き渡る。リューネとラビィも、子供たちに囲まれて一緒に食卓を囲んだ。訓練中の食事とは違う、賑やかで家庭的な雰囲気に、心が満たされていく。子供たちが美味しそうに食べる姿を見ているだけで、幸せな気持ちになった。
食事が終わり、後片付けも手伝って、そろそろギルドに戻る時間になった。
「リューネお姉ちゃん、ラビィお姉ちゃん、今日はありがとう!」
「また遊びに来てね!」
子供たちは、名残惜しそうに、しかし満面の笑顔で二人を見送ってくれた。
「ええ、また必ず来るわ。みんなも元気でね」
リューネとラビィは、子供たちの小さな手に手を振り返し、温かい気持ちで孤児院を後にした。
帰り道、夕焼けに染まるアルトゥンの街を歩きながら、リューネはしみじみと呟いた。
「……やっぱり、ここに来ると、心が温まるね。ガーディアンとして戦う理由が、また一つ増えた気がする」
「うん! ボクもそう思う!」ラビィも大きく頷いた。「あの子たちの笑顔を守るためにも、ボクたち、もっと強くならなきゃね!」
二人は顔を見合わせ、穏やかに微笑み合った。
孤児院での一日は、厳しい訓練で張り詰めていた二人の心に、温かな光と、新たな活力を与えてくれた。明日からの訓練も、また頑張れそうだ。二人のガーディアン見習いにとって、それはかけがえのない心のリフレッシュとなったのだった。




