ep 17
ゴブリンたちから回収した素材の入った重い籠を手に、リューネ、ラビィ、ドラゴの三人は、達成感と少しの疲労感を漂わせながらクレッセントワルツの事務所に戻った。早速、訓練場にいるであろうデュークの元へと向かう。
「デューク教官! ただいま戻りました!」
リューネが代表して、少し誇らしげに声を張った。
「ご指示のあった地区のゴブリンと、ゴブリンリーダー、ちゃんと掃討してきました!」
ラビィも自信満々に付け加える。
「素材もばっちりダゴ! リーダーの石、結構重かったダゴ!」
ドラゴは背負っていた籠をドスンと床に置き、胸を張った。
三人の顔には、「どうだ!」と言わんばかりの自信が満ち溢れていた。今回の任務は、自分たちの成長を実感できる、確かな手応えがあったのだ。
デュークは、黙って三人の報告を聞き、差し出された素材の入った籠に一瞥をくれた。そして、三人の自信に満ちた顔をじっと見つめると、静かに、そして淡々と言い放った。
「……ふん。まあ、これ位はやって貰わんと困る。シルバーランクのダインなら、この程度の任務、半日もかからんだろうな」
予想していた労いの言葉とは程遠い、あまりにも素っ気ない、むしろ厳しいとも取れる評価。三人の自信に満ちた表情は、一瞬にして凍りついた。
(え……これくらい……?)
(あんなに大変だったのに……全然、認められてない……)
(もっと、もっと強くならないとダメだダゴ……!)
先ほどの達成感は吹き飛び、三人はがっくりと肩を落とした。まだまだ自分たちは未熟なのだと思い知らされ、悔しさが込み上げてくる。もっと頑張らなければ。デューク教官に、そしてダインさんのような一流のガーディアンに追いつくためには、こんなところで満足している場合ではないのだ。三人はそれぞれ、心の中で新たな決意を固めた。
俯き、悔しさを噛み締める三人。そんな彼らに、デュークが思いがけない言葉をかけた。
「……おい。腹は減ってるんだろう。飯でも食いに行くか?」
「「「え……?」」」
三人は同時に顔を上げた。デュークの口から、そんな言葉が出るとは夢にも思っていなかったからだ。厳しい訓練以外で、彼が自分たちを誘うなんて。
「い、行く!」
「行く行く!」
「行くダゴ!!」
先ほどまでの落ち込みが嘘のように、三人の顔がぱあっと明るくなる。デュークからの、不器用ながらも労いの言葉だと感じたのかもしれない。三人は声を揃え、元気いっぱいに答えた。
そんな三人の様子を見て、デュークの口元に、ほんのわずかだが、確かな笑みが浮かんだのを、リューネは見逃さなかった。
デュークに連れられて、四人が向かったのは、大通りから少し入った路地にある、新しい店構えの「お食事処 リリカーナ」だった。木の温もりを感じさせるこじんまりとした店内は、清潔で、家庭的な温かい雰囲気に満ちている。
「あら! リューネさん、ラビィさん、ドラゴさん! それに……えっと、こちらは?」
カウンターの中から顔を出したリリカが、笑顔で四人を迎えたが、デュークの姿を見て少し驚いている。
「デューク教官だよ! ボクたちの、すっごく強くて厳しい教官!」ラビィが紹介する。
「いつもお世話になっております」デュークは軽く会釈した。
「まあ! こちらこそ、いつもこの子たちが……。ささ、どうぞ奥のテーブルへ!」
リリカに案内され、四人は奥のテーブル席に着いた。
早速メニューを開くと、そこにはボリューム満点の肉料理や、栄養バランスの考えられた煮込み料理、新鮮な野菜を使ったサラダなど、どれも美味しそうな料理が並んでいた。ガーディアンがお腹いっぱいになれるように、というリリカの想いが伝わってくるようだ。
「うわー! 美味しそうなものがいっぱい!」
「シチューもいいな、でも焼肉も捨てがたい……」
「ぜーんぶ食べるダゴ!」
三人は目を輝かせ、メニューを見ながら楽しそうに騒いでいる。
デュークは、そんな三人の様子を、特に何も言わず、しかしどこか微笑ましげな表情で見守っていた。
やがて、湯気の立つ美味しそうな料理が次々と運ばれてきた。
「「「いただきます!!」」」
三人は待ちきれないとばかりに、一斉に料理に食らいついた。
「ん~~! このお肉、柔らかくて美味しい!」
「ほんと! このシチューも野菜がゴロゴロ入ってて、味が染みてるね!」
「最高ダゴ! ご飯おかわりダゴ!」
三人は口々に感想を言いながら、夢中で料理を平らげていく。その幸せそうな顔を見ていると、デュークも自然と口元が緩む。彼もまた、黙々とではあるが、リリカの心のこもった料理を味わっていた。
デュークの厳しい評価に一度は落ち込んだものの、予期せぬ食事の誘いと、美味しい料理、そして仲間たちとの語らい。それは、厳しい訓練の日々を送る三人にとって、何よりのご褒美となった。デュークとの距離も、ほんの少しだけ縮まったような気がした。
こうして、四人の(そしてリリカの)温かく、楽しい食事会は、賑やかな笑い声と共に幕を閉じたのだった。




